嫉妬

物に嫉妬をした。初めてだった。こういうのは自分で操れるものじゃない。気がついたら胸の底に沸々としていた。とても驚いた。苦しいような嬉しいような感じがした。綺麗に泣けた。
嫉妬というのは制限の難しい感情と聞く。怒りは制御できても、嫉妬は制御出来ない。
こういうのは私の私を騙そうとする虚飾心だと合理化する性質を持っている。しかしこれは、合理化とかの域を超えていたように思う。だって非生物に対してなんですもの。人間に嫉妬するなんてのは良くある話だ。簡単に合理化してしまえりゃいい話。垣の上で寝そべる猫に嫉妬するとか、鳥に嫉妬するとかもなんだかどこかで聞いた話だ。岩に嫉妬する話はあまり無いような気がする。あっても、私はそれを実感として認めなかったろう。
今は違う。確かに感触が残っている。この一瞬間のうちに、むかむかして気持ち悪くて吐いてしまいたくなるような思い出したくないものになったけれど、確かに記憶する。あれは素晴らしいものだった。

蛇の住む洞穴のような岩に嫉妬したのだった。
それで私は彼に恋をしているんだと否定出来なくなった。
私はこんなに愛しているのに、心から幸福を祈っているのに、言ってさえくれば何でもしてあげるのに、彼は私に文句さえ言ってくれない。ただ怯えるばかりである。私が近づくと決まってあやつは洞穴に隠れる。あれにとって唯一の愛の場所があの岩のような模造品だと思うと
憎くて憎くて堪らなかった
憎くて妬ましくて
私は今一番清らかなこいをしているとおもう

どうしてもないてしまうのでもうやめます

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