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小さいけれど確かな幸せ。映画PERFECT DAYSを観て。

今日は、自分のための記録のような記事となります。

皆さんは「小確幸」という言葉を知っていますか?
「しょうかっこう」と読むのですが「小さくても確かな幸せ」という意味で村上春樹さんの言葉です。

引き出しの中にきちんと折ってくるくる丸められた綺麗なパンツがたくさん詰まっているというのは人生における小さくはあるが確固とした幸せのひとつ(略して「小確幸」)ではないかと思うのが、これはあるいは僕だけの特殊な考え方かもしれない

ランゲルハンス島の午後』村上春樹著

さて、映画「PERFECT DAYS」をやっと観に行くことができました。
小さな子どもがいるとなかなか映画館で映画を観ることが減ってしまう。(いや、子どものせいにしてはいけないんだけど)

2時間、スマホの電源を切ってじっと座って映画に集中するのって、なかなかハードルが高いですよね。そういう意味で、映画館で映画を観ることって、「マインドフルネス」過去や未来ではなく、今・ここで起こっているものごとを体験し、ただ目の前のことに集中する)な行動だなと感じます。

話がそれました。

PERFECT DAYS。結論、とってもよかった。時間に追われ、情報に追われている人ほど映画館で観るべき映画でした。
公開されたのは昨年なので、ご覧になっている方も多いと思いますが、簡単にあらすじも含めて私の感想を書き留めておきたいと思います。

東京・渋谷でトイレ清掃員として働く平山(役所広司さん)の日々を淡々と描いていく。とても寡黙な平山は、同じ時間に目覚め、同じように支度をし、そして真摯にトイレ清掃の仕事に向き合っている。

あらすじと言えるのかな。

台詞はかなり少ないのですが、役所さんの表情や暮らしぶりから彼がこの毎日を慈しんでいるというか、愛しているというか、そんな様子が伝わってきます。

古いけど手入れの行き届いた部屋で植物を育て、
毎朝決まった缶コーヒーを買い、昔からずっと聴き続けているであろうカセットテープを流し、週に一度古本屋で本を買い、行きつけの小料理屋での女将さん(石川さゆり!)や常連とのひと時を楽しみ、仕事の休憩時間に神社に行き、木漏れ日の写真を撮る。

「トイレ清掃」という、人があまりやりたがらないであろう仕事に就きながら繰り返されていく毎日の中に、「小さくても確かな幸せ」を沢山見つけ出し生きている。素直に美しい生き方だなと思いました。

幸せというものはどこかたどり着く場所ではなく、毎日の中にあるんだということを教えてくれる映画。私はとっても好きでした。
自分の「小確幸」を大切にしたい。

腕の中で眠る我が子の体温と寝息。
膝の上で絵本を読む息子が動くたび、私のあごにあたる柔らかな髪の毛。
保育園にお迎えに行くと「ママきた!」と一目散に駆けてきて抱きついてくるその瞬間。

人と比べて、もっともっと、と更なる「幸せ」を追い求めてしまいがちだけど、私の今の生活には小さくても確かな幸せが溢れていることを改めて認識させてくれました。


でも一方で、映画を観ている途中からなんとなくモヤモヤもしていました。ここから先は少しネタバレを含みます。

些細な幸せを楽しみながら毎日を過ごす平山のもとに、彼の姪がやってきて数日過ごしたのち、母親(平山の妹)が高級車に乗って迎えにきます。

その時のやり取りで、平山は父親と確執があること、そして明確には言及されていないのですが、元々は裕福な育ちであり教養があること(飲み屋の女将からもそう言われていた)がなんとなく推察されます。

この瞬間、私の中のモヤモヤに答えが出ました。

そのモヤモヤとは「本当に貧しい生活をしている人、毎日ギリギリのところで生きている人がこの映画を観たらどうおもうだろう」と映画の途中から思ったんですよね。

でも妹とのシーンを経て、平山は元々裕福で教養があるから、この生活を楽しめているんだと納得。
古本(古典)を買うことを楽しんだり、音楽や植物を愛しんだり。そういうことができるのは、元々育った価値観というかそういうベースがあるからなのかなと。

映画のレビューを見ていると「持てる者たちが夢想する、持たざる者のパーフェクトデイズ」的なコメントもあり、綺麗に描かれすぎている点は否めません。


とは言いつつ、
私の今の気持ちにはかなり刺さった映画だったので、noteに残しておきました。映画を観た方、ぜひ感想などコメントなどで教えていただけたら嬉しいです。


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