見出し画像

ビオディナミについて考えていること

近年、ワイン造りの現場で注目を集めているのがBiodynamic農法 (ビオディナミ) です。オーストリア帝国時代の思想家、ルドルフ・シュタイナーによって提唱された人智学に端を発する考え方で、驚異的な速度で受け入れられてきた思想です。大変興味深いことに、この思想を受け入れるワイン生産者は多く、Biodynamic関連の教本のようなものをみてもワイン製造に関わる部分が1項目として独立していたりします。

なぜワイナリーでこの思想を受容するケースが多いのか、その明確な理由はわかりません。可能性の1つとして考えられるのは、食品セクターの中では嗜好品として位置づけられており、さらに競合品が極めて多いワインという製品が何かしらの特徴付けを求める中で、近年の自然志向、環境親和性、持続的社会への適合などといったキーワードに近い位置に存在しているBiodynamicの考え方は相性のいいものとして受け入れられたのではないか、というものです。

ここではBiodynamic農法が本当に有用な農法なのかどうかは横に置きます。それよりも、この農法を採用することによって生じているあまり望ましくない結果の1つなのではないかと最近になって私が感じている点について触れていきます。

なお、この内容のほとんどは私の個人的な印象に基づくものであり、客観的なデータに基づくものではないことを予めご了承ください。

ここから先は

3,969字
この記事のみ ¥ 980

ありがとうございます。皆様からの暖かい応援に支えられています。いただいたサポートは、醸造関係の参考書籍代に充てさせていただきます。