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スモークテイントへの対策とその限界

スモークテイント (Smoke taint) と呼ばれるワインの欠陥臭があります。2000年代初期になってから指摘されるようになった、比較的新しいオフフレーバーです。しかしその歴史の浅さに反して、近年における注目度はとても高くなっています。

スモークテイントを含むワインは元々、カリフォルニアやオーストラリア、南アフリカなど森林火災の多い地域の近くで造られるワインに感じられるオフフレーバーとして知られていました。ところが近年の地球規模での気候変動によって、これまではそれほど森林火災が問題視されていなかった地域でも大規模な火災が発生するリスクが高まりつつあることを背景に世界中のワイン産地から注目されるようになってきたのです。

ワインに含まれる可能性のある多くのオフフレーバーと同様に、このスモークテイントも一度含まれてしまうとワインから完全に除去することは極めて難しいことが知られています。現在までに考案され、実用化されてきた手段も基本的には除去をするのではなく、気付きにくくすることを目的としています。

この記事ではスモークテイントに対応するための手段として検討されている内容を、栽培、醸造中、発酵完了後の各時点に分けて解説していきます。

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