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靴とステップ

LINEが小説のようなものになりました。

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「帰り道が寒いです」

「なら、踊ったらいい」

踊るべきだこんな夜には。ステップを踏むのだ。

「初めてサイドステップを踏めた日のことを覚えていますか」

「あの日は暑い夜でした」

暑さのせいか月は霞んでいて、霞んだ月がこっちを見て笑っているみたい。月に向かって履き潰した靴を蹴り上げたことを昨日のように覚えてる。

踵の磨り減ったその靴は、数年前に働き出した兄が買ってくれたもの。泥だらけで薄汚れたこの靴を気に入ってた。

「そろそろ替え時じゃない?」

飲み屋で隣になった人に言われた。

「そんなことないよ」

私はステップを踏んで見せた。それが人生初のサイドステップ。

靴は替えられていないけれど、ステップはうまくなった。

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