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マイクロノベルちょいす 041「大切な記憶」

No.1155
海の近くで暮らしていた頃の話。毎朝、砂浜に犬の足跡があった。右側にはまるで杖をついたような穴。「触らないでくれるかな。それはぼくの大切な思い出なんだ」今にも折れそうな木の棒に頼まれて、ぼくは投げる。それ以来、僕の手から磯の匂いが取れない。


No.1191
十年前の話。「わらべよ、お前がこの道を通るのはこれで二千回目だ。記念にビー玉をやろう」大学生になって帰省したら、その場所にはまだ小さな神様がいた。「童、久方ぶりだな。記念品を交換するか?」ビー玉をレゴブロックと交換してくれた。また来ます。


No.1197
極めてユニーク。そう評価された「彼」は姿を消した。それは勘違いだよ。実際は「彼」に心酔した人々が取り囲んだんだ。触れてみなければそのユニークさはわからない。取るに足らないって無視しちゃうんだ。そう、ドーナツの中心には「彼」が入っているのさ。


No.1202
これは犬? それとも猫かな? 骨格は犬そっくりなんだけど、顔は猫っぽい。そんなときはAI判定! この動物は……タヌキです!! 「おい、お前がモニターに表示してる画像はアライグマだぞ」いーえ、これはタヌキです。アメリカ人がそう言ってましたもーん。


No.1207
そいつはぼくにそっくりだった。あなたのコピーです、だって! いまからミキちゃんと遊ぶのにこんな奴がいたら邪魔だよ。「双子だったの?」どっちがぼくかわかる? ミキちゃんはぼくの頭をこつんと叩く。「中身が詰まってるかどうか、音でわかるよ」

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