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マイクロノベルちょいす 003「こうしてぼくたちは結婚しました」

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年貢の納め時だよ。そう宣告された上で、口の中で飼っていたキツネを恋人にかみ殺されたので、結婚しました。


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「そんなにほしいならくれてやるよ」彼女は機械仕掛けの魂をくれた。「大切にしてよね」メンテナンスが重要ってことだね。取扱説明書はないの? 「そこまで単純じゃないから」弱ったな。機械は苦手なんだ。「人間だって得意じゃないくせに」ぐうの音も出ない。


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才能が落ちていた。ネコババしちゃおうかな。「落とし物を探しているんです」それはこれですね、お嬢さん。ああ、正直者のバカな俺。才能を身につけたお嬢さんは100メートル9秒台で走り去った。「で、その時に落とした靴を届けてくれた王子様と結婚したの」


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猫がぼくの手を舐めている。「猫は嫌い?」どうかな。神様はぼくの手を取る。「預けてもよい? 私は猫に好かれないから。年に一度、会いに来ます」猫は今もぼくと暮らしているけれど、あれから神様には会っていない。でも時々、猫から不思議な匂いがする。


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冷蔵庫には神様が住んでいて、その姿は若く美しい。「保存が利いているからね。出したらどうなるかって? 消費期限が減るよ」40年前にばあちゃんから聞いた話。料理がとてもうまい人で、じいちゃんとずっと仲良しだった。

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