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「介護3.0」でいこう。

暮らしのライフセーバー


 香川県三豊市。今や「日本のウユニ塩湖」として超有名になった父母ヶ浜のある町です。

 それだけじゃない。
 ユニークな人たちも集まって来て、最近何やら、ワクワクすることがたくさん行われているもよう。
 「瀬戸内暮らしの大学」も。
 今回綴る「暮らしのライフセーバー講座2023」は大学講座のひとつ。
 地域で暮らす一人ひとりの「視点」や「小さな行動」が地域の共助の仕組みとして根付いていくことをめざしている、といいます。

8月開催のチラシ 四国の人はぜひぜひ〜!


 暮らしのライフセーバーの目指すところは
 介護へのリテラシーを上げること。
 そのリテラシーを教えてくれるのが「介護3.0」を提唱する横木淳平さんなのだから、これはもう参加するしかないでしょう!

https://note.com/naho1222/n/nb81352d6d859


 しかも三豊市の事業と連携しているため、受講料は無料!
(計4コマの講義を受講すれば”暮らしのライフセーバー”認定証がもらえるのです)

 ホント、参加したほうがいい。
 
 初回講座

 6月2日、香川県では大雨警報があちこちで発動。梅雨。西から東へと雨雲は移動。大雨の影響で東海道新幹線がストップ。6月3日は「暮らしのライフセーバー講座2023」の初開催日。講師・横木淳平さんは栃木県からやって来ます。瀬戸内・香川はスッカーンとした青空だのに。
 むむ。今日、無事に横木さん来られるのか?
メッセージを送ってみると「完全に足止めです!zoomになると思います」。

 残念!!!だけどなるほど、zoomさまさま!!
 私は香川の東(自宅)から西へ90分ドライブ。開催場所である瀬戸内暮らしの大学みとよキャンパスへ向かったのでした。 


 開始時刻10分前に会場へ入ると、目の前にスクリーン。事務局の女性・森さんと、司会・進行役の金児大地さんと、参加者がちらほらと。

マインドセット。


当日の様子

 参加者は10名ちょっと。円座のような形で座って、スクリーンを見ます。 講座開始。横木さんのスタイルは常に同じ。一切ブレがありません。「何かを段階的にあきらめなきゃいけないのが今の介護。やれる、可能性を見つけていく。その中身を提唱するのが介護3.0です」とキッパリ。 

そのための媒介になるのが“介護”というものだと。
その人ひとりひとりの夢を叶えていくのだと。
 
やりたいこと、行きたい場所、逢いたい人、やり残していること、してあげたいこと(サプライズ)。
 
その人で生ききる、ということ。

あっ!


 
「介護施設で何回もナースコールを押す利用者さんがいます。そのナースコールすべてに応えました。顧客満足度はどれくらいでしょう?」と横木さん。
 
「これ、答えは0%なんですよ。
だって、コールが鳴るなら行って当たり前じゃないですか」

満足度を1%あげるにはどうしたらいいか。
 
「その人がコールを押してない時にそばに居ることです」
 
あっ!って思いませんか?!
 
今まで見ていた方向とはまったく逆、違った角度の見方に気づかされるんですよね。横木さんのお話には。

答えは生活の中にある


排泄


横木さんが質問します。
Q 人はなぜ、オムツになるのでしょう?

 私たち参加者は隣のひととペアになってそれぞれ考えます。
 
漏れてしまうから…
下着が汚れてしまったら変えるのも大変だから…等浮かびますよね。
 
 実は尿意・便意は、なかなかなくならないと言われているそう。
(尿意・便意が感じられなくなる病気は3つくらいだとか。高齢者だから、認知症だから、は原因にならないのですね)
 つまり、何らかで訴えられない、訴え方がわからなくなっている、もしくは訴え方を間違ってしまっているだけと横木さん。
 
 一般的に400㏄ほど尿が溜められても、お年寄りは膀胱が固くなってしまうので250㏄ほどが限度なため、「トイレが近い」のは自然現象。加齢による筋力低下もあるため、失禁しやすいのも事実。
 
 また、2週間入院したとして、その間オムツによる排泄をしていたとしたら、元のトイレ感覚が戻るのには3倍の6週間もかかると言われているそうです。
 「だから“トイレに座る”っていう行為が大切なんです。それを思いだすためのケアが大切」
 
 横木さんは再び問いかけます。
 
 「トイレに行くのを忘れるときはどんな時でしょう」
 
 楽しいとき、何かに集中しているとき…ですよね。
 そう。


「大切なのは、ウキウキ、ワクワクする生活を送れているかなんです。夜間の尿量は熟睡度に比例しますから。
 排泄の問題は、オムツをつけたりと排泄で解決しようとしますが、ここのレッテル自体が問題かもしれないんですよ。生活が良くなれば排泄レベルは必ず上がりますから」


 なるほど〜!
 また、ひとりひとりの排泄パターンを知ることも大切だといいます。排泄チェック表を用いながら。
 時間毎の一斉オムツ交換ではなく、一人一人に合わせていく。
 
 横木さんが施設長を勤めていた施設で、便秘がちで怒鳴り散らしている男性入所者さんがいました。横木さんは彼の生活歴を見て“油絵の個展をしましょうよ”と持ち掛けたそうです。
 看護師などが便秘の話をしているのにいきなり“油絵”の話(笑)。ぶっ飛んでます。
 が、その男性は俄然個展への意欲を見せ、個展の準備に勤しむうちに、便秘は改善していたそうです。
 「そう。だから、答えは生活のなかにあるんです
 
便秘の原因の第一位はストレス!!
 
 排便のタイミングや頻度は人それぞれ。1日出ないだけでお腹が張る人もいれば3日出なくても全然平気な人もいる。個別性があるもの。
 施設では毎日排便のチェックをして「19時、ピコスルファートナトリウム20滴 朝5時 反応便出ていません」「〇〇さん、今日で3日目なので朝出ていなかったら浣腸します」など、申し送りが日々行われています。
 便が3日出ない→下剤→効かなければ浣腸、という図式が出来上がってしまっていて(薬に頼っている)便秘改善へ向けたケアには誰も意識が向いていません。
 
 「よくお茶に下剤を入れて飲ませるってことがあると思いますけど、それ実は酷いことではないですか?」
 はい。実に。
 “慣れ”って怖い…。
 
 マインドセットしなきゃ。
 と、サ高住で働く私は思います。


 さて、食事。食事を美味しく食べる。ホント、超重要ですよね。施設に入っていたら、唯一の「楽しみ」かもしれない。美味しくなければ、楽しみでなければ、生きる意欲なんて湧かないと言っても過言ではないでしょう。
 いやぁ。
 私の勤め先…
 管理しまくりじゃ!!
 
 ご本人の意思はあまり聞き入れず、気持ちを考えようとせず「〇〇さん、ぜんぜんご飯進んでないじゃないですか。食べてー!!」「〇〇さん、ほら、水分しっかり取って」などと、一方的。圧すら感じられる始末。
 
 横木さんはバサッと言ってのけます。
 
 「その人がごはんを食べない理由をどれくらい挙げられるかが大切です」と。
 「飲み込みや口の中のことばかり注目して
いてもそこに答えはないです。そもそもお腹のすく生活をしていますか?」
 「会話が当たり前にあるような日常があれば、もっと長い時間ふつうの食事ができるはずなんです」
 
 アナタの施設は?
 
 静かです。
 沈黙がツラいです!!
 
 泣!!!
 
 そうですよね。「しゃべらなくなるから舌の筋肉だって弱くなる。咀嚼力が落ちる」

 当たり前やん!!!
 
 それに加え、
 
「食堂で職員がしてはいけないことはなんでしょう?」
 
「職員が立っていること(目線が異なること)です」
 
アナタの施設は?
 
 食介しながら、立ったり、うろうろしています。
見張っている感じすら見受けられます。
 
 いかんやん!!

同じ時間を共有する


  横木さんは言います。
 「職員が立っているということは、同じ時間を共有していないということです。お年寄りが座っているなら、職員も座りましょう。これだけで利用者さんの食事量は上がると思います。コロナ禍では難しいでしょうけど、職員も一緒に食べられれば尚良いんですけども」

 食事のポイントは 
①姿勢:とにかく、かかとが床につくこと。車いすから足を下ろさないと体幹がゆらぐし、決して良くない。そして前かがみの姿勢。椅子に背もたれがあって安心できること。
②空間:安全、安心、座席、きれい、照明、食器、聴覚を使った雰囲気づくり、職員の動きも重要)
③タイミング:その人のタイミング、体調、気持ち、あたたかいもの、冷たいもの、選べる生活。④相性:だれと食べるの か。どこで食べるのか。集団、小集団、その人に合ったベストな相性を一緒に探る。

 あぁ~ワタシの勤め先、全滅に近い…。
 車いすで食べてる。
 足は車いすから下ろしてない。
 眺めのよいラウンジで食べるけど、シーンとしていて、ちっとも楽しそうじゃない。朝夜はテレビが流され、昼は演歌系のCDを流すだけ。
 食事は一部委託。映えないメニューが多いです。先月から若い管理栄養士さんが異動してきて、やや洋食が増えて、メニューが変わった感はあります。が!先月あたりから朝食に付いていた「海苔の佃煮」や「鮭フレーク」は経費削減で提供されなくなってしまいました。プレーンおかゆのどこが美味しんだろうって思いながら食介に入ってます…
(自立している利用者さんはマイふりかけ、ごはんですよ!を持参して食堂に来ます)

入浴



元気になるお風呂 
 
 「お風呂はですね、前にかがむチカラなど、本当のリハビリになるんですよ」と横木さん。
 ウチ…一般浴槽もあるのに今や立派な物置き部屋。
 入浴は決してリラックスタイムではございません。
 順番も効率重視。清潔保持に徹しております。
 サービス付き高齢者住宅で利用者さんの介護度が上がっていくと、ハード的に辛いものがある。

 各階に簡単なキッチンやフリースペースがあればいいんですけど、ほとんどなにもない。

 利用者さんが「地獄じゃ。はよ、お迎えが来て欲しい」って本心の言葉だと思うんですけど。
 
 どうしたら良いのでしょう?
 横木さん!!!!
 HELP US !!!

 …と感じております。

幸せは、どんな時に?

さて。
人が幸せを感じるときってどんな時ですか?
 
 美味しいものを食べている時、とか
いろいろありますよね。
 横木さんの問いかけへの答えとそれに続く説明はこうです。

…………

本質って
 
人に何かを与えているとき。
誰かに必要とされているとき(=自分の存在証明)。
 
じゃないですか?
 
居場所、役割がある生活づくりを僕らはしていく必要があるんです。
子どもでも大人でも障害者でも高齢者でも変わりません。
マインドは健やか?
特に介護側は「まず体」ってなりがちですが、マインドが健康になるから体が元気になるんです。ここをとらえ直していく必要があると思うんですよね。
どんな体になっても、どんな心になっても、いつまでも与える側でいられる、その人が居場所を持てるようなキッカケづくりこそ介護の一番重要な仕事だし、それがウェルビーイングな町づくりに繋がっていくのではないでしょうか。


…………


 横木さんが施設長を勤めていた介護付き有料老人ホーム「新」での“人のちから”を動画で紹介してくれたのですが、いやあ…印象的でした!!!
 
 ◇餅つきをしているシーン◇

 そもそも、ホームで杵と臼を用いた餅つきをするということ自体がうらやましい~!

 パーキンソン病で寝たきりのおじいちゃんの入所者。車いすに乗って餅つきを見学しています。
 なんと!動画が進むごとに、手が動きだしているのです。 
 おぉ!杵を持ってるじゃないですか!
 季節が進むと、なんとこのおじいちゃん、新の畑で耕運機を動かしているじゃないですか!!

 さらにはですよ!
 バトミントン教室を開いている!!!!!

 いやぁ…やっぱり、心が動けば体も動いてしまうんですね。

わくわくする生活、もうめちゃくちゃ大事です!

 食に関してもそうですよね。終末期でもうほとんど何も食べられないはずの高齢者がお寿司をペロッと食べた…なんて話はよく出てきます。

 気持ちひとつで身体は変わる。人間の身体能力なめんなよって。

   横木さんの「介護3.0」とは、”好きです” ”(あなたの)見方です” ”(あなたと)一緒にいたいです”をどうケアで、行動で伝えるか。

 “介護・福祉”色のメガネをかけてちゃダメなんですよね。
 「その人をアセスメントして」と、目の前の人を診断、判断してしまいがちだけども。
 名詞で考えてしまうけれども。
 認知症、薬、センサーマット、ベッド柵、見守り強化…

 違う違う。もっと生身の…体温が感じられるような…!
(伊藤亜紗さんの言葉を借りるなら『動詞族』でありたい!)

 私たちがふだんの生活で、家族や好きな人にしていることと同じでいい。
 問題行動じゃない。
 「個性」と捉えること。
 軸はどこまでも、その人らしさかどうか。

 そう、横木さんは教えてくれました。

 6月17日はいよいよ実技!!
めちゃくちゃ楽しみです。
香川で待ってます!!

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