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【読書録】カケラ 湊かなえ

あらすじ

少女の死をめぐり、食い違う人びとの証言。
美容外科医が真実の行方を追うミステリー長編!
『この作品の中には小さな「私のカケラ」があちこちに埋め込まれていて、湊先生の手によって、とても立派な「根も葉もあるウソ」に育てあげられているのです。』医師 友利新さん推薦!!

美容外科医の橘久乃は幼馴染みの志保から「痩せたい」という相談を受ける。カウンセリング中に出てきたのは、太っていた同級生・横網八重子の思い出と、その娘の有羽が自殺したという情報だった。少女の死をめぐり、食い違う人びとの証言と、見え隠れする自己正当化の声。有羽を追いつめたものは果たしていったい――。周囲の目と自意識によって作られる評価の恐ろしさを描くミステリー長編。


感想

 構成が主人公が各章で、一人の人物から自殺した少女について聞き取るという、これぞ湊かなえ作品という感じでした。主人公を含め、登場人物たちの名前ですら語りの中で徐々に明かされていくので、読み進めるほどに、パズルのピースがハマっていくような読書体験ができました。
 「告白」は各章で一人の人物が独白をしていき、事件の全容が明らかになっていく構成でした。それに対して本作は、会話はしている分途中で話がそれたり、感情のままに話している描写が多く、要領を得ない部分がよりリアリティを増しているような印象を受けました。こういった本当にこういう人いるよねと思わされるのが、湊かなえマジックだと勝手に解釈しています。
 構成は「告白」を彷彿させるものでしたが、最終章の主人公の語りが前向きな内容だったので、読後感は悪くなかったです。読後感は「未来」を読み終えたときの感じに近かったです。また「未来」と同様に最後の方の内容は湊かなえ先生自身の思いを、登場人物を通して私に伝えてられているような印象を受けました。
 読むたびに一人一人に見えている世界が異なり、話したことに対する受け取り方はこうも違うのかと打ちのめされます。コミュニケーションの重要さが日に日に増している現代だからこそ、こういった作品が人気を集めるのだと思いました。今回はこの辺で終わりたいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。


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