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【挿絵あり】№35_召喚術の授業は××な魔物と、 …過去を引きずる人に贈る、ヒーリングBL…

【月下美人系魔物 VS 安全第一なぼっち学生】の召喚契約を巡る攻防を描く、現代的で現実的なファンタジー召喚BLです。


 
~~中略②の後~~ 

 
(まあ、”500倍の魔力”なら手間暇かけるか…)
 
いくつかの信憑性が高い情報が得られた現在。
当初想定した「自分は単なる召喚契約を結ばせるカモ」という可能性は低いと見積もっていた。
僕の特殊な魔力を得るために契約をしたい…という魔物が当初語った話もおかしくはないと思っている。

(記憶操作や強力な幻術で認識を歪ませている可能性も、無くはないけど…)

だが記憶操作は幻術よりさらに高度であり、記憶の認知を歪ませるほどの術は対象の脳への負荷もだいぶ大きいはずだ。
使い物にならなくなるリスクもあるため、積極的には選ばない選択肢だと思う。
なにより500倍の魔力が事実だった場合が最悪なので、まずはこれを「真」と仮定して考えていこう。
 
(ただ逆に、悠長過ぎる気もするんだよな…)
僕が魔物の立場だったら、”500倍の魔力”を持つ生物なんて何としても早急に確保したいと思う。

リターンも魅力的だが、それ以上に他の者の手に渡った場合のリスクが恐ろし過ぎるからだ。

見張っていたとはいえ、1年も待つだろうか。
確保の手段だって、速度重視となりあまり選んでいられないと思う。

「………、…っ…」
(精神的、肉体的に追い詰められたり、暴行を受けてたら…
 自分はあんまり、耐えられなかっただろうな…)

なぜあの魔物は、”そう”しなかったのだろう。
そもそも、これだけ力量差があるのだ。
召喚契約なんて悠長なことを言わずに、隷属契約を無理やり結ぶことだってできそうなものなのに。

 

「………」
”ここまでの一連の出来事も、僕を契約に導くためのもの”
ふと、そんな考えが頭をよぎることもあった。
これは流石に馬鹿げた疑心だと思う。思うけども、その一方で強く否定できない自分もいるのだ。

(僕だって個人的には、魔物のことを信じたい…)
現在進行形で献身的に世話をしてもらっている身としては、どうしてもそう思ってしまう。
しかし。

 

かの魔物が人間を食い荒らしに行かないという保証は、まだどこにも無いのだ。
自分が安易に彼を信用すれば、家族や先生、そして多くの人に凄惨な不幸をもたらすかもしれない。
(…………っ)

 

 

「少しいいか?」

思い悩んでいた僕に、件の魔物が声をかけてきた。
ちなみに彼に信用されていない僕は現在、常に自称L様の側に置かれる羽目になっている。
今日は書斎の机で魔物が何か丸い物をいじっている傍ら、僕はソファーに座って本を読んでいたのだった。
 

「これに触れてみろ。なるべく真上の中心部分に。ああ、触れる時は目を閉じろ」
立ち上がって近づいてきた僕に差し出された白い手は、手のひらサイズの水晶玉のようなものを掴んでいた。

「何ですか、これ?」
聞けば魔力を保管する用具を少し細工した物らしい。
机の上の籠にも、似たような水晶玉がいくつか入っていた。
ざっと見たところ透明な水晶玉が多かったが、なぜか内部が曇っている球も数個あった。
すでに魔力が保管されている状態なのだろうか。

「あ、待て。念のために音も遮断しておくか。すぐ戻すから心配するな」
制止の声を上げる間もなく、魔物が僕の耳に触れた。
すると、一切の音が聞こえなくなった。
 

視覚はおろか聴覚まで遮断することに疑問を覚えたが、言われた通り目を閉じて指先でちょこんと触れてみると…

(ん?魔力が流れてく…?あれ?)
 



今回はここまでにします~
ではまた~ 

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