不眠の羊飼い

これは寝る前の音声テストです。

躁状態が続き、毎日5時間睡眠で昼寝もできず、元々たいして鋭くもないわたしの目と頭はらんらんと冴え渡っている。睡眠不足は人をおかしくさせる。このまま続くと神経がずたずたになってしまう。ずたずたに切り裂くためのハサミを持っているのはわたしか、それとも他の誰かか。

春の穏やかな陽の光がわたしを静かに狂わせる。その音を聴く。庭では紫を帯びたピンクの花をつけたスオウの木が、可憐にわたしをあざ笑っている。

今日は映画を2本観て、やめたいと唱えつつひっきりなしにマルボロを吸って、庭に出て花を眺めた。そんな日。そよそよと花を揺らす風、家の屋根の梁に巣を作って潜り込むクマバチ。映画の観過ぎで、なにもかもが美しく切り取られたワンシーンのように思える。わたしだけが静止している。何に?人生に。

映画はストレンジャー・ザン・パラダイスと、ゴッドファーザーⅠを観た。
ストレンジャー・ザン・パラダイスは父が大好きな映画で、リビングで一緒に観た。父が語る作品への思い入れを聴く。当時の映画館で観た時の思い出や(帰り道に雪が降っていたそうだ)、監督が製作に至るまでのエピソードや、昔ポスターを手に入れて、今でも大事に持っている話や。
父はアートや音楽や映画など、好きなものについて熱心に語るので、それを聴くのは面白い。作品の見方がそれによって広がる。
1人で映画を見るのも好きだが、好きな人と見る好きな映画はもっと面白い。自宅でDVDで観ると、映画館とは違って、ああだこうだ喋りながら観られるのがいいですね。

ゴッドファーザーは何回も観ちゃうでしょ。大学生の頃から繰り返しちゃうでしょ。でも3時間もあって長いから、休憩を何度も挟んじゃうでしょ。

ゴッドファーザーIが1番面白くて好き。Ⅱはビトの昔のエピソードが観られて嬉しいけど、ずっとマイケルがブチギレてて怖い。そんでⅢはイマイチ。でももう一度観たら印象も変わるのかな。
ゴッドファーザーはストーリーよりも、役者の演技と、映像の美しさが好きだ。正直、ストーリーはわたしには難しい。顔の覚えにくい男の人がたくさん出てきてばんばん死ぬので、理解が追いつかないのだ。マフィア同士の裏切りのシーンもたくさんあるから、頭の整理が追いつかないうちに、またすぐ人が死んでしまう…。

映像がとにかく美しいですね。画質ってことじゃなくて、色彩とか。構図とか。専門的なことはわかんないけど。ストーリーがよくわからなくても、映像を眺めていたいの。
今日は、マイケルがフレドを諭しつつも命令するシーンで、背景の壁が鮮やかな深緑であるところに目を奪われた。アルパチーノの静かで冷酷な表情と、その壁の色が美しかった。あの緑がシーンの印象を強めていた。あれが赤でも青でもダメだった、と思う。

友達からわたしは、ゴッドファーザーをしょっちゅう観ている人だと思われている。笑


まともな一日がそろそろ戻ってきてもいいんじゃないか?でも、まともな一日なんて、そもそもわたしに訪れた試しがあったっけ。
忘れることばかり得意になる。