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「失敗」を語れる人になろう

休みが水曜日と木曜日の平日休みという事もあり、昔の友人と会う機会が少ない。

一緒になる知り合いは曜日関係なく、何らかの仕事をこなすフリーランスの人か、不定休のお仕事をしている人、或いは同業の不動産の人になる事が多い。

たまに2人で会って話をする。

高校からの同い年の友達で、同業他社の某大手不動産企業に就職したあいつは今や営業マンとして成績は店舗の中でトップ。
早くに結婚し、都内のマンションに引っ越して2人で同棲をしているらしい。

彼とは高校時代、通学するスクールバスで一緒になり、一年生の時から仲良くしている長い付き合いの男。

学校のイベントをサボって2人で映画を観にいったり、
公園のど真ん中で相撲を取り、訳もなく体をぶつけあったり、
学校帰り、近所のサイゼリヤでノートとペンを手に取り2人で大喜利のお題を出し合って、人目を気にせず大喜利をしたり。
今考えると中々理解に苦しむ思い出ばかりが頭の中に刻まれている。


そんな彼は、大手不動産会社に就職し、そこで確かな成果を残していた。
スクールバスを待ちながら、当時やっていたギャルゲーの進捗を報告し合ったり、同級生の悪口とか下世話な話をして盛り上がったり、

変な思い出に溢れ、阿呆な事ばかりを考えるばかりだったはずの彼は結婚をして、大きな責任を背負うようになった。

2人でもんじゃを食べながら、彼は私に自分の名刺を渡してきた。

「これ、名刺がキラキラ光るようになっているだろ?これ、普通の社員はもってないトップの営業マンしか持ってない名刺なんだよね。すごくね?」

「後輩も沢山指導してるし、そろそろ係長の役職ももらえそうなんだよね。すごくね?」

すごい。自信に満ち溢れていて、あの時の彼とは別人と思えるくらい目の輝きがまるっきり違った。

一つの成功体験を、確実に"自信"に替えて確かな成果を積み上げる不屈のエネルギーを感じた。

それが社会人にとってとても重要な素質であり、彼がその素質を持っていたことに驚きと同時に羨ましさすら感じた。


自己嫌悪でも自虐の感情でもなんでもなく、なぜ、自分にはそんな社会人として持つべきである素質がないのだろうと素直に思う。
私は、物事を"失敗"からしか学べないからだ。

接客業として重要な、マナー・礼儀・言葉遣い。
営業マンとして避けては通れない、契約を結ぶための言葉のテクニック。

社会人一年目から三年目の時は特に、接客におけるマナーや礼儀作法に関して上司に叱られて自信を失い、自己嫌悪に陥りながら帰路につく夜が多すぎた。たまらなく憂鬱で、恥ずかしくて、死にたくて、あの時の感情はできればもう味わいたくない。
(今もたまにやってしまう時がある。)

今思えば、それらの叱責と、かいた恥の数だけ積み上げられた自信と経験則があって、そこに助けれる部分が多い。

契約に至るまでだって、お客さんの断る口実を外堀から潰していって、「YES」しか言えないような道筋を順序立てて組み立てる事も、
数多くのお客様から断られた(裏切られた)経験があってこその今がある。

生まれてこの方ネガティブで、慎重に事を運ばせる事にずっと慣れすぎた私は、"失敗"から生まれる経験則に絶大なる信頼を置きすぎている。
いや、若くして"成功"を収めてから辿る"しくじり"に敏感とも言える。

「上手い話には裏があるし、簡単に手に入る成功には足元をすくう何かがある。」
それも今までの経験則によって導き出した、私なりに学んだ一つの教訓なのかもしれない。

彼は沢山の接客の場数を踏み、確固たる成果を上げ、トップ営業マンとして成りあがっていったが、そこには見えない努力や不幸や絶望、挫折があったのだろうかと思う。

正直、沢山絶望しててほしいなと思う。(笑)

意地悪な私は「仕事をする上で失敗した、とか挫折した事とか、今までないの?」と、かつて彼に聞いたことがある。
彼は、「う〜ん、思い浮かばないな。」とバツが悪そうな顔で首を傾げていた。

そんな人たちに囲まれて、ポジティブ論や自己啓発セミナーみたいなアドバイスを聞かされる経験が多すぎた私は"失敗"をちゃんと根っこから語れる人を心底尊敬している。
"成功体験"よりも"失敗と挫折"から生まれる大逆転劇を信じていて、その成果はその人にしか生むことのできない大いなる財産だと思うから。

根っこにあるネガティブはもう倒せないことが分かっているから。
せめてそこから得る"失敗体験"とそこから生まれる"成果"を笑いながら話せる人の方が可愛げあって、且つ確固たる自信が後からついてくるよ?と彼に伝えてあげたいのだが、方法が分からない。

昔からの友達だった二人は社会人生活を経て、考え方から価値観・相性から何まで、まるっきり変わっていってしまったのかもしれない。______




彼ともんじゃを食べた後、2人で100円ショップで買い物をした。
購入したのは大きなノートとマジックペン。

その後、2人でサイゼリヤに入って、ドリンクバーとピザを頼んだ。
スマホで検索するや否や彼は開口一番、こう言った。

「こんな学校の朝礼は嫌だ。校長は何と言った?」
二人で、さっき買ったノートにマジックペンを走らせる。

「なんか…色々考えたけど、”チンポコ”しか浮かばねえわ!お前すごいな!」

大喜利の浮かび具合も二人の関係性も何だかんだ根っこは変わらない。

結婚をし、責任を背負い、その会社のトップに成り上がったやつでも、
頭の中に"チンポコ"しか浮かばないような瞬間が、あるにはある。

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