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2030年のビジネス -売り手と買い手の概念変革の話-

 以前、Twitterで「洗車太郎」というアカウントを作り、洗車コミュニティの仲間と一緒に、理想の洗車ワックスを作ったお話しをしました。

 その続きにもなりますが、今回は僕が、この「共創」を通じて気が付いた、今後の小売、ひいてはビジネスの概念――具体的には、売り手と買い手の関係や、小売業のマネタイズの方法が大きく変わるのでは――ということについて、書きたいと思います。



「売り手主体」のビジネスモデル

 今、小売業(リテール)の会社に勤めていますが、小売り、いや、そもそもビジネスの構造は、なぜ変わらないのだろう? と思うことがあります。

 というのも、今のビジネスは、「売り手主体」のビジネスモデルのままだからです。

 「何それ?」そうですよね。つまりこうです。

 「モノを売る」のはどこから始まるのでしょうか? ほとんどの場合、メーカーが商品を開発・製造したり、小売業者が商品を仕入れたりすることからですよね。

 その後、「誰に、どのようにして、いくらで売るか」を決めて、TVコマーシャルなどの広告や、販売促進のキャンペーンで商品に関心を持ってもらい、それを買い手である消費者が買う、という流れではないかと思います。

 売り手が起点である、「売り手主体」ということです。

 「そんなの当たり前では?」と言われそうですが、そうでしょうか?  


「売り手主体」への疑問

 僕は長年ずっと疑問に思っていました。小売業に転職して自分がその立場になってからも、「売り手主体」に疑問を持っています

 今、モノの購買の中心は、ミレニアム世代から、Z世代に移りつつあります。今20代~30代前半のZ世代のモノの買い方は、30後半からのミレニアム世代とは違う感じがします。

 ミレニアム世代は、モノを持たないことを美徳とする感覚が強いなと感じていました。例えば、ブランド物はいらない、とか、高級時計よりスマートWatchがいい、車は所有よりシェアリングで…といった具合です。ミニマリストという言葉も流行りましたよね。

 でもZ世代は、少し違う感じがします。Z世代になると、生まれた時から、生活必需品は家の中にあふれていました。また経済や景気環境もよくはなく、所得も多くはありません。

 ですので、Z世代は、「生きていくのには必要ないけど、欲しいものを、少ない可処分所得で買う」という環境で育ってきました。



モノにおける「効率性」と「意味性」

 モノには、「効率性」と「意味性」を持ったものがあります。

 「効率性」のモノとは簡単にいうと生活必需品、つまり生きていくのに必要なモノです。

 「意味性」とは、生活必需品ではないですが、趣味のため、楽しみのため、に買うもので、買う本人にのって何らか買う「意味」があるモノをさします。

 Z世代は、この「意味性」のあるモノを買うのは、とても慎重です。

 買うにあたっては、TVコマーシャルなどではなく、周りの友人や、SNSで信用できる人の発言や口コミをもとにして、欲しいものを吟味した上で買う場合がとても多い気がします。

 因みに、SNSも昔はインフルエンサーがすすめるモノが買われた時代がありましたが、売り手側に、いわゆる「案件」が多いことがわかってくると、あまり流行らくなりました。

 これらのことが意味しているのは、「買い手」の中で発生している「信用経済」という現象です。


「信用経済」とは

 「信用経済」とはどういう意味か?

 買い手は、買い手の「仲間」「同じ立場の人」の中で、自分が信頼できる人や尊敬できる人に信用を置き、彼らが買ったモノ、お勧めするモノを買うということを意味します。

 つまり買い手の中に「信用」が生まれ、その「信用」がモノの売り買いという経済を回している、ということです。


「信用経済」の基点は

 僕がTwitterで「洗車太郎」だった時も、よくこういうことがありました。SNSコミュニティに入ってきたばかりの人が、僕にDMや書き込みで、「どんな洗車用品を買えばいいですか?」と聞いてくるのです。

 「僕に聞かなくても…」といった意味のことを返すと、

 「いえ、洗車太郎さんのSNSでの書き込みを読むと、洗車太郎さんはさまざまな国内外の洗車用品を買って、ご自分で使って感想をSNSに書かれていますよね。

 その書き込みを読んで『この人なら信用できる』『この人のおススメを聞いてみたい』と思ったのです」といった返事がありました。

 それで、僕が「あなたの洗車経験や洗車環境だったら、僕なら、XXを買いますね」と返信すると、その10分後に「買いました。ありがとうございました!」と返信が来ることが度々ありました。

 僕の言うことを信じて、この方は買ってるわけですよね。

 つまり、僕との間にあると感じてくれている「信頼関係」をもとにモノを買った。

 これがまさに、買い手コミュニティ、仲間の間での「信用経済」を意味するのです。


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