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ナカさんの寄席日記 立川流日暮里寄席 談志直弟子の夕べ

平日の夜席、しかも冷たい冬の雨がしとしと降っていて、お客さんの入りが心配だけど・・・こんな天気だからひょっとして例のネタが聴けるんじゃないかしらと期待!!お待ちかね、今日のトリは立川龍志師匠です。

「談志直弟子の夕べ」若手からベテランまで5人の噺家さんが登場。立川談志師匠がお亡くなりになったのが2011年11月。もう若い人だと「談志?誰それ?」なんていう人もいるんじゃないかしら。私が谷根千に引っ越してきたときはまだ存命で根津のマンションに住んでいたはず。でもその頃はまだ落語のらの字も知らなかったからなぁ。。もう少し早く落語聴き始めてたら生で談志聴けたのになぁ・・残念。談志亡き後、小談志さんは龍志門下に、談吉さんは談修門下に預かり弟子になりました。なので今日は実は龍志&談修ダブル親子会でもあったんですよ、前座も談修門下の花修さんだったし。

まずは談吉さんで「弥次郎」調子がよくってパーパーと可笑しな話、次から次へと口から出まかせばかり、談吉さんの陽気さが楽しい!マクラから最後まで本当に笑いっぱなし。談吉さんのセンスとかテンポ感、大好きです。

小談志さん。今までノーマークだったんですが、地味ですが巧いですね!何の変哲もない「時そば」だったのですが、丁寧で細かい芸で感心してしまった。後に出てくる間抜けな男が「ひいふうみい・・・十の時は親指が外側に出てないといけないのにどうして・・・」と何遍も指を折る仕草に実はこの男、根は真面目なんじゃないかなと思わせて面白かった。小談志師匠、これから要チェックだわ。

志遊師匠が創作落語で仲入り、談修師匠の「道具屋」、そしてお当ての龍志師匠!ついに念願の「芝浜」!寒かったけど聴きに来て良かった~
龍志師匠の勝五郎はちょっと荒っぽいキャラ。他の噺家さんよりヤンチャな感じでした。芝の浜の描写はありです。帰ってきて女房に見せて仲間にご馳走してドンチャンやりたいというと女房が「早すぎるからお寝なさい」と言って一寝入りして起きた勝五郎。そこからフツーの芝浜ですと勝五郎、女房に「夢見てたんだよ」と言われて「そうかぁ?夢かぁ?やけにはっきりした夢だったなぁ」とキョトンと不思議がり、また冒頭とそっくり同じようにやって、さもデジャブだったかのように演じることが多いと思うんですが、龍志師匠のはちょっと違いました。

勝っつぁん、大金拾うなんて浅ましい夢見ちゃった自分が情けないといった風にガッカリして「そうだよなぁ、そんなことないよな、夢だよな・・・」と女房に「飯台は、包丁は、草鞋は・・・」と訊ねながら、酒に飲まれて腑抜けになっちまったからそんな馬鹿げた夢見ちまったんだ、こんなんじゃダメだ、仕事に行かなきゃ、とショゲた勝五郎がいじらしい。そして女房が勝五郎に夢だと信じ込ませる必死の芝居、芝居を打つというよりも説得ですよね、「あんたが酒ばっかり飲んでるからそんな夢見ちまうんだよ」と言いながらも、自分の亭主はそんな性根まで腐ってなんかいない、目を覚ましておくれよ、と亭主を信じる女房の愛情。思わず涙がじわと出てしまいました。このシーンで泣かされるとは思わなかった!後半の真面目に働く勝五郎のサッパリした江戸っ子な感じも、サゲの自然な台詞もとても良かったです。おそらくネタおろしから二度目の芝浜だと思いますが、そうとは思えないほど素晴らしい芝浜でした!また聴きたいけど極寒の師走でないと聴くチャンスが巡ってこなさそうなので、ぜひ来年の暮も足を運びたいと思います。

2020.12.2
立川流日暮里寄席 談志直弟子の夕べ
日暮里サニーホールにて
花修 つる  
談吉 弥次郎 
小談志 時そば 
志遊 石橋山合戦相模武士の誉〜真田与一編〜
仲入り
談修 道具屋 
龍志 芝浜  

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