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ナカさんの寄席日記 菊太楼の会

前から気になっていた、古今亭菊太楼師匠の会に行ってきました。
菊太楼師匠は圓菊一門12番目のお弟子さん。超人気の菊之丞師匠や文菊師匠に挟まれていてちょっと目立たない師匠ではありますが、実力もあるし色気もあって注目しています。寄席に入っていると安心できる師匠です。
菊太楼師匠に何故ハマったかというと、「粗忽の釘」という噺です。女房とのなれそめを上機嫌でペラペラ喋っていて「庭で行水してたら盥の底が抜けて胴の部分をチンチン電車の様に抱え持って退散したんだよ!」というクダリがあります。「チンチンチ~ン、チンチンチ~ん♪」と腰をくねらせ(この辺が圓菊一門っぽい?)裸を見られてむしろ喜んじゃってるご陽気な夫婦、って感じがめちゃくちゃ面白かったんですよね!その「粗忽の釘」以来、菊太楼師匠が好きになりました(笑)色っぽいけど根は真面目そうです。

緊急事態宣言中の会なので客席も少数精鋭といった人数。皆さんご贔屓といった感じで、マクラでも「この落語会は皆さんのご都合に極力合わせますので、何時が良いなど希望があれば言って下さい!」と師匠おっしゃっていました。そのくらい低姿勢な師匠です。木戸銭払う時、奥様と師匠に初めてご挨拶しましたが、明るい奥様と腰の低い師匠でとてもお似合いのご夫婦でした。やっぱりお内儀さんが頑張っている噺家さんは女性としては応援したくなっちゃいますね。アットホームな落語会でまた次も、と思います。

前座の菊一さん。東京大学で哲学を学びお父さんはロシア人のハーフというスゴイ経歴。お顔立ちも草刈正雄さんのようにほりが深く鼻筋が通って甘いマスク。落研でもかなり優秀だったそうで前座さんとしてはかなり上手と思います。良い師匠の元で素直に成長して欲しいですね。二つ目になって激太りとかしないで欲しいです・・・。「道灌」丁寧に演じておられました。
菊太楼師匠で「湯屋番」。これは師匠のキャラにとっても似合う!!呑気でチャライ若旦那。菊太楼師匠の色っぽい雰囲気とバッチリ。前半のおかみさんに買い物を頼まれる部分は省略される事が多いので聴けて良かった。硬い豆腐を買ってきておくれ、というくだりがとても面白かったです!

仲入り後はネタ出しの「鰍沢」。これは菊太楼師匠のイメージに無いなぁ~どんな感じなんだろう?と楽しみにしていました。お熊さんって花魁時代はけっこう良い人だったんですね。鰍沢というとお熊さんが超冷酷という演出にする人多いですが、菊太楼師匠のはお熊さん本来の優しさもちゃんと描かれていました。そして卵酒を飲むシーンでは旅人は注がれた卵酒をぜんぶ呑み切っちゃって(えー?これじゃ亭主が帰ってきて呑み残しの卵酒が無いじゃん?)と思ったら、鍋に作ってあるのがまだ残ってるんですよね。なるほど。卵酒って小さい頃作ってもらった記憶があるけど、美味しいのかなぁ。イギリスにもエッグノックという卵酒に似た飲み物があるそうですが、あんまり今時卵酒飲む人はいませんね。昔は卵は貴重だし滋養強壮という意味もあったんでしょうね。菊太楼師匠の鰍沢はお熊さんは怖くない系でした。お熊に鉄砲で追い詰められるところは危機迫る感じが良く出ていました。

やっぱり「鰍沢」のお熊がめちゃくちゃ冷酷で怖い女だ、というイメージは権太楼師匠とか龍玉師匠とかの影響ですよね。林家正雀師匠や一朝師匠の鰍沢はお熊は優しい系でしたから色んな表現があって良いと思う。去年正雀師匠の芝居噺の会を聴きに行った時、「圓生のお熊は怖くて彦六のお熊は優しかった」と仰っていました。いろんな人の鰍沢を聴いてみたいです。そして日蓮宗に因んだ噺もこの鰍沢以外にもおせつ徳三郎や堀ノ内、甲府いなど色々あって興味深いです。

2021/2/13 お江戸両国亭
 菊太楼の会
菊一 道灌
菊太楼 湯屋番
 仲入り
菊太楼 鰍沢

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