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興味ない人には売れないよね…? (持論)


熊本県の小代焼中平窯・西川と申します。

今回は具体的な例え話から書いちゃいます。



「ボカロ曲をダウンロードして聴くのが趣味」
の人に
「クラシックの名盤レコードを売る」
って至難の業じゃないですか?


というお話です。




考えた3つのきっかけ


磁器を求める人


数年前ですが、とある方から
「白くて薄くないから小代焼は売れにくい」
というご指摘を受けました。
※中平窯へはお越しになったことが無い方です。


おさらく磁器の器を想定してお話されていたのだと思います。


丁度その頃、某ホテルからのご注文で黒い器を600個ほど受注していたタイミングでしたので、

「…え?…黒い器のご注文ふつうにありますよ(・・?」
という感じでした。


当時は
「なんだかピンとこないアドバイスだな~」
と思っていたのですが、この時のエピソードが

「誰に何を宣伝するか?」
を考えるきっかけとなりました。



磁器を買わないお客様


上記のエピソードとは無関係に、暫く磁器の実験をしていたことがありました。

唐津焼の発掘現場から
『陶器と磁器がくっついた陶片が見つかった』
という情報を本で見まして、

「登り窯やガス窯で小代焼を焼く時に、同じ焼き方で同時に磁器も焼けるのか?」
という実験でした。


実験そのものは成功して満足したのですが、
その実験で焼いた白磁のぐい呑みを店舗へ並べたところ、

なかなか売れないんです…!


その時に
「あ、中平窯へ来るお客様は【小代焼】を求めて来るんだ!」
というのを身をもって体験しました。


小代焼の店で白磁を売るのは
『ラーメン屋のつもりで来店したら、メニューにパスタがある』
ような状況だったんです。



ポスティングに効果がない


また、さらに別のきっかけもあります。

私が実家へ帰った頃は本当にお客様が少なく、私もかなり焦っていました。集客手段の一つとして行ったのがポスティングです。


自分でチラシを作り、荒尾市内の住宅地を歩きまわってポストへ投函しました。

時期をずらして合計3回ほどポスティングしたのですが、
反応率はほぼ0%!!


ショックであると同時に
「小代焼は生活必需品ではなく嗜好品なんだ…」
ということが分かりました。


どれだけ宣伝されたとしても、小代焼に興味があって買いたい人しか来店されないんですね。



自分自身で例え話


これは私についても言えることです。


私は基本的に車を移動手段であると考えているんです。
デザインと乗り心地は良い物に越したことはないけど、まぁ別に強いこだわりはありません。

「荷物がどれくらい積めるかな?」
「色はこれがいいな~」
という小さなこだわりはありますが、

「高級車に乗りたい!」
「19○○年代の○○という車種が欲しい!」
といったマニアックな願望は無いという意味です。


何かの間違いで大金持ちになったとしても、
高級車は買わずに、せいぜい今乗っている軽自動車のグレードを上げるくらいかなと思います。

※これ、個人的に車に興味が無いというだけの話で、車を悪く言っているわけじゃないんですよ。


自分自身について考えてみても、
宣伝されてもお金があっても、興味が無いものは買わないんだと確信しました。


結論:どんなお客様へ届ける?


小代焼を好きな人


まず、一番考えるべきはここだと思います。
「小代焼を好きだ」というお客様へ、良い小代焼を届けること。

私自身、小代焼が大好きでこの仕事をしているので、
作り手もお客様もどちらも幸せです。



焼き物が好きな人


次に考えるべきは
「小代焼を知らないが、他の手作り陶器が好きだ」というお客様です。

知ってさえいただければ、好みの小代焼を何かしらお届けできるかと思います。


産地との距離や作風から言えば
唐津焼、萩焼、上野焼、高取焼、小石原焼
あたりのファンである方々と相性が良いはずです。

また、手作りの器が好きだとしても
有田焼、九谷焼、京焼
あたりのファンの方々は、あまり反応されないかもしれません。



焼き物好きになる可能性のある人


最後はもっと広い範囲ですが、焼き物を好きになる可能性がある方々です。

伝統工芸が好きであったり、生活道具を気にしている方々で、

例えば
「料理が趣味で、盛りつけが気になり始めた」
「生け花を始めて、自分用の花器が欲しくなってきた」
という方々です。

広い範囲になりますが、手当たり次第にポスティングしたり折込チラシを使うより、ずっと可能性があると思います。



さいごに


以前、中平窯へお立ち寄りいただいた方が店に入るなり大皿を見て
「この値段なら洗濯機買えるじゃん!」
とおっしゃり、直ぐに出て行かれたことがありました。

魅力を感じていない方へ押し売りしたとしても、
売り手もお客様も不幸になると思います。


自分で良いと思える小代焼をベストを尽くして作り、
それを好きな客様へ届けるということが出来れば、
その器に関わった全員が幸せです。

まだまだ足りないことばかりですが、
小代焼に関わる全員が幸せになれる方へ向かうために考え、行動していきます。


2023年7月21日(金) 西川智成

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