2020年に読んだ本

恒例の今年に読んだ本の振り返りをFacebookのノートに書こうと思ったら、ノート機能がいつの間にか廃止になっていてびっくりした。かろうじて過去の記録は消えていないようで良かったが。そのためnoteにも残しておく。

今年の読了は63冊。ここ数年で最低記録の昨年の69冊をさらに下回った。ただ、今年はこの状況でよく頑張って読んだ方だと思う。今年の読了記録を振り返ってみると4月、5月がわずか1冊ずつだった、ということの影響が大きい。この時期は本当につらかった。

リモートワークが本格的に始まったころは、なんとなく「家で本をじっくり読んだする時間が取れるのかなぁ」などと淡い期待を描いたが、現実は違っていた。まず、自分の場合は通勤時間を読書に当てていたので、強制的に取れるその時間がなくなった。それと、慣れないリモートワークで混乱がある中、公私の境も曖昧になっていった。アウトプットの時間ばかりで、意図的なインプットの時間を取りづらくなっていった。それ以上に大変だったのは2人の小学生の子どもの授業代わりの面倒を見なければいけなかったこと。つまり、教師の役割として元々外部に存在していた子どもの教育という時間を取り込まざるを得なかったことだ。おまけに今年は加えて管理組合でやらなければいけない仕事や感染症対策もあり、実際に時間はいろいろと消えていった。昨年書いた読書録を読み返すと仕事が忙しかったことを言い訳にしていたが、今年はその比ではなくあらゆることの影響で物理的に時間がなかった。

本当に大変な一年だった。ただ、自分などまだマシな方で、世の中にはもっと大変な状況になっている人が大勢いると思う。ここまで世の中の変化を感じた年は、長年生きてきた中で初めてのことだったと思う。

読書に対する意欲自体は衰えてはいない。この変化の大きい現在において、ますます必要とされるレジリエンスを鍛えるためには、多様なインプットが必要だ。ただ、来年は今年以上に大変なことは目に見えているので、なんとか頑張っていくしかないな、と覚悟を決めているところである。時間をますます効率的に使わなければいけなくなっていく。少しでも多くのインプットの時間を確保したい。

というわけで、今年は冊数が少ない代わりに前置きが長くなったが、今年読み終わった本をいくつか紹介する。

「自己啓発」は私を啓発しない

軽く読めるが実体験からの生々しいリアルな言葉が刺さる。「自己啓発」に迷える人には読んでほしい。自分はもうそういう歳ではないので、意外と奥が深くて面白く読めた。7年前の本だが古さはない。

新規事業の実践論

大企業内で新規事業立ち上げに携わった人なら実感する「あるある」のオンパレードに大きくうなずいてしまう。ここまでノウハウが体系化され流通するようになった今の時代に隔世の感がある。しかし、それでも新規事業が生まれにくい大企業の環境というのは、経営の大いなるジレンマがあるのだが、もう一度基本に立ち帰りたくなる。

他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論

『対話を通して「反脆弱的」な組織へ』という言葉には共感する。現代においては結果を出すために、本当に対話が大事な時代だと思う。一度自分の「ナラティブ」を脇に置く、というアプローチは有効だろう。「正しい説明という暴力」という表現は、これが横行していることによる違和感を適切に表している言葉として印象に残った。今年前半に読んだ本の中では一番良いと思った本。

持統天皇

図書館の新書コーナーで出会った本。日本の歴史物はあまり読まなかったので、知的好奇心が刺激され非常に面白く読めた。一つ驚いたのは、持統天皇はそれまでの女帝の即位の慣例を破っていたのだった。そう考えると歴史ある「伝統」とされているものでも、実は「変化」をしていたという当たり前の事実に気がつく。

シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成

今年の前半でもっとも話題となった本の一つだろうから、あまりここで詳しく書かない。「イシューからはじめよ」の安宅さんによる、AI時代に日本が生き残るためのグランドデザイン。次世代の個人にとっても、これからを生き抜くヒントが詰まっている。日本は「異人」の活躍を待っている。

サードドア: 精神的資産のふやし方

売れた本だと思うが、本のタイトルからのイメージとはぜんぜん違う本だった。個人的にはあまり得るものはなかったが、楽しく読める読み物だった。

ドリーム・ハラスメント 「夢」で若者を追い詰める大人たち

『実現可能性が低過ぎると自己効力感は高まりません。にもかかわらず、大人は実現可能性が最も低いものを若者たちに求めています。そう、「夢」です。』私は昔から夢を持たない人間だったので、自分より年下の人間に「夢を持て」などとは言いようがないし、言うつもりもない。夢を持つことを教育の現場で強要されているのは本当なら、最近の若者は本当にかわいそうだと思う。新書で読みやすく、とても真面目な分析で共感できる。

身銭を切れ 「リスクを生きる」人だけが知っている人生の本質

一応崇拝するタレブの最新作なので挙げるが、個人的には前作の「反脆弱性」の方が心に刺さったなぁ。この人の本は同じ主張を繰り返し、さまざまな切り口から伝えようとしているだけなので、どの本を読んでも言いたいことはあまり変わらないかも。けど、この人の本は、出たら読む。

直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN

読んだときはものすごいインパクトと刺激を受けたのだが、その後忘れてしまっているのは、たぶん元々の自分の思考と合致していながら、アクションに落ちていないからだろうな。本自体は良い本だと思う。

感染症と文明――共生への道

コロナ禍でなければおそらく手にしなかったであろう、9年前の本。日本には疫学のエキスパートが乏しいことが明らかになった中での良書。新書なので読みやすい。『「健康と病気は、生物学的、文化的資源をもつ人間の集団が、生存に際し、環境にいかに適応したかという有効性の尺度である」こうした考えの下では、病気とは、ヒトが周囲の環境にいまだ適応できていない状況を指すことになる。』ペスト終焉を経てヒトが環境に適応した世界では、世界中での分業体制が進むことにより地域間格差が固定されたという社会的な影響が見られたということだが、果たして進行中のコロナ禍の後にはヒトはどのような適応をしていくのだろうか。

美術展の不都合な真実

これは展覧会によく行く人間としては面白く読めた。新書なので気軽に読める。裏事情を明かすような内容だが、そうは言っても暴露本というほどではなく、開催側のビジネス事情の立場にたてばどれも「なるほどね」と思えることが多かった。

THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス

営業もサイエンスが重視される時代になっていく。マネジメントにも理論的なアプローチがこれからますます重視されていくことだろう。

テレビ界「バカのクラスター」を一掃せよ

私は普段テレビの情報番組といった類のものを見ないが、それらがいかにいい加減なものであるかを徹底検証していた。テレビはオワコンとはいえ、いまだに影響力は大きいだろうから、こういうの見て「コロナ脳」が量産されるんだろうなぁ、と、軽い読み物として読んだ。科学的な裏付けのない流説、以前言ったこととの厚顔無恥な手のひら返し、単に政権を叩きたいだけの野党的な発言。マスコミも飯を食うためのビジネスとは言え、ひどいね。こういう連中からカモられないように、自分の身は自分の知識や見識で守るしかない。

21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考

ベストセラーであり、ハラリの新作であるので細かい説明は不要だろう。とはいえ、原著発売から2年、日本版発売から1年後の年末にやっと読んだ。現代の問題にフォーカスした本作では、多々の問題に対する生き方のヒントとしてあげたキーワードはやはり「レジリエンス」。最後にめずらしくハラリ個人の体験が述べられているが、それは「瞑想」について。最近「マインドフルネス」という言葉が流行っている理由がわかった気がする。「ひたすら観察せよ」

いじめとひきこもりの人類史

図書館の新刊コーナーで出会った本。ニューロダイバーシティという言葉をこの本で知った。定住が起こってから共同体が形成されたときから、「社会で生きづらい」者は「漂泊」してきた。日本の歴史でもそうして異界に生きてきた「異人・変人」はいた。逃げ場のない現代では「ひきこもり」が生み出された。終盤でもCBDの効用などを解くが、これからの人類はそれぞれのニューロの特性に合わせて、自分でメンタルをコントロールして、社会をうまく生き抜いていくことになるのだろう。そう遠くない未来のような気がする。

以上、徒然なるままに15冊をピックアップし、読んだ順で紹介してみた。

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