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買収されて、従業員が喜ぶわけない!【M&A日記】

タイトルは、買収を通知されたタイミングにおいては、喜ぶ従業員なんていない、という趣旨。
なので売主としては、通知のタイミングではなく、そのあとを想像して譲渡することが大事!ということを言いたいための本日のnote。

買収を通知されたタイミングで喜ぶ従業員がいないのは、偏に不安が期待を上回るため。

M&Aは、当社の考えとしては、譲渡対象企業の更なる発展を目的として行われるもの。
そのために最適な相手を探し出し、同時にオーナーのキャピタルゲイン獲得も実現するというもので、あくまで目的は対象企業の発展にある。

なので、従業員へ通知するときには、ざっくりと言えば、
「最適なパートナーとの巡り合わせがあり、一緒になることで会社の更なる発展、引いては社員の皆さんにとっての環境改善にも繋がると確信したので、〇〇社の資本を受け入れることにしました」
というような趣旨で話をする。
買収側にも参加してもらい、「対象会社が更に発展していけるように、グループとして全力でサポートしていきます」というようなことを話してもらう。

聞いている側としては、もしかしたら自分にとって大きなチャンスかもしれない、という期待も少なからず得られるような話を必ずする。

しかし、どれだけそういう話をしたとしても、結局は不安が上回る。

従業員にとって、M&Aは全く身近ではない。
理解されてない横文字を使うのは余計に不安を煽るため、まず基本的に「M&A」という言葉は使わない。
資本提携とか、親会社ができるとか、そんな言い方をして、何となくM&Aよりはイメージしやすい言葉に変える。
しかし、変えたとて、何れにしても自分たちの立場からすれば縁遠い話には変わりなく、よく分からない。

社長が退任すること、親会社ができる、ことは何となく分かる。
とすれば、

  • 自分の評価・給料ってどうなるんだろう?

  • 今まである程度裁量を持たせてもらえてたけど、縛りが厳しくなるのかな?

  • 自分の所属ってどうなるんだろう?

など、現状からの変化を想像してしまい、めちゃくちゃ不安になる。
この不安は、よほどポジティブだったり自信のある人でなければ、先にあった期待を上回ってくる。

なので、通知のタイミングで諸手を挙げて喜ぶ従業員なんていないのだ。

ということは、譲渡する側とすれば、そこに注目をしても仕方ない。
どれだけ準備したとて、不安が期待を上回るのだから。

大事なことは、M&Aが成立して、しばらく一緒にグループとしてやってみたときに、「全然良いじゃん」って思ってもらえるかどうか。
特に2(意欲高い):6(意欲普通):2(意欲低い)の法則で言うところの、2(意欲高い)と6(意欲普通)の人たちがそう思うかどうか。

意欲のある従業員たちにとって、これまでの制約条件が取っ払われ、より大きな成果を創出できるようになる、というのが理想。

そういうことをイメージできる相手選びをすることで、従業員に通知したタイミングでは不安に駆られていたとしても、半年、1年後にはそれらが払しょくされて、M&A以前よりも力を発揮するようになる。

M&Aによって、従業員に裏切られたと思われてしまわないだろうか、というような不安をお持ちの方は、是非その先のことをイメージすることをお勧めする。
そしてそのイメージを実現するための相手選びこそが、失敗や後悔する確率をグッと減らす方法だと思っている。


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