#38 2023年読んだベスト本5

今年の年初に、今年は100冊読むぞ!って意気込んだんのだけれども、結局は50-60冊ぐらいになってしまった。なんやかんや忙しいと本を開く時間がなかったり、インターネットの記事などで満足してしまっているのは事実ある。
その中でも、結構あたりハズレはある。、代替Notionにメモをとりながら読んだり、終わった後にまとめてメモを作成するのだけれどもその分量に大きく違いがでるのだけれども、そのメモの量が多かったものの中でベスト5を選出してみた。

年末年始の読書のお供に、また来年の読書リストの参考になれば幸いです。


①力と交換様式

これは下記のブログでも書いているので、重複だけれども世界の見方を変えることができるような本だった。交換様式で世界を定義して、その発展によって世界をみることができるというもの。

読み進めていくうちに、世界史というものを高校のときに学んだのと別の角度から学びなおしたような気持ちにもなってくる。マルクスの唯物史観をアナロジーとして歴史館を捉え直してくれる。

交換様式Dの到来を予言しており、それは交換様式Aの高次元での回復とあるように著者自身も創造しきれていない何かが今後の世の中に起こりうるのかもしれないことが想像できる。

これはマーク・フィッシャーが投げかけた、資本主義のオルタナティブの無さに対しての一つの方向性ではあるなと思っているが、この交換様式C(資本主義)の次に来る未来について、どのようなものを想像しうるのかが、自分の中での興味分野として非常に関心が高かったのでメモを取りすぎるぐらいとった本であった。圧倒的今年No.1。

A:互酬(贈与と返礼)B:服従と保護(略取と再分配) C:商品交換(貨幣と商品)D:Aの高次元での回復

力と交換様式

DはCが支配的となる資本主義のあとで出現するような社会の原理 BとCが発展を遂げた後、その下で無力化したAが”高次元”で回復したもの。しかしこれは古代において出現していた

力と交換様式

フランシス・フクヤマが歴史の終焉をいったが愚かしい議論であり、歴史の反復を表す。それまで第1世界を統率し保護する超大国として自由主義を維持してきたアメリカがそれを放棄し、新自由主義を唱え始めている。つまり、資本主義経済のヘゲモンとしての米国の終焉が生じた。これは19世紀後半にイギリスが産業資本の独立的優位を失い、それまでの自由主義を放棄して帝国主義に転化したことと類似する。 自由主義とはヘゲモニー国家がその最盛期においてのみとりうる政策

力と交換様式

取材・執筆・推敲 書く人の教科書

これは若干今更の本(発売は少し前)でもあるのだけれども、積読していたのを改めて読んだたら非常に勉強になった。個人的に今年は書くことの頻度を増やそうとしたのに、それでもやはり長い文章が書けないのは修練不足を感じた。

タイトルにある通り書いて誰かに何かを伝えたいと思っている人たちは必読の本でもあるとおもうので、非常におすすめする。帯に担当編集者の柿内さんが書いていただけているように、この一冊で本当に良いぐらい詰まっている。(小手先のテクニック論とかではないので、あしからず)

個人的には、この本を読んで”編集”という行為の尊さと難しさを知った。自分がしたいことは編集という概念の中にあるのかもしれないとも思えるようになったぐらい良い本だった。もっと早くに出会いたかった本。

といいつつ、やはりこれを読んだだけで文章がうまくなるかとか、伝えるのがうまくなったかというとそうでもないので、もう何回も読んで自分の血肉にしたいと思っている。

まずは「読者としての自分」を鍛えていこう。本を、映画を、人を、世界を、常に読む人であろう。あなたの原稿がつまらないとしたら、それは「書き手としてのあなた」が悪いのではなく、「読者としてのあなた」が甘い。能動的に読む人は、映画を映画としてたのしみつつ、ジェットコースターから降りることも 辞さない。そして自分のこころが揺さぶられた瞬間、なにによってこころが動いたのか、そのからくりを読み解く意志と落ち着きを持っている。つくり手の意図を、仕掛けを、その構造を考える。自分なりの仮説を立て、自分なりの解を出す。それが取材者に必要な能動的読書であり、鑑賞だ。また、真の傑作とはそうした観客たちの「読み」をはね返すだけの力を持っている。

取材・執筆・推敲 書く人の教科書

編集者にとっての「編集」とはなにかと問われれば、ぼくは「誰が、なにを、どう語るか」の設計だと答える。究極的に編集者は、「人」を編集している

取材・執筆・推敲 書く人の教科書

Network state

元Coinbase のCTOであり、Blockchain/Bitcoin業界における有名な論者であるBarajiが書いた思想書のようなもの。

前編英語なので、読むのには苦労したが読む価値がある本だった。(まあDeepLほぼだよりだったけど)ただ長さ的には長すぎないので、ちょうどいい。そもそものCryptoの思想がよりわかりやすくまとまっている。このようなNetwork stateの彼が呼ぶようなものが歴史的に見ても必然のようにも思えてくるような感覚を覚える。

彼のこの本で扱う内容は多岐に渡るので、一言で感想がいいずらいのだけど、冒頭で紹介した力と交換様式を呼んだあとの読了感がある。Baraji なりのView(ビットコインマキシマリスト、Cryptoバイアス)によって世界をどのように捉えているのかという、切り方が一つ面白いと思える。

それは、神・国家・ネットワークのどれか2つによって、国は統治されるべきという議論展開や、Economic left or Right と Authorization と libertarian のような軸を使いながら、今の国家が選んでいる方向性について議論を展開などしており、書きながら気づいたけど交換様式Dを探している議論でもあるのかもしれないと思えてきた。

自分の興味関心にも近いのが、このような資本主義の次であったり、次の未来・社会の思想や創り方について興味があるので、このような特定の構造や思想から捉えた社会の見方みたいなのが個人的に刺さっているのだと思う。

重要なアイデアは、クラウドから国土を人口化し、地球上のあらゆる場所でそれを行うことだ。イデオロギーがバラバラで、地理的に中央集権的なレガシー国家とは異なり、ネットワーク国家はイデオロギーは一致しているが、地理的に分散している。国民は世界中に大小さまざまな集団で分散しているが、その心は一カ所にある。

DeepL 翻訳 Network state

3つのレヴィアタン(神、国家、ネットワーク)が互いに闘い続けているとき、それらは純粋な形のままではいられない。人々がそれらを混ぜ合わせ、新しい種類の社会秩序、新しいハイブリッド、ヘーゲル的な意味での新しい合成を生み出すのを見るだろう

DeepL 翻訳 Network state
Network state


Network state

対話型ファシリテーションの手ほどき

この数年の自分の中のテーマが”対話”と"ナラティブ"である。このあたりは下記記事など参照。

その対話においてはこの本は目から鱗というか、人との話し方を反省した1冊であった。。コーチングとかそういったものを学んだことがある人にとっては、より深く理解ができると思う。

"どうでした?ではどうにもならない"や、”考えさせるな、思い出させろ”のような、短いセンテンスなのだけど、日頃のコミュニケーションについての反省をさせられることが多い。

徹底してティーチングではないやり方における対話ということはどういうことかについて気づきが多い。通常あるコミュニケーションにおいて、本当に対話をしているときっていうのはどういうときなのだろうか、お互いのプレゼンテーションの試合に会話がなっていないだろうか。たまに投資検討をするときにも、お互いの意見をぶつけ合うだけで終わってしまうときがある。(それはそれで場の設定の目的においては、大事なのかもしれないけど)

対話とは、”一度自分のナラティブを傍において、相手のナラティブを考えてみる”ということは、他者と働くとい本に書いてあったことである、この一度自分のナラティブをそばに置くという行為は本当に難しい。"オープンになるためには保留する"というのは、それでも対話をはじめようという本に記載があったが、同様のことが言えるであろうと思う。

こう思うと結構対話というタイトルがついた本を読んできたが、その中でもベスト本ではあったので、ぜひ読んでいただきたい。一方これを読んだからといって、日常で今実践できているかというと怪しいというかできていない。意識しながらこの5年ぐらいをかけて学んでいく技術なのかもしれない。頑張りたい。

問題は何ですか?と尋ねず、事実質問に徹する

対話型ファシリテーションの手ほどき

Why(なぜ)とHow(どう)を徹底的に避けて、何、いつ、どこ、だれ、いくつ、いくらなどを聞く

対話型ファシリテーションの手ほどき

なぜ?どうだった?と聞きたくなったら、事実質問による他の聞き方に置き換える

対話型ファシリテーションの手ほどき

加速主義 資本主義の疾走、未来への〈脱出〉

このあたりの話題は、「ニック・ランドと新反動主義 現代世界を覆う〈ダーク〉な思想 (星海社新書)」 を読んだときから感銘を受けており、個人的にずっとキャッチアップしたいと思っていたところだった。

しかし加速主義に関する本って、日本語だとなのかわからないが、あんまりなく、少し古いのだけどこの本を買うしかなかった。ニックランドとかマーク・フィッシャーみたいなあたりの著書が間接的には原本なのでそのあたりを読むべきなのかもしれないが。もっというと、ドゥルーズ/ガタリあたりを本当は読むべきだけど・・(古典難しくて寝てしまう・・)

この本も積読していたところたまたま今年読んでいたら、OpenAIやAIの発展とともに、USではミーム化してきたa/ecc(効果的加速主義)が話題になっており、良いタイミングで読めたなと思う。その話題については目下リサーチと執筆中なので来年早めにだしたい。

なぜ自分がこの思想に非常に興味深いかというと、VCの仕事をする上で避けては通れないかつ、構造的には加速主義に賛同するインセンティブが仕事としては多い(厳密には左派加速主義的なところだけど)という仕事の上のつながりがある点というところはある

またもう一つは、重複だが力と交換様式と、Network statesと同様に、資本主義の次についての思考をしたいというのが、個人的には興味があるところで、そういったお題に対して加速主義というのは一つのベクトルを示してくれているように思えているから面白いと感じているのだと思う。ただし一概にこれが答えだとは思ってはいないが。

基盤的コミュニズムなマルクスの方向性も面白いとはおもうが、現実性があまり感じれないのは下記のブログでも書いたが、そういったあたりについて高い関心が自分の中ではある。

この方向性においてより面白い本があったらぜひ紹介していただきたいし、来年も同様に次の社会において必要な思想とはなにか?ということを自分の中でも考え続けたいと思っている。

その思想にあったテクノロジーであり、企業というのが社会に必要とされるはずで、なのでこのあたりは考え続けたい。VCという本業に直接が関わりがなくとも・・

右派と言われる加速主義も左派と言われる加速主義も、資本主義の経済システムがこれから終わるだろうという歴史目的論を土台にしているところがあります。その共通理解の上で、資本主義は時代錯誤だから早く技術シンギュラリティに行こうだとか、もしくは共産主義的な民主主義に行こうだとか、話が枝分かれしていきます。その人が描いている未来像によって加速のベクトルが変わる

加速主義 資本主義の疾走、未来への〈脱出〉

加速主義というのは ―― 新反動主義もそうですが ―― 結局私たちは未来をどうしたいのかという問いを私たち自身に絶えず突きつけてくるところがある。それが、彼らが素朴政治と呼ぶような旧来の左派に対しては挑発的な問いとして機能したということなのだと思います。また啓蒙の理念や進歩の概念の再評価という文脈が加速主義のなかにあるということは、同時に、人間的諸価値自体も再考されなければならないということを含意している

加速主義 資本主義の疾走、未来への〈脱出〉

加速主義は、資本主義の開放的力学の側につく。それは、封建主義の鉄鎖を壊し、モダニティに特有の、絶えず分岐する実践的可能性の広がりへと導いた。多くの加速主義思想の焦点とは、そのような資本主義の変形的な力と、交換価値、資本蓄積という公理系とのあいだの本質的と思しきつながりをテストすること

加速主義 資本主義の疾走、未来への〈脱出〉

以上がベスト5本であるが、これ以外にも面白い本は多く出会えた気がする。余談だがビジネス書が年々少なくはなってきてはいるが、多分それはインターネットの記事に代替されて言っているからなのかもしれないと思った。

本にすべき情報と、本でない方が良い情報というのはあるのかもしれない。自分が編集者であれば何の情報はなにの媒体で掲載したほうがいいかについては今一度考えないといけない時代がきているような気もする。

来年はよりもっと幅を広げる読書を行っていきたいと思っている。ぜひ興味がある本があればご一読いただければ幸いです。



今年読んだ本達
55冊ほど(途中まで読んだのを含めると60冊ぐらい)、小説含めるともう少しいきそう(小説はメモってないため把握できてない)来年は100冊を目指したい

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読んだ本リスト

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