見出し画像

バトルロイヤルゲームの醍醐味とは?『Headbangers: Rhythm Royale』をプレイ

 すっかり季節の変わり目の恒例行事になった「Steam Nextフェス」に、過去にあすまくんにお薦めされていた『Headbangers: Rhythm Royale』のデモ版が出ていた。いわゆる音ゲーのバトルロイヤルゲームとのことで、テストプレイを申し込んでおきながらすっかりそのまま放置してテストプレイが終わってしまったタイトルであった。勿体無いことをしたなと思っていたら今回のイベントでカムバック。今度こそ遊ぶぞということでインストールしました。ちなみになんで発売始まってるのに製品版じゃなくてデモ版のレビューなの?とお思いでしょうが、レビューを書いてからアップロードするまで時間がかかってしまい、気がついたら発売されてましたテヘペロ。

30名でスタートし、20名、10名、最後は5名での決勝戦
全4ラウンドで行われる

 音ゲーは普段全然やらないんですが、最初のラウンドの方は非常に簡単なルールのゲームが多く、3分の1が脱落するものの慎重にやれば勝ち残るのはそう難しくありません。お手本で示された動きを再現するお馴染みのアレは、ゲーセンで遊んでいたりスマホタイトルで同じ曲を何度も反復練習するようなプレイヤーにとっては非常に簡単な物で物足りなさすら覚えると思う。

タイトルの由来になっているヘッドバンキングをする鳩たち

 ちょっと捻った物になると「サンプルとして流れたSEに使われている楽器はどれか?」というクイズの解答ステージなどもあり、リズム感に自信がない人でも勝てる余地のある要素を盛り込んでいるのは面白い。

アメリカのTVショー風味の楽器当てクイズ

 その他にもお手本通りの鍵盤を弾くために、エイムしてパチンコ玉を鍵盤(後半は鍵盤が勝手に左右に動いたりする)に当てるなど、単純な音ゲーにならないようバラエティ要素が盛り込まれていてゲームの作りとしては丁寧な物になっていると感じた。

勝手に歩き出す鍵盤たち
エイムが合わせにくいだけでなく、音階で覚えないとどの鍵盤か分かりにくい

 その代わり決勝はガッツリ目の音ゲーになっており、レコード盤の上に表示されたスコア通りにボタンを押すのだが、同時押しや長押しが混在していて、昨今の音ゲーに慣れてないと決勝ラウンドを勝つのはちょっと難しそう。この辺の音ゲーとバラエティのバランスの取り方には好感が持てるし、ちょっと首が長くて中音域で鳴き続ける鳩のキャラデザも今風で、一見すると面白そうに感じます。

70年代ソウルのLP盤が決勝の舞台だ!

 ……なんだけど、何か遊んでいても、もう一つ面白く感じない。決勝は確かに難しいステージなんだけど、別に勝てないから面白くないというわけではないんです。ただ、これを遊んでいてすぐに思うのは、なんでこれバトルロイヤルゲームなんだろう?という疑問です。内容的に大人数でワイワイやった方がよかろう、とは確かに思うものの、大人数で遊べるメリットが「大人数で遊べる」以上の物になっていないんです。要はスコアで競う内容になっている以上、一人一人が個別に遊んでいるのと何が違うの?と。

 そこを工夫するためなのか、ラウンド中に突然アイテムが飛来して早い者勝ちで取得できるというギミックがあるのですが、そのタイミングがお手本が流れる瞬間などで、これの取得(一番乗りで反応しないと貰えない)に集中するとお手本をきちんと聞くことができないというリスクとのトレードになっています。でもそれってストレスのかかる仕様で、あんまり楽しい仕組みじゃないんですよね。積極的にその仕様に乗っかろうという気持ちになれない。

 そもそもバトルロイヤルというジャンルが爆発的にヒットした契機というのはご存知『PUBG: BATTLEGROUNDS』だと思うんですが、なぜあれだけ皆がバトルロイヤルというジャンルに光明を見たのか。それは100人いるプレイヤーのふとした行動が他プレイヤーに思わぬイベントを偶発的に与え、それを解決するための動きが更にまた他プレイヤーへイベントを与えるという連続的な現象が可視化された状態で繰り広げられたからだと思います(だからゲーム実況向きだったんですね)。上記の様な現象をバタフライエフェクトと呼びますが、まさしく一人のプレイヤーが立てた足音が遠因で6キロ先のプレイヤーがヘッドショットで死ぬ、というような「風が吹けば桶屋が殺される」ことが平気で起こるのがバトルロイヤルゲームの醍醐味であったと思います。『Headbangers: Rhythm Royale』にはそれが無い。

『PUBG: BATTLEGROUNDS』

 その後『PUBG: BATTLEGROUNDS』に続いたバトルロイヤルゲームでいうと『Fortnite』『APEX Legends』といったいずれもシューターゲームで、実は同じ規模のヒット作はシューターゲーム以外では出てないのでは? と思ったところで『Fall Guys』はどうよ、と自問自答。60名(から今は変わって40名か)でわちゃわちゃ遊ぶのはやっぱり面白いんですが、あれもゲームがこなれてきてステージ毎に攻略法が確立されてくると、勝つための動きが最適化されてきて大人数ゆえに発生するランダム性はどんどん低くなってしまいます(反面、チーム戦は面白い)。なもんで、ガチ勢が増えたことでライトユーザーが離れた、というよりは、いかに規範化されたプレイに忠実になれるかというスタイルに馴染めない人が離れた、というのが実情なのではと思っています。『PUBG: BATTLEGROUNDS』もメタや最適化されたプレイはありますが、完全再現された場面が絶対に発生しない分、余白が残っていて今でも色褪せないゲーム体験が得られます(ユーザー数は減りましたが)。

『Fall Guys』
現在だと野良スクアッドが遊びやすくてオススメ

 話を元に戻すと、要はこのゲームにバタフライエフェクト要素はあるのか?という点で考えると、非常に心許ない。そのせいでBotではなく人間と対戦していると実感の得られる場面がそれほど多くはない。一対一のタイマンで戦う早撃ちガンマンをモチーフにしたステージは「人間と対戦している」ことの実感が顕著に得られるステージで、これはシンプルに面白かった。耳を澄ませてしっかり音を聴き分ける必要があり、リズム要素はゼロのステージである。

お題に出た絵の音(金槌の場合は「カンカン」)が鳴った瞬間にボタンを早押しするステージ

 その他、前述したアイテムの中には他者を妨害するアイテムも含まれていて、画面下から登場した鳩がくしゃみをしてディスプレイへ鼻水を噴射する非常に汚らしい攻撃を喰らう場面などもあった。

突然、登場して🤧ヘーーーックション!!!

 こういった要素で少しでも大人数で遊んでいることの意味付けを図っているようには見えるのだが、根本が「音ゲー」という正確さを競う性質がとても強いジャンルなので、そもそも他プレイヤーからの影響を受けるという要素を盛り込むには相性が悪過ぎる気がする。まぁ、くしゃみ攻撃は面白かったけど。

鼻水でUIごと見えなくなる悪質な妨害攻撃

 他プレイヤーと一緒に遊んでいるという実感が得られるのが重要なので、例えばラウンド中に好成績をあげているプレイヤーの鳩がスポットライトを当てられて他の鳩より目立つようになるとか、反復系の種目ではお手本となる譜面をプレイヤーが決められるだとか、もうちょっと違う要素でよかったのでは。というかバトルロイヤル形式にしなくても、8人くらいで1ラウンドだけ戦って優勝を決めるとかじゃ駄目だったのかな……。前回レビューを書いた『Party Animals』なんかがそれなんだけど。

 というわけで各種プラットホームで発売が始まり、Xbox Game Pass にも入っているそうです。あとは Switch を一人一台持ち寄って音ゲーの同士が集って遊ぶ、とかであればそれは最高に楽しいと思います。ゲームその物は丁寧に作られていて、何より「エ゙〜〜〜〜〜」と鳴く鳩が可愛いから。書き忘れたんだけどジョイスティックをグリグリ回すとそれに合わせて首を回しながら鳴いてくれるんですよね。ちょっとクセになる程度には鳩が可愛いです。ここは一つ、鳩の可愛さに免じて試しに遊んでやって下さいな。

★インディーゲームのレビューを書いていくので「スキ!」とクリエイターフォローしてね!

illustration:あすま(@asu5m843B)

※ちなみに今回、あすまくんの住環境が変わったためアナログで描いてもらいました。ペンと色鉛筆と水彩で描いたそうです。「目指せ 10,000 人フォロワー」らしいのでフォローしたってください!

この記事が参加している募集

今買うべきゲーム

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?