見出し画像

【和訳】Meek Mill ft. Rick Ross & Jay Z - What's Free -(Jay Zのみ抜粋)

Meek Mill新譜に入っている話題曲、What's Free。この曲に入っているJay Zのバースが素晴らしかったので、抜粋して対訳を作成してみました。

このバースでは主に黒人が差別されてきた歴史と、今のヒップホップゲームで黒人のラッパーが白人の経営者や企業によって搾取されていることに対してJayは怒りを込めてラップしています。意味やメッセージがありながらも大量のワードプレイや巧みなライムがちりばめられていることが良くわかるバースだと思います。

ヒップホップの本質的な面白さ、魅力、かっこよさ、メッセージ。全てが詰まったバースだと思うので是非曲を聴きながらじっくり読んでいただきたい。

あくまで主観ですが、日本ではまだまだリリカルの本当の意味が理解されていないなぁ。。。と思うことが多くて。。拙い訳ですが、ちょっとでもヒップホップの詩としての面白さに触れるきっかけになれば幸いです。

[Verse 3: JAY-Z]
In the land of the free, where the blacks enslaved
ここは自由の国アメリカ、黒人が奴隷にされてる国さ *

*Land of the free(自由の国)とはもちろんアメリカのこと。自由であるはずの国が黒人を奴隷にしていたことを皮肉っている。

Three-fifths of a man, I believe's the phrase
黒人は3/5人としてカウントされる 、このフレーズを俺は信じてるぜ *

*五分の三条項について言及しています。奴隷制時代、黒人は5分の3人、つまり一人の人として扱われていなかった。それを皮肉っている。

I'm 50% of D'usse and it's debt free (Yeah)
俺は D'usseの資本の50%を借入なし(=現金)で取得した *

*D'usseはウイスキーメーカー

100% of Ace of Spades, worth half a B (Uh)
そして0.5ビリオンドルでAce of Spadesを丸ごと買ったんだ *

*0.5BUSD=約500億円でAce of Spadesを買ったという意味とB=Beyonceがかかってる。つまり、Ace of Spadesの100%買収はBeyonceの半額という更なるフレックス(=俺は1000億円の女をゲットしてるんだぜ!)Jay Zにしかかけない凄まじいラインです。

Roc Nation, half of that, that's my piece
ロックネイションは株式の50%も持ってる。こいつは俺のものだ

Hunnid percent of Tidal to bust it up with my Gs, uh
そしてTidalも100%取得した。これは俺の仲間たちの利益の為にね

Since most of my niggas won't ever work together
俺の周りのやつらは協力して一緒に何かをしようとはしないから

You run a check up but they never give you leverage

No red hat, don't Michael and Prince me and Ye
赤い帽子はダメ。(だけど)俺とカニエウエストをマイケルとプリンスみたいにしないでくれ *

*JayがTwitterで説明している通りです。トランプ支持の赤い帽子は受け入れられないが、マイケル対プリンスみたいな対立軸を作って俺とKanyeを煽るな、と。

They separate you when you got Michael and Prince's DNA, uh
皆はマイケルとプリンスのDNAを持ってると分断させようとするんだ *

*マイケルの息子もPrinceという名前らしく、同じDNA=自分もKanyeも天才で、だから皆が対立させようとしてる、と暗に言っているかも?

I ain't one of these house niggas you bought
(トランプに向けて)俺はお前が買った家事をする奴隷じゃないぞ 

My house like a resort, my house bigger than yours
俺の家はリゾート見たい感じで、お前の家より大きいしな

My spou- (C'mon, man)
そして俺の嫁は…(おっと、やめとくか)*
*ここまでがトランプに対して。一つ前のラインで家は俺の方がでかいと言っているので恐らく、俺の嫁(=ビヨンセ)はお前の奥さんより美人だぞ、とかそんな感じを言おうとして止めているんだと思います。

My route better, of course
俺の稼ぎ方、進んできた道の方がもちろんいいに決まってる *


*細かいですが、Routeとcourseはほぼ同じ意味で、Off courseと掛けてるかも。つまり俺はレールの上を走ってきてない、ストリートから独自のルートで這い上がった、そしてそのルートのほうがベターだったと言ってるぽい?

We started without food in our mouth
飯も食えないような極貧生活からスタートしたんだ

They gave us pork and pig intestines
俺たちに配給されたのは豚の腸だけさ

Shit you discarded that we ingested, we made the project a wave
お前らが捨てたクソみたいな飯を俺達は食ってきた。俺たちはこのプロジェクトを成功させたんだ *

*Make a waveで大ヒットさせる、流行らせるみたいな意味。つまりずっと人種差別されて貧乏な生活をしてきたが、ラップを流行らせた、と。Geniusによると音声ファイル形式のwav.もかかっていて、アルバム作品のことを英語では「Project」というのでwav.ファイルとProjectで「音楽を」流行らせたというワードプレイもかかっている。さらに、Projectには「貧困層が住む団地」みたいな意味もあって掛かってるかと。

You came back, reinvested and gentrified it
お前らはまたやってきて、また金を投資して、高級化させたんだ*

*白人はずっと黒人を差別してきたのに、お金が儲かりそうとなるとすぐにやってきて投資して利用すると。

Took niggas' sense of pride, now how that's free?
そして黒人の誇りを奪い去った。何が自由(無料)だっていうんだ?

*一連の流れでJayは黒人差別の歴史と現在のヒップホップシーン(白人が黒人を使って儲けるビジネス)どちらについても言及しています。

And them people stole the soul and hit niggas with 360s, huh
そしてああいうやつらは魂を奪う、ラッパーたちに360レコード契約チラつかせてな *

*360レコード契約とは、契約時にアップフロント(=一括先払い)でラッパーに契約金を払う代わりにツアーやマーチャンダイズ、ストリームなどの全ての売上がレーベルにも入る仕組み。一括でお金を受け取れるのはラッパーにとってメリットだが、長期的にみた場合にはラッパー側が不利になる。一括金に釣られて本来得られるべき収益・権利を奪われることに対する警報。

I ain't got a billion streams, got a billion dollars
俺が手に入れたのは再生回数1000億回じゃない、1000億円だぜ? *

*Jay ZはTidalとの絡みでSpotifyなどに曲を上げていた曲を削除したらしいです、それによってストリーム回数は減ったと。それでも金はメチャクチャ稼いでいる、と言っています。

Inflating numbers like we 'posed to be happy about this
金額は俺たちが望んだ通りにどんどんインフレして(桁が増えて)いく

We was praisin' Billboard, but we were young
俺たちはビルボードを褒め称えたけどあの時俺たちは若かった…

Now I look at Billboard like, "Is you dumb?"
俺は今ビルボードチャートをみてこういうんだ、「馬鹿じゃねえのか」ってな *

*ビルボードはCDとダウンロードだけでなく、ストリーム回数(YoutubeやSpotify, Apple Musicなど)に応じてチャート順位をつけるようにルール変更がなされた。それを批判している??

To this day, Grandma 'fraid what I might say
おばあちゃんは俺が危険なことをいうんじゃないかって、今日の今日まで恐れていた

They gon' have to kill me, Grandmama, I'm not they slave
あいつらは俺を殺さなきゃな、おばあちゃん。俺はあいつらの奴隷じゃないんだ *

*Jay Zは社会的な発言をすることを恐れなかった、それをおばあさんは殺されたりしないかと不安に思っていたんだと思います。(自信ないです)

Ha-ha-ha-ha-ha, check out the bizarre
ハハッ、このイカレ野郎を見てみろよ

Rappin' style used by me, the H-O-V
この俺、HOVが使ってたラップスタイルを真似してやがる *

*元曲、BiggieのWhat's Beefのラインをそのまま引用しています。

Look at my hair free, carefree, niggas ain't ne'er free
俺の髪の毛を自由に見ていいぜ。手入れ要らずさ。そして黒人は自由とは程遠いところにいる *

*Carefreeとne'erはシャンプーの製品名とのこと。ここも2つの意味を持たせたワードプレイ。黒人は未だに白人富裕層に搾取されている、と。黒人の髪の毛はパーマがかかっていて昔はそれを恥じらう風潮もあったがJayはそれを誇っているぽいですね。

Enjoy your chains, what's your employer name with the hairpiece?
お前のチェーンをせいぜい楽しみな。お前を雇ってる(白人の)ヅラを被ったじじいはなんて名前だ? *

*チェーンはネックレスという意味と、鎖に縛られているの2つの意味がかかっています。360契約で金を得て、ネックレスを買ってる黒人のラッパーは結局白人の富裕層に搾取されている、と。

I survived the hood, can't no Shaytan rob me
俺はフッドをサヴァイブした、悪魔だって俺からは何も奪えやしない

My accountant's so good, I'm practically livin' tax free
俺が雇って税理士はいい仕事をするから、俺は税金を払わなくてすむのさ

Factory, that's me
製造工場、それは俺自身さ *

*ここまでの話を「Fact=事実」と言っているのと、この後のドラッグディールについて自分がFactoryだと言っている??

Sold drugs, got away scot-free
ドラッグを売りさばいてたが、もうそこからは離れたんだ *

*Scot Freeは罪を逃れるという意味。昔はストリートでドラッグディールしていたけど今はしていないと。

That's a CC, E-copy
メールをCCで送るよ、電子コピーさ
(俺は密売探査組織のCCEに未だに捕まってないぜ、わかるだろ?)

*ここは色んな解釈があるみたいです。CCはメールの「CC:」でE CopyはElectonic Copy(=電子コピー)でこれだけだと良く意味がわからないですが、CCEと続けると「Continuing Criminal Enterprise」で密売人をターゲットにした公的機関みたいです。Copyにはスラングで「わかるかい(Do You Understand?)」の意味がある、と。超絶…

Guilt free, still me
罪悪感なんてない、未だに俺は俺さ

And expect me to not feel a way to this day

You would say y'all killed me
お前らは俺のことを殺すって言ってたかもな

Sucker free, no shuckin' me, I don't jive turkey
馬鹿なやつらは相手にしない、俺を騙そうたってそうはいかないぜ、俺は馬鹿じゃないからな *

*Shuck and jiveはごまかそうとする、という意味がある。立場の弱い黒人が白人に対して言い逃れする、というスラングで今では差別用語らしいです。
そして、Jive Turkeyは馬鹿な奴という意味。つまり俺は馬鹿じゃない、騙されないぜという意味のno shuck and jive,つまり俺は黒人奴隷じゃないぞと言っています。すげええ。。

Say "Happy Thanksgiving," shit sound like a murder to me
”ハッピーサンクスギビング”なんて言うのは俺には殺戮に聴こえるぜ *

*サンクスギビングはイギリスから移住したピルグリムの最初の収穫を記念する行事。一般的には収穫感謝日とされているが一方でネイティブアメリカンがヨーロッパ人に土地を奪われた日でもある。Jayは白人による虐殺の日であると主張しているっぽいです。そしてさらに1ライン前のTurkey(七面鳥)はサンクスギビングの象徴でここにも掛かっている…天才かよ。

Smoke free, all of y'all callin' out toll free

Label rob you for millions yet you wanna put a hole in me
音楽レーベルはお前から大金を奪おうとしているのに、それでもお前は俺を殺したいのか?

Sugar free, seasoned but I'm salt free
人生は甘くないんだ(=シュガーフリー)、俺は大ベテランさ。でも俺は何に対しても辛辣ってわけではないんだ(=ソルトフリー)*

*「味覚」縛りで紡がれたラインです。Seasonedは「年季の入った」という意味と「味付けされた」という意味があります。これまでの人生は決して甘いモノではなかったけど、その分、味が出た(=長いキャリアを積んだ)。
saltyは「辛辣な、辛口な」という意味があります。Jay Zは理由もなく成功した他のラッパーに対して批判的になったりはしないと。

You lay a hand on Hov, my shooter shoot for free
俺に触れてみろ、俺の狙撃手がお前を無償で打ち抜いてやるぜ

I promise World War Three
第三次世界大戦を始めようか

Send a order through a hands free
ハンズフリーでサクッとオーダーするんだ

Kill you in 24 hours or shorter, you can't ignore the hand speed
24時間以内にお前を殺すぞ、このハンドスピードをお前は無視できないはず

*このラインは殺人犯のZimmermanに向けてです。DrakeのTalk Upでも言及していましたね。詳細はググってください。日本語でもヒットするはずです。

On god, it's off the head, this improv but it's no comedy
オーゴッド、こいつはフリースタイルで書いた、つまり即興だがコメディーじゃないぜ!

Sign I fail? Hell nah
俺が失敗する兆候だって?そんなのありえねえだろ! *

*Sign I failとSeinfeldを音で掛けてていまます。Seinfeld(邦題”となりのサインフェルド”)は米国の国民的コメディードラマ(所謂シットコム)。主人公は即興をやるコメディクラブを経営しているという物語。最後の数小節はフリースタイルで書いたと。でもサインフェルドみたいなコメディじゃないぜ、というとても巧みなワードプレイです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?