泥田坊の歌

遠くの火を思い出す
いつぞや 道を照らした光
足元に広がる 黄金色の道を
私は一緒に歩こうと思ったのだ

世間様は皆 その光に似た 小判大判を求めなさり
私は日の暮れたあぜ道で一人 ただ一人
あの火を待っておりました

いつしか二度と火は道を照らさず
そこには泥が広がるばかり
命も育たぬ 底なし沼とあいなりました


共に沈みたくも哀し
共に輝きたくも虚し
酒の席 笑い声を遠くから聞くばかり
心の限り叫ぶには 恨み言しか出てきません

失った火をもう一度
ただ一度見られるだけで
どれだけ心が救われようか
枯れ木のような声を上げ
一人叫ぶは沼の淵

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