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【ワイン質問箱】ワインにとっての自然って?〜葡萄酒醸造について〜

シリーズ第三弾。自然派ワインについて極力わかりやすく伝えられればと思っています。以前の投稿はこちらとなります。

ワインを作る上で、もう一つある工程が「醸造」です。「栽培」は自然に左右される要素が大きいと思います。特に気候です。「醸造」は「発酵」という現象が起こることで「科学」の要素が出てきますが、「醸造」という工程をどれだけ自然にできるかが問題となります。ワインを作る過程を大雑把に並べるとこうなります。

収穫した葡萄の房から実をとって潰す(除梗&破砕)→アルコール発酵→絞って、マロラクティック発酵(酸味を和らげる。白ワインはやらない場合もある)→タンクや樽で熟成→清澄剤などを入れて、ゴミを取り除き濾過→瓶詰め
と、いうのが非常に大まかな醸造の流れです。

例えば、「スパークリングワイン」の中でも「シャンパーニュ」を名乗る上で醸造方を定める法律があります。この場合は「原産地呼称」を定める法律です。松坂牛は戸田では育てられませんよね?法律を定めることで品質とブランドを守っています。
では、「自然派ワイン」=「ヴァン・ナチュール」を名乗る上で、どのような醸造をしなければいけないか?シャンパーニュや松坂牛と違い、「原産地」の問題ではないのです。

実は、最近まで、明確な定義がなかったのです!栽培と同様に「言った者勝ち」状態でした・・・
しかし、それではマズいということで、フランスのINAO(国立原産地名称研究所)が動きます。INAOとは和訳の通り、「カマンベールチーズはこのように作りなさい!」と決める組織です。(カマンベールも地名です)
そんな組織が、「ナチュラルワイン」の定義を2020年3月に決めたようです。おそらく、細かく規定があると思うのですが、抜粋された内容を見つけました!しかし、専門的なので長くはなりますが「私の主観」で解説させていただきます。

①有機認証を受けている畑の葡萄を100%使用している

原材料が全てです!当然なんですが、大きなワインメーカーは、農家から葡萄を買って醸造だけすることが多いんです。シャンパーニュがいい例です。全世界でモエ・エ・シャンドンを作るだけの葡萄を集めるにはどれだけ大変でしょうか?葡萄農家から買うことになりますが、買う相手は選ばなければいけません。

②手収穫であること

「ワイン用の葡萄の収穫」=「ぶどう狩り」と思わないでください!すごく大変で真剣な作業なんです。房を切って手に持ち、全体をチェックします。その中に萎れていたり、熟していなかったり・・・と異常を感じるものを切り落としてカゴに入れて醸造されて、美味しいワインになります。大きな農場は機械で収穫なので劣化した葡萄も混じってしまう恐れ...と、いうか、選果をしない限り混ざっていまいます。

③野生酵母による発酵であること

野生酵母や天然酵母と呼ばれます。自然界のある酵母菌です。これらを選び、精製、培養したものが、培養酵母や乾燥酵母といわれます。野生酵母は、葡萄についた菌です。収穫した葡萄を潰して、発酵が始まるか待つわけです。
始まらない可能性=ワインにならない可能性もあると思います。または、健全でない酵母が瓶の中に残って悪さする可能性もあります。

④添加物が不使用であること

「添加物」が入っていないことは、「人の手が加わっていない」という点では自然なんですが、人の口に入るものを安全にしてくれる意味合いもあります。味わいを変えるようなもの入れなくていいと思いますが、お腹壊すことがないようなことがなればと思います。

⑤ブドウ品質の加工は禁止

こちらも非常に影響がある規制です。「葡萄の品質」に影響を与える加工はいくつかあって、どの程度を「OK」とするかが大きな問題となります。例えば「陰干し」です。品質に影響するか?と言われれば難しいのですが、仮に糖度が上がらなかった葡萄を陰干ししてワイン作るのは葡萄の品質を加工してるのでは?と思います。もちろん、健全な葡萄を陰干しするから美味しいワインができるのですが、その辺の線引きがどうなっているのか?気になるところです。

⑥濾過、クロスフィルター、瞬間殺菌、サーモヴィニフィケーション、逆浸透膜等の物理的な醸造技術の使用を禁止

難しい言葉がいくつか並んでいますが、要するに「科学技術的な要素がある醸造技術はダメ」ということです。難しい言葉を簡単に説明します。
「クロスフィルター」ですが、フィルターは通常、液体の流れに垂直に設置します。クロスフィルターは平行に設置し液体が循環しながら濾過するので、詰まることがないのですが時間がかかります。
「瞬間殺菌」は、パスツリゼーション=火入れです。貯蔵前にすると味への影響が大きいので、出荷の瓶詰め前に実施することがあります。82~83℃で数秒間、加熱するようです。
「サーモヴィニフィケーション」は、今ではあまり使われない技術らしいですが葡萄をタンクに入れて発酵させる前に果汁を加熱します。メリットよりもデメリットが多いかなぁ・・・?という印象です。
「逆浸透膜」は、元々、海水を真水に変えるために作られた技術を応用しています。濾過した液体から特定の欠陥分子を取り除き、その液体からワインを作ります。先に濾過するので赤ワインでは使えない技術かもしれません。

⑦発酵開始前及び発酵中の亜硫酸添加を禁止。

「ボトリング前の亜硫酸の添加はワインの種類に関わらず30 mg/l まで可能 (添加を行っている場合はエチケット上への記載義務および使用可能なロゴの変更を伴う)」とあります。
発酵開始前に使用する場合は、雑菌の増殖や不必要な酵母の動きを抑えることが目的です。発酵中に入れる場合は、アルコール発酵を止める場合です。可能なのは、瓶詰め前の添加です。これは瓶詰め後に残っていた雑菌などの繁殖を防いで品質を保つためです。たまに「なんかこのワイン、ブショネじゃないけど臭い」みたいなものは瓶詰め後に雑菌が悪さをしている可能性があります。

【おまけ】ナチュールだと頭が痛くならない?

「酸化防止剤が入っているワインを飲むと頭が痛くなる」という方がいらっしゃいます。そう思われている方々に質問です。「ドライフルーツや漬物を食べて頭痛がしますか?」ワインに入っている酸化防止剤の量はドライフルーツと比べたらずっと少ないです。結果から言うと、「酸化防止剤で頭痛は起きません。頭痛がするぐらい入っていたら、販売できません。法律に引っ掛かります」
では、何が原因か?これは乳酸に含まれる物質が、頭の毛細血管を収縮させて頭痛が起こる場合があります。乳酸はなぜできるか?これは「マロラクティック発酵(乳酸発酵)」を行うからです。どう言う作業かというと、リンゴ酸=フレッシュな酸を乳酸=まろやかな酸に変える作業があり、木の樽で熟成させてまろやかで深みのある味わいにしたいときに行います。
ワインを飲むと頭が痛くなる方は、乳酸発酵をしていないワイン→フレッシュですっきりとした白ワインを試すと頭が痛くないかもしれません!ワインではなくてもお酒を飲み過ぎたら二日酔いで頭は痛くなると思いますが・・・


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