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『彼女の髪が肩まで伸びたなら(三)』
「昨日は悪かったな」
携帯電話への友人からのメッセージの着信音で目覚めると、すでに部屋のカーテンからは朝の日差しが入り込んでいた。
「いや、全然。逆に楽しく過ごせたよ」
まだ少し寝ぼけた頭で返信を打ち、ベッドから起き上がった。
「なんだ？なんかうまいことやりやがったな」
「ご想像にお任せします」
「ちぇ～っ、人が仕事で忙しいのによぉ」
メッセージを見ながら、ふっ、ふっと笑い、目覚めのコーヒー
『彼女の髪が肩まで伸びたなら(二)』
少し逡巡したのち彼女がカウンター越しにサングリアを注文をした頃、終電を諦めたスーツ姿の酔客たちに押される形で僕と彼女はカウンターの端に並んで座る恰好になった。
「あ、ありがとうございます、初対面なのに」
カウンターから受け取ったグラスを僕のグラスにカチリと合わせて、彼女は軽く会釈をした。
「ああ、いいんです。こんな時間に友人に呼び出された挙句、約束をすっぽかされちゃって。それより
『彼女の髪が肩まで伸びたなら(一)』
彼女の髪が肩まで伸びた時、きっと僕の前からいなくなるのだろう。
昼下がりの陽の光に照らされた彼女の横顔を見つめながらそんな風にぼんやりと考える僕を不思議に思ったのか、
「どうしたの？」
と彼女は僕の左頬に軽くキスをした。
いつも待ち合わせの場所にしているカフェのソファ席に二人並んで座るのも、気付けば両手足の指を使っても足りないほどになっていた。
「髪、伸びたなぁって思って」
僕の