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両親を撮った日

私は2016年に一冊の書籍を出版しました。タイトルは「いい写真はどうすれば撮れるのか」。

私が初めて写真を撮った中学生の時からこれまでの間に頭の中で考えてきた事柄を整理して書いたものです。構図の作り方やカメラの操作手法などのテクニックと呼ばれるものではなく、カメラを構える前の準備を書いたものになります。

この本を形にしてくれた編集者は私の中学時代の同級生でした。卒業してからほとんど会うことがなかった彼と20年ぶりに同じ現場で遭遇。その日の夜に飲みに行き、私が色々と話したことが書籍を作るきっかけとなりました。

作業を進めていく中でどの写真を表紙にするのかという話になり、彼の提案は「自分にとって一番いい写真」を選ぶというのもでした。その時に浮かんだ写真は1枚だけ。それは私が社会人になりたての頃に撮影した両親を写したモノクロ写真でした。撮影場所は子供の頃から変わらない風景が残っている実家の近所を選び、時間をかけて撮りたかったのでデジタルカメラではなく4×5という大型のフィルムカメラを持ち出して1枚を1分くらいかけて撮った記憶があります。とても不便ですがその過程が両親と向き合うのに必要だったのだと思います。

今撮影場所は新築が立ち並ぶ住宅地となり、両親が並ぶことはありません。後から聞いた話ですが私が大学卒業を控えていた時に父親は息子が自分の知らない写真という世界に飛び込むことをとても心配していたようで、知り合いを通じて新聞社のカメラマンに色々質問していたそうです。

あれから15年の時間が経ちました。写真を見るとうっすらと当時の時間を思い出します。

なぜあの時に写真を撮ったのかと言われれば私がカメラマンになったことを両親に報告したかったのかもしれません。

中西祐介

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