2016年 3冊目『エクサスケールの衝撃』
世界コンピュータ・ランキング消費電力性能部門「Green500」で独自技術により世界第2位を獲得した気鋭の研究開発者である齊藤元章さんが描き出した未来の本です。
600Pとかなり読み応えあります。
かなり衝撃を受けました。
理解するのが難しい本です。
少し簡単にまとめてみます。
我々はとても変化の大きな時代に住んでいます。
たった40年前、1970年代の日本では、三種の神器(テレビ、冷蔵庫、洗濯機)がようやく普及した段階でした。
しかし、テレビは白黒で、電話は固定電話で、トイレの大半は汲み取り式でした。
当然、エアコンもなく、舗装道路も稀でした。まだスーパーマーケットは珍しく、コンビニが最初に出来たのは1974年でした。
これが当時の先進国であった日本の風景でした。
ところが、これからの40年間の変化は、過去の数百万倍の規模になるのです。
数百万倍の進化が起きるのは、そもそも進化は、直線的ではなく、指数関数的に起こるからです。
我々は、とても数奇な時代を生きているわけです。
そして、この進化を実現するのがコンピュータの進化です。
それはエクサスケール(10の18乗)のコンピュータパワーの実現により起きます。
今では想像もできない演算能力があるスーパーコンピュータにより、今では考えられない研究が進むというのが著者の意見です。
これにより医療、環境、エネルギー、産業、基礎科学は長足の進歩を遂げます。
エネルギーについては、新エネルギーの研究が進み、発電効率が高まり、例えば原発を止めることも可能になります。
医療については、個別医療が進み、肉体と技術の融合が進み、不老の可能性が高まります。
現在1歳まで成長し、その後成長を止めて20年間生き続けたブルック・グリーンバーグさんという方がいます。
彼女を研究することで更に不老不死の可能性が高まります
産業や基礎科学については、様々な生産性が高まり、ほとんんどのものが安価になります。
これらの進化と人間性の向上により、衣食住のコストが劇的に下がり、フリーにできる可能性が高まるのです。
結果、お金から解放され、すべての個人が、あらゆる可能性を追求できる新しい社会が作られる可能性が生まれます。
現在の我々では考えられない価値観が生まれる可能性があるのです。
これら、一見荒唐無稽な話を事実や可能性がある事例などを加えて、詳細に説明してくれます
そして、この世界を実現するには、単なる技術進化だけではなく、高い精神性が必要であり重要です。
それを実現できるのは日本人が最適解の一つだという意見なのです。
つまりエクサスケールコンピュータパワーの実現は日本でやりたいと言うのが著者の意見です。
衝撃的な内容です。
上記の話に興味を持たれて、詳細を知りたい方にお勧めです。
以下は備忘録。
著者が唱える、前特異点(プレ シンギュラリティ・ポイント)と言うタイミングがあります。これは、レイ・カーツワイル氏が提唱する6つの進化段階の特異点(シンギュラリティ・ポイント)の直前の特異点の事です
6つの進化段階について説明します。
「情報の秩序を増すパターンをつくりだすプロセス、それが進化である」
・第一の進化段階
「物理と化学」(原子レベルの構造内の情報)
DNAが進化
・第二の進化段階
「生命」(DNA内の情報)
脳が進化
・第三の進化段階
「脳」(神経パターン内の情報)
テクノロジーが進化
・第四の進化段階
「テクノロジー」(HWとSWのデザイン内の情報)
テクノロジーが生物学的手法を取得する
・第五の進化段階
「テクノロジーと人類の知性は融合する」(人間がつくりだした指数関数的に拡張し続けるテクノロジー群に、人間の知性を含む生物学的手法が統合される)
大幅に拡張された人間の知性(多くが非生物的)が、宇宙全体に拡散される。
・第六の進化段階
「宇宙は覚醒する」(宇宙の物質とエネルギーのパターンが、知的プロセスと知識により飽和する。
我々は現在第四段階の真っ只中にいるわけです。ただ、それ以降の段階は何を書いているのか理解するのも難しいです。
そして、この第五段階になるのが2045年頃だとレイ・カーツワイル氏は言っています。このタイミングが特異点(シンギュラリティ・ポイント)です。
数字に関する理解の尺度を変えてみる。
前半の4つ
キロ:10の3乗 = 2の10乗
メガ:10の6乗 = 2の20乗
ギガ:10の9乗 = 2の30乗
テラ;10の12乗 = 2の40乗 兆
後半の4つ PEZY
ペタ:10の15乗 = 2の50乗
エクサ:10の18乗 = 2の60乗
ゼッタ:10の21乗 = 2の70乗
ヨッタ:10の24乗 = 2の80乗 紓(じょ)
▼前回のブックレビューです。
▼新著『業績を最大化させる 現場が動くマネジメント』です。
よかったら、手に取ってみてください。
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