フードロス

1人あたり年間50kgの食材を廃棄する国、日本。

2019年5月24日に「食品ロスの削減の推進に関する法律」(略称:食品ロス削減推進法)が成立しました(公布は31日)。

が、「食品ロスって日本だとどれくらいの規模のものやねん〜」、「食品ロス削減推進法って何を定めとるねん〜」と意外に知らないことだらけだったと気付き、今回まとめてみることにしました。

後半には食品ロス問題の解決に寄与するであろう企業一覧(もちろん一部)もまとめています。業界一体となって削減に取り組んでいきたいですね。

食べられるのに捨てられてしまう食品=食品ロス

農林水産省によると「食品ロス」について下記の通り説明がなされています。

「食品ロス」とは、食べられるのに捨てられてしまう食品をいいます。
農林水産省HPより)

「食べられるのに捨てられてしまう食品はなくすべき!」

もちろんそう思いますが、具体的に農林水産省「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢」では食品ロスが引き起こす問題として下記の通り指摘しています。

大きく2点ですね。
(1)環境問題:食料生産により多量なエネルギーを消費してしまっている上、その食料を食べずに廃棄されるとなるとゴミ処理経費が増えてしまうわ〜。
(2)食料問題:世界の9人に1人が栄養不足にも関わらず、食料を廃棄するなんて!

環境問題と食料問題を考えたら食品ロスは無くさなあかん!ということですね。

年間1人当たりの食品ロスは年間1人当たりの米の消費量に匹敵

では、実際に食品ロスって国内でどれくらいあるものなんでしょう。同報告によると下記の通り。

平成28年度推計の食品廃棄物等の発生量の資料によると、食用仕向量とされている8,088万トンのうち、食品ロス(売れ残り、規格外品、返品、食べ残し、直接廃棄=本来食べられるのに捨てられている食品)の量は643万トン。割合にして、約8%です

そしてその食品ロスを発生場所ごとにみると、最も廃棄量が多いのが一般家庭。その量は年間291万トンにものぼります。そして、廃棄割合が最も多いのは外食産業。全体の67%が廃棄されているってちょっと異常な気がする。

…と、なかなかの量が廃棄されていることが分かりました。この数字をもうちょっと身近な数字に落としてみましょう。

上記も、同資料から拝借しました。日本全体の食品ロス643万トン。これを国民1人あたりの食品ロス量に換算するとなんと年間約51kg1日あたりに換算すると約139g。前者は、年間1人当たりの米の消費量約54kgに匹敵し、後者は茶碗1杯のご飯の量に相当するそう。多い多い。。。

ちなみにこの食品ロスの量、ここ数年ほぼ横ばいです。(参考:食品ロス削減関係参考資料/消費者庁

国内で広まる食品ロスを減らす動き

ということで、食品ロスを減らす機運が国内でも高まってきました。その取り組みの一つとして平成27年7月に「食品循環資源の再生利用等の促進に関する基本方針」が打ち出されました。

主な方針の中身は下記の通り。

【発生抑制】
・ 食品関連事業者は、食品廃棄物等の発生原単位が基準発生原単位以下になるよう努力しましょう。
・ 国は、食品ロスの発生状況をより実態に即して把握し、取組の効果を数値化しましょう。
・ 様々な関係者が連携して、フードチェーン全体で食品ロス削減国民運動を展開しましょう。

で、具体的な食品ロス削減国民運動として、下記のような取り組みが実施されてきました。

具体的な事例はこちらから確認できます。様々な国や企業の取り組みが載っていて面白い。

・ 賞味期限の延長と年月表示化
・食品廃棄物等の継続的な計量
・ 食べ切り運動の推進
・食中毒等の食品事故が発生するリスク等に関する合意を前提とした食べ残した料理を持ち帰る
ための容器(ドギーバッグ)の導入
・ 納品期限の緩和などフードチェーン全体での商慣習の見直し
・フードバンク活動の積極的な活用
・ 食品ロスの削減に向けた消費者とのコミュニケーション、普及啓発等の推進 等

SDGs(持続可能な開発目標)にも食品廃棄の削減について明記

日本が基本方針を掲げたのと時を同じくして、国連でも「持続可能な開発のための2030アジェンダ(2015年9月 国連総会決議)」として、食品廃棄の削減について明記されました。

具体的には、SDGs(持続可能な開発目標)の目標12(持続可能な生産消費形態を確保する)にて下記の通り定められています。

12.3 2030 年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる。

12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。

ちなみにSDGsで定められている目標は全部で17つあります。

で、成立したのが「食品ロス削減の推進に関する法律」

そんな国内外の状況を鑑み、より具体的に食品ロス削減を進めていこうぜーと定めたのが、今回の「食品ロス削減の推進に関する法律」です。

全文はこちらより確認できますが、要点をまとめてみましょう。
まず、法案設立に際しての序文。こんな感じ。

・食品ロスについては国際的にも重要な課題となっている。
・食品ロスは食料の多くを輸入に依存している我が国として、真摯に取り組むべき課題と認識している。
・食品ロスを削減していくためには、国民各層がそれぞれの立場において主体的にこの課題に取り組み、社会全体として対応していくようにすることが重要

続いて、法律の具体的な内容について抜粋。すっごく簡素にまとめると多分こんな感じのこと言ってます。

・国、地方公共団体、事業者、消費者はそれぞれの役割を認識し、食品ロス削減に一緒になって連携しながら取り組みましょう
・食品ロス削減月間を定めましょう。月は10月とし、特に同月30日を食品ロス削減の日としましょう。
・都道府県、市区町村は「都道府県食品ロス削減推進計画」を定め頑張りましょう。
・国及び地方公共団体は、食品の生産、製造、販売等の各段階における食品ロスの削減についての取組に対する支援に関し必要な施策を講じましょう。
・内閣府に、特別の機関として、食品ロス削減推進会議というものを置くことにしました。会長は内閣特命担当大臣が就任し、農林水産大事、環境大臣などが委員として加わります。

国内で広まる民間企業の食品ロス削減に関する取り組み

ということで、今後今以上に、食品ロス削減に向けた動きが高まっていくものと予想されます。そこで最後に、食品ロス問題の解消に繋がる取り組みを行う企業をいくつか紹介させていただきます。

ちなみに政府広報オンラインでも「食品ロスを減らそう」というタイトルで、食品ロスをなくす取り組みの紹介や削減の工夫がまとめてありますー。

(1)TABETE

食材廃棄間近の商品を飲食店がプラットフォームに掲載。それを見た一般消費者が手を挙げ、買う(食べる)というシンプルなシステムです。

TABETE は廃棄の危機にある食事を手軽にレスキューできるWebプラットフォームです。 まだおいしく食べられるけれど、閉店時間や賞味期限などの理由からお店が捨てざるを得ない状況から、TABETEユーザーが食事を救い出すことができます。そんな TABETE は、「ユーザーよし」「お店よし」「環境よし」と、みんながハッピーになれる「三方よし」の社会派ウェブサービスです。(TABETE HPより)

(2)Reduce GO

こちらはサブスクリプション(定額)型のサービス。東京都を中心としたエリアに対応しており、月額料金1,980円で月2回まで廃棄直前の商品が手に入るサービスのよう。サイトには下記記載もありました。

余剰食品削減数9,187 食
寄付予定額57,507 円
加盟店数161 店(2019年6月23日閲覧現在)

NHK「クローズアップ現代」でも取り上げられていたみたいですね。

(3)Otameshi

Otameshiは食品・日用品の商品を中心に、品質には全く問題ないけれども、パッケージが変更され販売できなくなった商品や賞味期限間近なため一般には販売できない商品を特別価格で扱う販売プラットフォーム。コンセプトに共感したメーカーがOtameshiに商品を提供しているそう。

サイトを覗いてみましたが加工品の他、シャンプーやお酒も販売されているようです。

(4)tabeloop

下記公式サイトから拝借しましたが、売り手が直接買い手に販売できるプラットフォーム。サイトを拝見したところ、加工品だけでなく、果物、そしてお魚までもが販売されているようです。

<食品を売りたい人と買いたい人をつなぐ『社会課題解決型』の新しいサービスです>
包装が汚れている食品、賞味期限の問題で食品スーパーなどの店頭にならばない食品、味は問題ないが形が不揃い、傷がついているなどの理由で市場に流通されない食品を販売するためのフードシェアリングプラットフォームです。これまで食べることができるが、廃棄されてきた食品をtabeloop上で販売することで、買い手と売り手を結びつけ、社会課題である食品ロスの削減に努めてまいります。(公式サイトより)

(5)ポケットマルシェ

ポケットマルシェ(ポケマル)は一次生産者さんから直接こだわりの生産物購入できるプラットフォーム。手前味噌ながら、ポケマルもフードロス削減に貢献できるサービスであると考えています。

上記でも紹介しましたが、食品ロスの中に「規格外品」も含まれます。一言に「規格外品」といえども色々な考え方があると思いますが、規格外品は一般の市場では流通できない生鮮品たちを指します。これらはこれまでは廃棄されたり自家消費に回されたりしてきました。

一方で、生産者が直接消費者に販売できるプラットフォームであれば、傷がついていようが大きさが小さかろうが、形が少々いびつであろうが、価値を認めてくれる消費者がいれば取引は成立します。

実際にポケマルでは「訳あってお買い得」というコーナーがあり、様々な「訳あり品」が販売されています。

以上、つらつらつらとまとめてみました。ご覧いただきありがとうございました〜。


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