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ぱりん

人によっては、ポキン。でも私には、パリンだった。

割れたあとは、意外とサラサラしていた。

とある普通の日にそれは割れて、大慌てで修復した。今まで一度たりともこぼしたことはなかった。そこには毎日大量の水が流れ込んで、絶対に溢れさせないように、防波堤のように高く高く、自分で淵を高くしてきた。

割るつもりはなかった。ずっと大切にしてきた。一度壊れてしまったら、直し方を知らない私を知っていたのかもしれない。

いつの間にか私は八方塞がりで、もう上に昇るしかない。だって前も後ろも、右も左も、灰色の壁がそびえたって、どちらにも行けないから。

努力することができなければ、私はもう自分を認めることができない。走るスピードを緩めれば、私の代わりに誰かが倒れる。努力することは元来とても好きである。だけど努力することを許さない人たちがいる。進むことも、止まることも、許されない。私にはもともと給水所なんて必要ない。休憩なんかしなくても、ずっと頑張り続けられる。だけど、給水所で立ち止まらない私を怪訝そうに見つめるのは、私にとって誰よりも大切な二人。二人は「お願いだからやめてほしい」という。時には抱きしめて、時には感情をむき出しにして、時にはただただ無視をしている。立ち止まってしまったら、もっとうまくいかなくなる。数十年と連れ添った自尊心もろとも、崩れてしまう。

まだまだ長い道のりをぼんやり見つめる。

果てしないなぁ。希望のような、絶望のような。

本当は走り抜きたい。できるはずなのに。

言い訳なのだろうか、これは。体力も、心も、家族との時間も、すべて投げ打って、それでも言い訳なのだろうか。何度水をかけられても、溢れかけても、薪をくべて、燃やし続けてきたけど、もうそれも追いつかないくらい。

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