見出し画像

十二国記 感想

十二国記、読み終わりました。

0巻の魔性の子を含む、1巻からの十二国記の世界は、ファンタジーや異世界という言葉で括るには、あまりにリアリティで、あまりに残酷で……ハッピーエンドを期待して読むのは向いていないかもしれません。

それでもなお、長い年月をかけて、多くの方に愛される十二国記の魅力は何なのか、初めて読み終えた私の感想を書き残しておきます。

十二国記の主人公は誰?


まず、主人公は誰?という部分については、この人!と呼べる存在は、巻によって異なります。

ある時は、赤い髪の女子高生。
ある時は、黒髪の少年。
ある時は、白い髪の雄々しい戦士。
ある時は……。

そして、十二国記を読むと周囲に話すと、ほぼ確実に言われる
「ネズミが出るまで読み進めて」
という、謎のネズミは、1巻の上下巻の下巻になって初めて登場します。

挙げた人物は物語の中心人物とはいえ、巻によって取り上げられる『国』は異なりますし、どの立場の誰の視点なのかも、巻または章によって変わっていきます。そう思うと、主人公は登場人物の全てという考え方もあるかも。

個性豊かな登場人物に、最初は感情移入できないかもしれないし、しすぎると辛すぎるかもしれないし、優しく愛に満ちた物語を好む方には拒絶されるかもしれない、十二国記。
初めてシリーズ全作を読み通した感想は……。

「また、あのシーンを読みたい!」

十二国記は、上下巻と、最新刊の1~4巻を除けば、どこから読み始めても楽しめます。
ファンによっては、0巻から読むべし!まずは1巻から!いえいえ、この巻から……と、そのお勧めも異なるという、不思議な作品なんですよね。
私は、いろいろな方のお声や、まとめ記事などを読んで、0巻から読み始めました。

小野不由美「十二国記」新潮社公式サイト (shinchosha.co.jp)
こちらは、出版社の新潮社内、十二国記の公式サイト。

その中から、シリーズ一覧をご紹介しますと

ずらりと並んだ十二国記。
ガイドブックと画集を除けば、10巻分ですが、上下巻などがあるので、実際には15巻が発行されています(2023.7月現在)。
そして、0巻始まりなので、最新作はシリーズ9番目という扱いになります。

このリンク先の表紙をご覧いただくと、同じシリーズの作品とは思えないくらい、別の人物が描かれていて、それぞれの物語によって異なる内容ということが分かりやすいかな?と思います。

そして、0巻のみ『現代日本』を舞台に完結する物語で、それ以外は十二国記の世界と現在日本が少々……。この2つの世界で起こるあれこれに、この巻では彼女が、この巻では彼が、そしてあの人を助けるために彼らが……と、とにかく世界設定と伏線が山のようにあって、それが『どこから読んでも楽しめる』という意味になるんです。

それは、一度読み終えた読者にとっても同じことで、最後まで読み終えた私が今読み返したいのは、1巻の下巻。
主人公とネズミの出会いから、その後の日々のことです。あの時に助けてくれた人って、あの人だった!と、再読したからこその驚きを感じるだろうなと、読む前から楽しみです。

ネズミって結局なに?

それを語るには、十二国記の世界設定を知る必要があります。
十二国記公式サイトから『十二国記の世界』を見ますと

王、麒麟、といった言葉が見られます。
麒麟は人であり、神獣である存在。
それが見出した人物が、王。

そして、王になる人物と、その周辺の要職などに就く人々は、仙籍といって特別な肉体を持ち、王の在位期間を支えます。それが数年でも、数十年でも、数百年でも……。

市井には、仙籍をもたない、限りある命の民、そして、半獣として生きる存在がいます。
この半獣のネズミ。名前を楽俊(らくしゅん)といいます。
リンク先の世界設定でも、イラストと名前が出るくらい重要な存在で、人気投票では上位になる彼。
半獣というのは、彼の場合はネズミである姿と、人間である姿を変えられるということであって、ネズミ耳と尻尾がある人間の姿ではない、ということだけは書き残しておきます(それはそれで見てみたいw)。

推しキャラは?

そう聞かれると、迷ってしまいます。
楽俊も好きだし、むしろ彼がいなければ陽子は生き延びていなかったし、そうすると、あの人も助けられなかったし、あの人が動きだすきっかけにならなかったかもしれないし……。超・重要人物であることは間違いないんですよ。王でも麒麟でもない、一般人(?)なんですけどね。

王と麒麟の関係も好きだし、他国の王や麒麟たちがわいわいするのも好きだし、彼らに忠誠を誓い仕える人達も好き。
名前はあるもののあまり活躍しない物語の隠し味のような存在も、名もなき少女も、物語に描かれた全ての命が、意味がある。
それが十二国記の世界であり、私の好きな世界。

お勧めするなら、どんな人に?

えっと、まずはホラーや、ある程度の暴力シーンに耐性がある人。
人間も、獣も、命の奪い合いのシーンが生々しく描写され、流血は当たり前、肉体損傷、尊厳を踏みにじられるような殺され方などもあります。

それを大前提としていえば、児童文庫ではないことから、小学生には向いていないでしょう。耐性があり、物語好きさんなら、頑張ってというしかできませんが、大人でも辛いシーンがありますので、無理しないで。

実は私は、リアルタイムで読んでいなくて、大人になって、今年のお正月休みから読み始めたんですが、正月早々何を読んでしまったんだと、軽く後悔しました。0巻、そして1巻の上下を、松の内に読んだので、お正月気分はどこかに消え失せましたよ……。

そうですね、他の長編ファンタジーを読みなれた人でも、登場人物の多さや、世界設定の細やかさ、登場人物の細やかな成長を描いている物語として考えると、本好きの下剋上をお好きな方にお勧めできるかなと思います。

こちらは、原作が小説家になろう、そして書籍、コミカライズ、アニメ化され、総ルビ入りでジュニア文庫化もされていますので、ホラーや暴力シーンは、十二国記の世界よりは控えめですが、主人公を取り巻く環境でのあれこれは、理不尽だったり、立場上の考え方の違いなど、壮大な世界観での成長物語としては、十二国記に通じるものがあるかと思います。

本好きの下剋上 作者の香月美夜先生も十二国記の読者のようで、香月先生のこちらのツイートを引用させていただきます。


2019年のツイートなので、最新刊の感想ツイートでしょうか。
厳しくも緻密な世界という表現は、さすがです。

十二国記に話を戻しますと、冒頭にも書いたようにハッピーエンドを期待して読むファンタジーではありません。
あるべき場所にあるべき形に収まったとはいえ、多くの犠牲を払っていますし、そこから始まる日々も大変であろうという状況で、物語は終わりを迎えます。ただ、バッドエンドでもないですし、それを判断するのは誰なんだ?というと、読者の感情だけ。
ネズミがいて良かった、陽子が生きてて良かった、それだけを思うならハッピーエンドでしょう。

お正月早々読みたい本かどうか、というと、それは……ですが、読む手が止まらないという意味では、たっぷり読書時間が取れる間に一気読みするというのも、最新刊までが手に入る今だからこその贅沢かもしれません。

感想まとめ

超人気作品で、新刊やイベントの度に話題にもなるファンタジー作品ですが、万人受けする内容ではありません。特にホラーや暴力に耐性がない人は無理しないで。
好きになると何度も読み返したくなるくらい中毒性の高い作品で、ファンの熱意も高く、作家の先生方の中にもファン多数。ネットでは考察も盛んで、それを見るのも楽しみの一つ。

電車やバスなどの移動時間に読むと、つい乗り過ごしてしまうくらい没頭しますし(経験者)、お正月などおめでたい空気の中で読むと日常に戻れなくなる(経験者)ので注意が必要で、1冊読み終えても次を早く読みたくなるし、その前に読んだところにあった伏線を確認したくなるので、沼は深め。

ということで、ある程度の事前情報を得て、覚悟を決めた人に読んでほしい作品です。ネタバレを見てしまった人でも、最後まで、それを信じられるかどうかハラハラドキドキしてしまうので、ご自身の耐性の強さに合わせてお楽しみください。

おまけ

十二国記公式サイトより、30周年記念
あなたが好きなキャラクター投票の結果発表

どんなキャラクターがいるか気になる人は、こちらを参考にするのもありかも。未読の人には、ややネタバレ含むのでご注意ください。









この記事が参加している募集

#読書感想文

187,194件

サポートは、今後の活動の支えや、作業のお供に充てさせて頂きます。