雨
物語と音楽が好きだ。
物語と音楽だけはわたしを傷つけることなく、ひとりぼっちのその先へと逃がしてくれる。
空を見上げるのが好きだ。
わたしがどんな愚かしい生き方をしていても関係ない。誰のためでも、誰に愛されるためでもなく、ただそこにある美しい空は、心に満ちた悲鳴を少しずつ涙で滲ませてくれる。
誰かが、正しい立場から、正しい立場にいるという自覚を持って、その切っ先の鋭さなんて考えもせずに投げてくる言葉。
「このままでいたって未来は無い」
「やらない理由を探してるだけ」
「全てが無駄」
どれもこれも、とっくにわたしがわたしに突きつけた言葉だ。ぐちゃぐちゃに刺し潰した凶器だ。
わたしが泣いて放り出したそれを、改めて強く握って深くねじ込むことに一体何の意味があるのか、教えてほしい。
真綿で包んでくれと言っているのではない。
もう傷つく場所など残っていないから、どこもかしこもぐずぐずに膿んで痛んでやまないから、誰も気安く触らないでくれと言っているのだ。
いらない。何もいらない。何も見せられない。
明日のわたしの首を絞めると分かっていても、わたしは今夜もまた、わたしを知る人がいない場所へと逃げる。
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