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TVCMの効果最大化のための基本的ノウハウ

約50回以上、30万GRP程度のボリュームのTVCMのディレクション、クリエイション、プランニングを企業側で行ってきた(他社コンサル含めるとそれ以上)経験と、成功体験(一部失敗体験)を活かし、今回は全10項目においてTVCM出稿に関するノウハウを提供いたします。

<前段>

TV離れ?が叫ばれる中、TVCM出稿(Tver)はやや低調に推移していたり、
出稿ボリュームが実は伸びている(業界にもよる)と色々なデータがあります。

TVの時代は終わったと一部ネット系代理店の方は言うがそんなとこはありません。

特有の視聴態度、日本国の特性などからも、特に企業の決裁者層や、受動的情報取得傾向者に対して認知×リーチが獲得できる有効的手法となります。

東京以外で年収が平均より10〜20%程度低い層はまだTV視聴は根強いし、CMは効く。リーチ効率だけ見ると他メディアと比較して安いのもの事実です(関東スポットCPM:300〜500円)

仮に2,000万円投下した際、YouTubeに比べ2倍以上のリーチが可能です。

元電通の佐藤氏(ファンベース著)もマスを積極肯定しています。

ユーザーや消費者によっては、大事なのは媒体(メディア)そのものよりも、それが自身のライフスタイルの中で必然か否かという部分で、TVだから云々というより、ターゲットとする人が、TVを見るのであれば、そのタッチポイントでコミュニケーションを図れば良いということになります。

よって、TVCMは実施した方が良いのかと言われれば、結論はケースバイケースで正解はありません。

そして、TVCMは魔法でも何でも無く、あくまでコミュニケーションのイチ手段のため、資金があればCM出稿できて、売上や利益も伸びるのに!という考えの場合は、全くその前段である戦略が無きに等しく、と言わざるを得ません。短期・中期・長期で事業成長に貢献できるのか、ROIとして見合うのかを試算した方が良いでしょう。

やる理由があればやるべきだし、やる理由が無ければ予算を垂れ流すだけです。またTVCMは水モノという方もいますが、しっかり設計すれば勝てます(そこが大変なのですが)

原則、一定期間の回収を前提に以下のようなケースであれば、
出稿検討に至ります。

・トップファネル育成のために認知×リーチに初期投資する
・ターゲットが未だにTV視聴者
・プッシュ型要素もあるコミュニケーションが有効であると判断した
・デジタルで顕在層のみのリーチを獲得してしまい顧客が増えない

なおサービス、商材の特性やクリエイティブも含めた出稿方法次第では、顕在層の獲得を主とするWebのダイレクトレスポンス系の広告より低いCPA、CPI、CPOの成果が出せて、投下予算を短期回収することもあります
(TVの方がCV単価が高いというのは一概に言えません)

中長期的なROIを担保するにはターゲット認知が必要であり、一度上がった顧客獲得コストを下げるには初期投資以上のコストが必要になってしまいます。

前提:TVCMが有効な場合×5パターン

1.特定のエリアにおいて認知、興味関心まで到達させたい
(特に獲得数重視であればWebより有効的である場合もあり、少額から出稿が可能)

2.新しい概念、カテゴリで顕在層もいないため、まずは認知を図りたい
(プッシュ型は否定もあるが強制的な認知には向いている)

3.生活必需品でターゲットが広く、大きくパーセプションチェンジを
 図りたい
(大手消費財、キャリア、人材、旅行、不動産などが特に向いている)

4.予算が億単位であり、数年規模でマーケティング活動を
 行っていく計画がある
(Webマーケの限界があり、最終的な母数と成長率を最大化させる)

5.採用、社員ロイヤリティなど副次的な影響を得たい
(ROI、ROASを計測するのは難しいですが、そこは経営者の考え方です)

なおTVCMを実施したからといって、勝てる(成功)わけではないが、勝って(成功)いる企業は上手くCMを活用しています。ここでは勝てるCMのノウハウの基本だけをまとめております。

どうせやるなら勝つための設計に拘る、そうすることで、数千万、数億円の予算が売上、利益となり回収されていきます。1億の1%を改善できるだけで、100万円分の予算が有効に働きます。

負ける(失敗する)ケースとして、多いのが既に予算が多く担保されている企業や、調達後のベンチャーがとりあえず安直な設計のCMで、予算を溶かしてしまう(=回収ができない)ケースです。本当に勿体ないなと思いますが、いかんせん代理店、制作プロダクションの言うことを全て鵜呑みにしてしまうことが理由として大きいと思います(最悪なのはユーザー便宜視点ではなく、自分が作りたい、自分が過去の経験だけからしか引っ張ってこない発想の提案をされてしまうことです)

逆に良い担当に恵まれた場合は、それだけで成功確率が高くなります。代理店、制作サイドは最悪TVCMが失敗しても困ることはないので、つい潜在的に自分ごと化しきれず成果を追求する手段をやりきらないパターンもあるため、上手くパートナーとしての関係を築きましょう。そのためには広告主側からの精度とレベルの高いブリーフィング、オリエン、ディレクションが非常に重要です。

※ちなみに、自身の過去最高の成果はエンタメ系アプリで「CPI:約100円」というものです。その時の同サービスにおいては、運用していたデジタル広告のCPIの最小CPAが約200〜400円だったため「10倍以上の"コスト効率"」と「約500万DL数という"規模"の両面がマスで担保できた事例です。これはCM前日のPRの仕掛けも計算通りにハマったという追い風もありました)

①広告主も課題と情報リテラシーが低い理由

まず情報収集でググっても意味が無い理由は3点あります。

◎詳細な情報が表に出ない理由

・実際の実務を深く担当しないと分からないことが多く
 表面上の知見が殆ど使えないため

・営利目的で、作られた正論が存在しているため
 例:電博は高い(嘘)

・色々な利害が存在するため、ノウハウは放送局、代理店、
 プロダクションサイド共に、自社および他社を考慮し表に出さないし、
 出せない力学が存在

※Webマーケと情報の出方と存在する場所が異なる

また、CM実施企業の社長に聞いても意味がないとしては、社長自らがマーケティング、TVCM出稿の複合的経験があり、現場最前線でディレクションしているわけではなく、担当や代理店からの表面上の情報しかなく、さも知ったかで何となく良かったらしい!という程度の薄っぺらい、もしくは、その企業独自の再現性の無い情報しか聞けなく、客観的に有効な情報になり得ないケースがほとんどです。

聞いてちゃんとしたノウハウを持っている人は、業界でも数名程度しかいないかなと思います。

②目的の置き方

CMを実施する目的を履き違えないように気をつけないといけません。売上、利益を伸ばすため、それは全ての企業が共通としていることで、そのためにWeb広告、SNS、MA、SALES、DM、雑誌、新聞、各種PR・広報、動画、コンテンツ、SEM、SEOなどあらゆる手法が存在します。

なぜ、CMを実施しないといけないのか?まずはキャンペーン全体の目的とKGIを定めてからです。その上で、戦術やKPI達成のためにTVCMが必要なら、初めてそこでCM実施の検討に至るわけです。

さら後述しますが、同じCMでも配信エリアやボリューム、期間、クリエイティブなど、いわゆる打ち方、配信方法次第で、全くもって目的を達成するものが変わってきますので、まずはベースとなる目的、戦略を第一に決めましょう。

良くあるケースが、一定GRPにおける全国放映のCMでは、トップファネルにメッセージを伝え、認知×リーチを目的とするケース(全国にターゲット母数として多くいるサービス、商材)です。

CPAやCPIを基準とするだけのアプリや、Webサービスだけであれば、オンライン中心のキャンペーンでも当面良いわけですし、ダイレクトレスポンスでなくとも、あえてWebの特性を最大限活用する方が、キャンペーンのゴールを達成できるのであれば、Web中心の設計で良いわけです。

Who・Whatがあり、その先のHowにおいてTVというメディア、コミュニケーションが有効か否かを判断しましょう。

実際、CM予算分を割いた、2017年頭の「SNOW✕ドコモ 卒アル(卒業盛ルバム)」キャンペーンはCMに投下する予算の1/3で、CMと同等の効果を得られたと当時の部長はあるカンファレンスで公言していました。この場合のCMと同等の効果は露出(広告換算値)とアクション(指名検索)のみにフォーカスしています。

これは課題であった「ドコモは元気感が他社キャリアに比べ無く、若者人気が落ちてきている」というイメージを変化させるために、SNOWとタイアップして若者に浸透させるという施策を打ち、当時ターゲットの憧れの「りこぴん」「本田響矢」を出演させ、「学校で何かあるのか?」というインパクトを設け、「懐かしいシーン」での共感、「メッセージの連呼」における定着化、「ストーリーを通じて楽しくなる」というベネフィット、しっかり検索させるという「アクション」ラストの企業名を出しエンゲージを高めた結果となります。

さらに同社の盛りコレキャンペーンでは
「キレッキレのダンス」でインパクトを
「懐かしいポーズ」で共感を
「そこまで遡る?」というツッコミどころを
「目が離せない」というカメラワークを
「アイドルの普段見られない姿」による良い違和感を
共通したメッセージは盛るで、これも検索に間接的に落としています。

これはTVCMありきでは考えていない良い例です、というより、目的に対して、手段をしっかり考えられている例といった方が良いでしょう。

今一度、目的ありきで、TVCMを実施するか否かを検討するべきで、
もしTVCMを実施したいのであれば、逆算した目的の設定が必要になってくるでしょう。

全国規模のCM、つまりマスキャンペーンは考査が存在するため、そもそも、一定の信頼がある企業のみしか出稿が出来ないため、ブランドの役割でもある、購買リスクの低減・回避に役立つ「品質保証」への心象への影響もありますし、社員ロイヤリティの向上や採用促進効果もあるので、そのあたりも若干加味しても良いかもしれません。

③局、代理店、制作、キャスティングの商流に関して

TVCMを実施する際に、考えないとならない「商流」こちらは正解はありませんが、それぞれメリット・デメリットが存在します。

まず、基本的にバイイングは色々な代理店で行えます。ただ汐留、赤坂さんが、優先的にキー局、準キー局、ローカル局、全てにおいて、適正コストやターゲット含有率が高い時間帯、番組に入れられることに変わりが無いので、最終的にこの2社がオススメです(テレシーは汐留のラテ局バイイングのため、実質汐留と考えて問題有りません)

パブリシティ枠や番組仕込みの交渉や、各種膨大なデータからの仮説分析やレポーティングも強いです。番組に固執するスポットキャペーンもあまり、今や存在しませんが、どうしてもこの番組に入れるという目的が存在すれば、汐留のみ、赤坂のみという場合もあるので、それは事前にCMの局担に探りを入れるのも良いでしょう。

なお、汐留、赤坂さんが規模の経済の法則で無条件に優位ではあるものの、どのチームとプロジェクトを組むかが重要です。

例えばサイバーエージェントでも、営業担当やプランナーの差が非常に大きく、その会社だから安心、ではなく、その中でもトップチームをアサインすることで大きく成果に影響します。

わたくしはトップ1%のチームをいつもアサインするようにしており、他社に比べあらゆる優位な条件で出稿を行うことにしています。

また殆どのクライアントは実施していませんが、事前に局に軽いネゴシエーション(局担当と繋がり無いと出来ないですが)をしておき、その後、代理店経由で情報を入れるとスムーズでしょう。

ただ、あからさまに行うと代理店さんの顔も潰すことになるので、慎重なコミュニケーションを推奨します。上手くやると、より代理さんからの支持も得られます(局からタイムの提案を直で受けたら、基本受けるが、まずタイムは実施意義が普通は非常に低いので、上手く交わしつつ、代理店さんと相談します ^_^ という回答が優等生です)

<タイムとスポットの違いはこちら>

次に、代理店経由で相談を行う際に「指名」か「コンペ」かも決める必要があります。信頼できる代理店および担当がいれば指名で良いと思います。「指名しますので、宜しくお願いします、コミットしてくださいね。」ということで優位な条件を引き出せるのであれば、です。

ただ、それがなく、フラットに決めたい、オーディットが必要な場合、経験が薄い企業か、他店の提案も見たい場合などもコンペで良いと思います。

ただコンペの仕方を知らないとマイナス要因が大きいです。基本は同日に時間をずらしたオリエンを行い、提案日も同じ日が原則です。

●コンペの種類
【戦略〜プランニング】
オリエンに対して、どういった設計を行うかの考えなどを提案いただきます。

【クリエイティブ】
メッセージ、表現を具体的にどうるすのかの企画、コンセプト、コピーなどを提案いただきます。
絵コンテ以上のレベルまで求める場合は、クリエイティブフィーも発生することも多いので、そのマナーはしっかりした方が良いでしょう。
ただ無償で企画提案までであれば行ってくれるプロダクションもあり、クリエイティブはむしろコンペを推奨します。

【バイイング】
プランニングと合わせた出稿コストの調整です。
良く知らないベンチャーがやってしまうのが、2つの代理店から局に見積もりを入れてしまうこと。これをやると局が混乱するのと、これはコンペ案件だなと分かってしまうので、断言しますが、交渉が効かなくなってしまいます。

コンペではその代理店でコミットできる単価を出してもらい、最終的に局調整を行う交渉が最も優位です。このあたりは多くのベンチャーが知らず知らず損をしてしまっています。(局は言ってきませんが、実際印象が良くないです)

それだけ損をするかと言うと、関東で1,000GRP出稿だとして、平均6,000万円〜1億円程度の差がここだけでつきます。

代理店サイドにもいたので分かるのですが、クライアントの前では悪い顔はしませんが、一定リソースの中、クライアントに本当にコミット出来るか否かは、クライアントの対応にも左右される部分が大きいです。
代理店は使うものはなく、運命共同体の大事なパートナーとして、一緒にやっていくスタンスを最初から持つべきです。それが結果、細部の動きに活き、効果となって還元されてきます。

ちなみに局はあくまでメディアで、その局の枠さえ売れれば良いという事情もあるため、プランニングはあくまで代理店マターとしましょう。

●コンペの種類制作とキャスティングを直で行うか、代理店経由で行うか

◎代理店経由で行うメリット
・商品、サービスに関するオリエンが1回で済む
・プランニングに対してのクリエイティブで認識の齟齬が無い
・コミュニケーションが一括で済む

◎代理店経由で行うデメリット
・制作とキャスティングはバックマージンのためプラスのフィーが発生する
(制作直だと5,000万円で済む制作料が、5,500万円〜となるなど)
・制作に微妙なニュアンスが代理店経由になるため伝わりににくい
・スピード感が少し鈍る

わたくしは両方経験がありますが、クライアントサイドで制作ディレクションと、さらにはキャスティングのマネージメントもできる体制や人間がいれば(あまりいない)、代理店経由ではなく、直で進める、方がコスト的にもおすすめです。

そうでない場合は、代理店経由で、制作は基本は代理店であるものの、CCで制作サイドと直のコミュニケーションも許容いただけるとベストだと思います。

最初に商流の部分も考えた上で、代理店にオリエンやコンペの相談をしましょう。昨今、汐留や赤坂より独立し、動いている方も多く、そういった方を上手くコンサル(なんちゃってマーケターとクリエイターが凄く多く、単価も安くないので要注意)に入れるか、有効なバイイングのためにお手伝いいただくのも手ですが、ちゃんとした代理店の担当営業がいれば問題ありません。

④実施期間に関して

CMは時期によって単価が異なります。6月は少し安い、など。
よって時事的影響が受けにくい商品商材は単価が安い時期にキャンペーンを打つのも良いでしょう、また競合が必ず実施する時期にあえて重ねるのか、前に外すのか、後ろにずらすのか等も狙った目的や、商品、サービスのポジショニングによって変わってきますので、慎重考えましょう。

バッドケースは、単価が高い時期に放映し、さらに競合に食われ、認知至らずということです。詰めが甘いと、このようなケースに陥る場合もあります。CMは競合他社との情報戦でもあります。

ちなみに「あくまで」傾向ですが、以下月毎のコストイメージです
(100をベースとしております)

◎月別の単価目安

1:80
2:90
3:120
4:90
5:90
6:95
7:100
8:80
9:100
10:100
11:120
12:120(年末年始は100〜110)

BtoB企業の出稿においては商材ん単価およびターゲットがEP(エンタープライズ)かSBM(中小企業)により、いつの決裁にアプローチしていくのか、まで計算することを推奨します。

例:3月受注にフォーカスを当てるのであれば10月〜、1月〜とそれぞれ山を持ってくることを推奨


⑤コスト単価に関して

TVCM単価は昭和初期にエイヤで決まり、キー局がこれくらいだから地方局はこれくらという形で、意外とゆるく決まった背景があります。

単価=GRPとう単位で換算され、視聴率×CMチャンスにより決まります。
このGRP当たりの単価がいくら=発注金額となります。

そのGRP単価は以下の式で決まります。
(イレギュラーで年間契約などもありますが、その要素は省いています)

「出稿回数」×「企業銘柄、定性」×「過去出稿量」×「今回の出稿量」×「時期」×「?」


?は何かというと「関係性」です。局と代理店、局と広告主、代理店と広告主、この関係で決まり、差分は1.5〜2倍くらいあります。
下手な交渉をしても安くはなりません、逆に嫌がられます。原則はマージンを引いてという交渉も無しです。出稿が10億以上で、クリエイティブも全て代理店にお任せするとかなると別ですが・・・

よって、実はナショナルクライアント級の一定ボリュームを出稿をしている定性が良い企業よりも、稀ですがベンチャーの方が単価が安くなるケースもあります(ナショナルクライアントは単価が決まっています)

結構最近あるのが「汐留とか赤坂なんかに頼んだら高い。我々はリーズナブルに打てる。しかも1本から可能」

⇒これ実は結果としてタイムバイイングであったり、バイイングの交渉が、ほぼ発生していないため、高くなっています。また高いかどうかの判断もコスト以外の要素もあるため到底つかないでしょう。

ベンチャーにとっては特に単価が安い(線引も大事)だけで、投資回収が早まるので、このあたりは非常に重要です。きちんと考慮しておきましょう。

もし、提案された単価が高いのでは!?過去打った単価は適切だったか?と思う場合はご相談に乗ります(noteには書けませんが単価の目安をお伝えできます)

◎クライアント課題

【課題.1】
マス広告(特にTVCM)に関する知見、情報の不足、代理店、制作会社のポジショントーク→事実とは異なる知識、慣習が存在

【課題.2】
あらゆるパターンの出稿経験者が不足→TVCMの実施方法の判断基準が属人的でROIの測定方法も粗い

【課題.3】
広告枠、制作コスト共に、適正価格以上で出稿されている→余剰コストにより、クライアントファーストのROIになっていない

⑥素材秒数に関して

素材は原則15秒オススメです。とはいえ、30秒が悪いということでは一切ないです。
15秒で伝えられる限界があり、30秒だと、全く世の中に認知されていないカテゴリに対して、一定の時間で伝えることがしやすくなる、また世界観やコンテンツとしてのストーリーも作りやすいというメリットがあります。

ただ、難点は以下のようなことがあります。

◎30秒素材の難点

【難点.1】
十分なリーチが取れない(同日で流せる本数が下がり、リーチは理論上数割落ちる、どんな番組が反応するかのデータが無い場合は、一旦最低リーチは取っておいた方が良い)

【難点.2】
GRPあたりコストが約2倍(厳密には2.1倍)になる

【難点.3】
線引が少し不利になるので、ターゲットに当たりにくい

【難点.4】
クリエイティブによるが、30秒は飽きられやすいので途中視聴離脱する

【難点.5】
リーチ<ターゲットに寄り過ぎ、フリークエンシーが高まりすぎる

ただ、番組属性による反応が顕著で、タイムをバイイングするといった場合には、30秒はあった方が良いです(ただ、別素材であれば、15秒×2本でも可能のため、別訴求を2本同時に流すことも可能です)

また、自社サイトでサービス、商品理解のためにCM素材を置いたり、公式YouTubeにアップする際にも、30秒は有効だったりもします。
基本は15秒と考えて良いでしょう。

⑦エリアと局に関して

配信エリアに関しては全国満遍なくなのか、理由があってエリアを絞るのか、そのあたりのプランも重要になってきます。まず、商材、サービスでエリアを絞る特段な理由がなければ全国で良いと思いますが、予算を抑えたい、情報感度の高い人からの口コミ形成もセットで考えている場合は、東阪名古福札を中心とした10都市配信の方が効率的である場合が多いです。

さらに、関西だと、大阪府以外も関西テレビは視聴出来ますし、九州なら福岡の電波は近隣に入りますし、人口が少ないエリアはあえて配信しなくてもエリアによっては到達していきます。

全国と首都圏のハイブリット型として、全国傾斜というバイイングもあります。

例えば2010年くらいであれば、ガラケーユーザーも地方には一定存在しましたので、スマホサービスのキャンペーンであれば、スマホ保有数と率を各都道府県抽出し、リーチ数と効率が良いエリアを中心に傾斜をかけて配信ボリュームを変えていくという形が有効だったりします。

※エリアによって視聴傾向は異なるため、同じ認知率の獲得に必要な投下量も変わる

図:例)ある企業のエリア別出稿ボリュームシミュレーション


局に関しては、キー局は顕著ですが、定期的に視聴者の傾向が変化します。それによって、どの局に厚めに発注するのが、効果的かを考慮しましょう。とはいえ、1局集中は結果としてリーチが取れないことになるので(その局をあまり見ない人に当たらない、ないしUUが偏る)注意しましょう。

4局あれば、全てに入れつつ、どこかを厚めにするとか、あえて3局以下に絞ることで、次回以降の価格競争(局値引き)を優位に進めるかなど、駆け引き、交渉において、細かいテクニックがあるので、そのあたりは、平均的にどの局にも入れれば良いというものでは決して無いので注意しましょう。

また少し広報的な要素となりますが、CM出稿と合わせ、無償で、パブ、もしくは番組内で取り上げをいただくことも出来ます。が、その方法は、あえて触れません。ただ、広義でいうPR会社の中には「ペイドパブ、プロダクトプレイスメントででいくら」という提案等を、してくるところがありますが、どう考えても高いケースがほとんどなので、番組内取り上げにおいては、特にCM出稿企業は別途コストを払うことなきよう進めるべきです。

⑧期間と配信方法、配信ボリュームの考え方

何週間のキャンペーンとするか、予算との兼ね合いもあると思いますが、一定の認知を図ることを前提に行うのであれば、3週間は欲しいところです。

消費財メーカーのキャンペーンで、全日でバイイングしたとして、3週間、平日最低で90GRP以上、土日130GRP以上(これは配信エリアやバイイング方法によって異なる)で、合計2,130GRPです。

せめて、2,500GRPないと、いわゆるターゲットが「見たことある」というレベルには到達しないので、平日と土日どちらに、どちらだけ寄せるかは既存のサービスのCVR傾向を元に代理店と相談という形とするのが良いでしょう。

約3,000GRP以上行うと「見たことある」というレベルに到達します。その場合は3週間より、4週間に伸ばす選択を取った方が懸命です。また3,800GRPまではある程度認知曲線は伸びるので、予算と相談しながらプランニングしましょう。

図:FQ8回の設定の場合のシミュレーション

加えて、注意点としてGRPありきというより、過去の出稿量の程度(新規か否か)と業種業態ににおいて最適なFQ(フリークエンシー)は異なります。

目的を達成するのに2,000GRPで十分なケースがあります。認知の最適FQの一回目は3〜5回、次に7回前後と言われておりますが、TVをつけっぱなしで、CMを数十回見る人もいれば、0回の人もいます。よって平均GRPではなく、FQ毎のユーザー割合の分布図グラフを作成し、最適FQ以上のリーチするユーザーに当てるべきGRPを見つけ出すと良いでしょう。少なすぎてももったいない投資ですが、無駄な出稿も同様に気をつけたいものです(本来の理想としては該当視聴者がWeb広告に当たるFQも考慮することで、マスとWebの予算アロケーションも決めていくことです)

⑨クリエイティブとキャストの考え方

●クリエイティブ本数
クリエイティブは最低2本以上用意しておけるとベストです。
どういう訴求で分けるべきかは、商品、サービスや目的に応じて変わります。2本以上制作する理由は以下3点です。

◎理由.1

2つの訴求を合わせることで、相乗効果を発生させるため
(例:商材、サービスの認知とブランドイメージ向上がKPI+商材の利用方法や利用シーンによる実際の申込数がKPI)

例えば某アイドルグループを知ってもらうにはAさんだけ露出するのではなく、Bさんも別軸で露出させた方が良いということです。訴求を変える方法もあれば、訴求の方向性は一緒だが見せ方を変えるというどちらかが一般です。

◎理由.2
キャンペーン中に効果を見ながら差し替えを行うため


1週目にクリエイティブA、2週目にクリエイティブB、3週目にABミックス、4週目に3週を通して効果が良かったクリエイティブを起用、というキャンペーン中に効果を見ながら差し替えが出来るため(差し替えは入稿日の都合もあるので、早めに代理店と相談しておく必要あり)

◎理由.3
次回キャンペーンのクリエイティブを制作する際の参考になるため

以上、最後に、TVはながら視聴が非常に多いです。そこで見ることだけにフォーカスを当てずに、聞かせるCMを意識しましょう。音でハッとTV画面を見るという動線を視聴者に与えるテクニックが大事です。これは某企業の宣伝部長が大事にしているテクニックです。

※タクシー広告は22時以降強制で音声なしになるため、聞かせるではなく、見させる観点が必要です

総じて、クリエイティブに関しては、定点的にCD(クリエイティブディレクター)とコミュニケーションの在り方を握るようにしましょう。

※CDがつかないケース(九州電通など一人何役もするケース)もあるので、そこはコミュニケーションをファシリテートしてくれる人をきちんと決めておく必要があります。

クリエイティブのレバレッジ
クリエイティブは最もレバレッジが効く要素です。3,000GRP未満あたりまでは、比例していわゆるCM自体を見たという認知度は上がるものの、3,000GRPを超えたあたりから、クリエイティブが半無意識に心象に残るものではないと、それ以上の認知が超えにくいです。特にCMは見たことあるかもしれないが、で、何のCM?という形で最も大事なところに落ちないケースが発生します。

一見、同じようなクリエイティブでも5〜10倍程度は効果(商材がWebサービスだとCTVR)が異なります(事例も多い)ので、クリエイティブを馬鹿にせず、しっかり企画しましょう。

どんなプランニングが上手くいってもクリエイティブ次第でハネるか無風か大きく変わってきます。

そしてクリエイティブは正解がない中で、時代とともに傾向があります。
本質的には目的を達成するためにどうするか!ですが、音や動きで興味を引かせるもの、有名タレントのイメージで引っ張るもの、ストーリーで共感させるもの、サービス名を連呼するもの、課題を最初に問いかけ自分ゴト化させるものなど・・・

ただ、最近こういうものが流行っているからうちも、、だと大抵上手くいきません。二番煎じで本質的ではないからです。

例えば音や動きで興味を引いても、今は、相当な意味がそこにないとサービス認知まで落ちませんし、連呼もプロダクトのカテゴリが既に認知されていないと、どんな連呼をしても、何のこっちゃ?で終わります。

ビズリーチは当時、サービス名の連呼をBtoB業界で当たり前にした大きな事例ですが「採用サービス」というマーケットが既に確立されていたので、有効でした。そのマーケットが確立されていない、ないしカテゴリが確立されていない中での連呼は無駄であると言える。そもそもカテゴリの認知を優先させた上で、そのカテゴリ=サービス名の図式を作るか、が重要である。

それくらい、クリエイティブにはテンプレートがあるようでないのです。なんちゃってマーケター同様、なんちゃってクリエイターも多いので、CD(クリエイティブディレクター)を誰にするか、の見極めとオリエンは相当大事と言えるでしょう。名前は売れている、過去実績があるから、だけでは不足です。

クリエイティブの差し替え頻度
クリエイティブはあくまで戦略にもよりますが、一定傾向が見えてきたら、オープンカット、ラストカットのみの差し替えなど細かいチューニングは定点的に行っても良いでしょう(あまり頻度が短すぎると検証さえもできないため検証に十分な出稿が必要)

また素材あたりのフリークエンシー高まり過ぎると態度変容が鈍化します。また全く同じクリエイティブを一定GRP配信すると、昨今の視聴者は特に飽きる、逆に嫌悪感を感じる、というリスクもあります。

よって、その場合は大訴求方針をガラッと変えるのは半年〜1年が目安です(打ったGRPにもよります)

王道の訴求をまずは半年〜1年間出稿を続ける、そこでそのメッセージが到達しない視聴者が必ずいる。そこで思い切って変化球としてのアプローチをとすることで、不思議と今まで反応しなかった視聴者が発生する、また既存ファン層に対してもプレゼンスが高まるという相乗効果があります。

全てのイベントは1年単位で繰り返されるので、週、月、四半期、半期の目安に加えて基本は1年という単位で戦っていくことを頭に入れておくと良いでしょう。

キャストの考え方
次にキャストですが、著名人を必ず利用することが正ではありません。
ジャンルにもよりますが、著名人=演技が上手いかは別であるのと、何よりキャスティンフィーが高い(1,500〜3,000万/1クール)は少し高いなレベルです)ので、制作や枠代に回した方が全体を通すと効率が良い場合があります。

また著名人は認知率を高めるものの、そこの認知に引っ張られ過ぎる場合もあるので注意が必要です。

例えば「あの人が出てるCMだよね!見たことある、で何のCMだっけ?」というケース。結果、演者さんのイメージが強すぎて、その絵の認知は得られるもの、肝心の商材、サービスに落ちない、ということです。

これはクリエイティブの文脈とセットで考える必要があります。著名人を使う場合は、その人を使う明確な理由がある場合や、競合がいれば、対競合対策として有効な場合もあります。

あくまで、どういう目的のキャンペーンで、それを達成するための、プランニングとクリエイティブ、ではそのクリエイティブを実現するには、キャストは誰が良いか、という思考の順番です。

もちろん人気著名人ほど、競合指定が入っており、オファーが通らなかったり、スケジュールが合うとも100%限らないので、初期段階から、演者のことは頭に入れて進めていくべきです。

個人的にはネクストブレイク枠がおすすめです。凄く著名人ではないものの、今話題かつ今後活躍していくという方です。なぜ良いかというと、キャスティング代が安いのと、活躍しだすと、YouTubeで公式CMとしてアーカイブの視聴が増えたり、二次的な訴求も無償で可能なためです。またエンタメ系のニュースで一定取り上げていただける機会にも繋がります。

自分が関わったものだと、有村架純さん、山本美月さんの初期の方のCMが、見事ハマったというケースでした。また契約期間においては、最初にある程度お願いしたいことを盛っておきましょう。後出しジャンケンはご法度です。なお、YouTubeは、その特性上、アーカイブで暫く残しておく(CMは1クール契約だけど、YouTubeは1年など)ことを前提に交渉した方が良いでしょう。事務所によって考えも違うので、上手く交渉する必要があります。

蛇足ですが、2020年以降見られるBtoB SaaS系企業のクリエイティブは、年々効果が下がっています(効果=商談率)

理由は「芸人を起用・踊る・サービスの頭文字のポーズを取る・連呼する」の型が広まりすぎたため、結果全て同じサービスに見えるという現象、そしてサービス便益まで落ちていないコミュニケーションになっていることに起因しています。

他社を参考にするのは良いですが闇雲に真似をしたり型を踏襲すると結果、自社の成果につながらないため留意いたしましょう。

●クリエイティブの基本軸と訴求軸の作り方
基本的なクリエイティブ制作のまとめた形が以下となります。
原則は下記1に関連してPOD(Points-of-Difference)を以下に伝えるかに付きます。

訴求軸の作り方として安易に◯◯訴求という方もいますが、軸は大きく7つあり、こちらを参照にWho・Whatを設計することを推奨します。
クリエイティブディレクターによっては癖があるため、ここでもどういう意図のコミュニケーションなのか、表現なのかをコンセンサスを取りなが進めましょう。

toBならではのクリエイティブセオリーは下記となります。
最終的にはセールスによるクロージングにより受注が発生しますが、その前段階で商談意向、受注意向をいかに高められるか、はtoBのクリエイティブにおいては重要となります。


⑩テストマーケティングの考え方

ある程度の規模の予算を利用するTVCMではテストマーケティングを実施するケースがあります。その際の3大ケースは以下です。

【ケース.1】
10億規模のキャンペーンを全国で打つことが決まっており、それを確実に成功させるための事前地方テスト(一般的)

【ケース.2】
使えるMAX予算が限られているから地方しか打てない(どうしてもCM実施の理由がある)

【ケース.3】
失敗できない(回収出来ないと困る)から、テストを行う(失敗しても最小限のリスクに留める)最後の失敗できないからという理由ですが、最小限のリスクに留めること優先であればOKですが、効果最大化が優先であれば、テストは実施せず、狙ったキャンペーンを最初から実施した方が効果的であると考えます。リスクを鑑みるのであればトラッキングが曖昧で、再現性が少ないCM自体がリスクとなります。

具体的なテストの場合は、予算にもよりますが、検証ボリュームに十分な人口と最適なGRPが確保でき、一定の効果(認知×獲得)も見込めるところが良いでしょう。

例えば静岡県が良く選べれるのは、その県民性が全国の平均値とされているからです。逆に県民性=国民性の平均となりにくいのが愛知県(名古屋)であるため、このあたりは留意しましょう。

また県別でクリエイティブテストをしたい場合は、消費者属性が似ているエリアかつ局構成が一緒の北陸4県(新潟、富山、石川、福井)あたりで設計するのも推奨します。

総じて、サービスと県民性、世帯(個人)当たりのリーチコスト、などなど総合的に加味して慎重に設計しましょう。

何を優先するかであり、正解はあるようでありません。

なお、TVとWebでは視聴態度が異なるため、TVで反応が良いものがWebでも良いとは限らず、その逆も然りです。

ただ地域性や時期的要素で、公平なテストがし切れない、テストなので、予算を極力押させたいという場合は、旧式方法ですが、ターゲットユーザーに実際テスト視聴をして、その後のアンケートなどで、N1分析をして本番に挑む、ないしマスに近いWeb上のAD枠(TrueViewなど)に出向して、アクションまでの行動傾向(CTVR)だけ見るといったやり方でもテストの補完は可能です(マイナビ方式)

●テストマーケティングにおけるクリエイティブ
テストマーケティングにおいて「クリエイティブのどこを変えるか?」ですが、色々なパターンが存在します。例えば有効的なのが問題提起に使われる最初の約3秒(もしくは〆のラストカット)を変更して試す。

例)「◯◯の時間がない!」「〇〇は大変!」「◯◯は嫌い!」
極端な例ですが、これだけで最も良いものと悪いものは最大で7〜8倍の差がありました。

この上で、最終的に良いものを残した形で、さらにABテストをするとこ、よりターゲットに対する訴求の精度が上がります。

また、ターゲットが複数属性存在する場合には、それぞれ用に訴求を用意しつつ、同条件でABテストを行うことで反応の傾向が見えやすくなります。
(差異がない場合は両方にそれぞれの訴求で効くということなので、両方とも残しておいても良い)

⑪線引きとアクチュアル

意外と知らない線引とアクチュアル。

●線引
線引は絵柄とも言い、プランニング時の線引方法は全日、コの字、逆L、一の字などと言われるものです。予めこの曜日時間帯で出稿したいという希望が出せます。

ただ、セグメントを細かくするほど、GRP単価は高くなります(全日でも5時立ち上がり、6時立ち上がりだけでも若干異なります)ある意味、デジタルのターゲティングと同じ考えで、属性などを絞ることで単価は高くなるとということです(放送局は基本的には枠を多く販売したいため、セグメントされることを好みません)

ここで、ベストなのは出来るだけ広めに引きつつの、その後、出来るだけこの時間、この番組に寄せることです。

具体的には線引交渉を放映前に2回、放映中であっても毎日チェックはすること
が重要です。ただ代理店にとっても非常に面倒な作業かつ難易度は高いため、クライアント×代理店×放送局とのリレーションが非常に大事になってきます。

わたくしの場合は単価を抑えられる全日(=出稿タイミングはどこでも良い)で発注しつつ、その後の調整にて、希望通りの局と番組のみに出稿をするという方法を取ります(これがサイバーエージェントで学んだもので最も優位となります)

さらに、よりターゲティング精度を高めるために、実現しうる方法が、CVのポイントがWebサイトである場合、事前にトラッキングコードを埋め込んでおきCVし得るユーザーの傾向を元に、どの局のどの番組の反応が良いかを元に線引を行うというものです。

自社サービス、商品に反応する視聴者はどこにいるのか?の仮説の精度がより増す有効な手段となります(代理店から提案いただけることはありませんが、知っておくことで、依頼が可能となる、高度なテクニックとなります)

●アクチュアル
次に「アクチュアル」CMは1,000GRPといって見積もっても、結果800GRPなどという着地が平均です。約20%もショートしますが、1,000GRPは保証ではなく、あくまで過去視聴率より、そのボリュームで線引しますよというもの何の文句も言えません。

ただアクチュアルを握ることで、足りない部分を補うアクションが生まれます。せめて、アクチュアルとして、90%超えを目指したいものです。
期待視聴率が上回れば100%以上も有りえます。

よって、発注時に「号数」と言われる。いつの期間の視聴率を参考にプランニングしたか、を見破ることがアクチュアルを到達する上で重要です。
コロナの影響により2020年の4月の視聴率は高く、逆に2021年の4月の視聴率は低い事実があります。2020年の4月をベースにした視聴率で発注に至ると期待視聴率が下がるため、アクチュアルも下がります(損をする)

よって号数は視聴率が低い時期のもので組んでもらうことで、より多くの顧客に見てもらえるのです。

ただ、アクチュアルを追う、GRP(Gross Rating Point)重視主義も良いですが、GAP(Gross Attention Point)=注視(Attention)している割合が結局は大事なので、ターゲットとコンテンツの性質を鑑みて、番組単位でしっかり線引をしていくことをオススメします(時間帯というよりは、番組毎)それほど番組属性と商材(プロダクト)の関連度は重要です。

例:toB商材は経済番組やニュースは反応が良いが一部バラエティでも高い反応がある

例:キャリア(au、docomo、softbank)など、オールターゲットにように見える商材においても、番組属性で反応が異なる

●線引のタイミング
線引は初期プランニングで決まりますが、最短で週単位で見直せます。
ただし、1ヶ月出稿するなら1ヶ月と広めの期間で実施するほうが、その期間内におけるバーター交渉(今週はこの番組に入れない代わりに来週入れて欲しい)が出来るので、結果週毎の線引より、出稿期間をフルに活用した線引を推奨します。

⑫効果測定の方法と考え方

CMの効果測定ってどう見るのか?こちらも目的に応じた効果測定になります。当初決めた目的を達成したかは、どういった効果測定をすれば良いのかも、キャンペーン前に必ず決めて準備しておく必要があります。

「ブランド名の認知」という指標であれば、ブランド名の認知調査と、ブランド系ワードの検索クエリなどを見ていくことになると思いますが、実際は、もう一歩二歩深掘りする必要があります。

まず、CM放映のタイミングでは、見せ方次第ですが、必ず検索クエリは少なからず増加します。それがキャンペーン終了後の残存期間(GRPによるが約1週間)以降でどうなっているのか?

認知そのものは、30年前と違い、最重要指標とはなり得ないため、認知の先の態度変容(例:理解度|好感度|選好優先度)に加え誰が、実際にどういう行動をしたか、という部分をCMの放映データと、各種クライアント側で取得できるデータを付け合わせ、点ではなく、多面的に、かつ定点観測をしながら見ていく必要はあります。

それにより途中でクリエイティブ差し替えの検討の精度が高まります
(最初に何がどうなったら、差し替えするかは決めておくと良いです)

◎先行効果指標
・指名検索数と、指名検索数経由のアクション(セッション|問い合わせ|資料請求|商談・購入率)
・CMを見たとトラッキング出来た人の行動
・CMによって口コミ掲載がどう変わったのか(ソーシャルリスニング)

◎後発効果指標
・CM接触者のLTVの推移
・ロイヤル顧客化したかどうか

短・中・長期それぞれで、売上、利益にどう貢献したかという投資の評価をしていくと良いでしょう。その上で、マーケティング予算全体のアロケーションをどうしていくかを策定精度が高まります。

このあたりは代理店側で無償、有償で出せるものがるので、事前にKGI・KPIのすり合わせが大事です。(始まってさあどうしようでは時既に遅しです)

具体的ツールとして「放映確認のためにビデオリサーチ(県によっては抽出可能なデータは異なる)」「電通のSTADIA・博報堂のAtma」「各種MMMツール(パス解析が主)」「他企業の測定ツール(昨今優秀なものもある)」など色々ありますが、それらをどう使って効果測定をしつつ、Google Analyticsなどはもちろん、社内の取得データをつけ合わせ、CMチャンスが、どう視聴者の行動に影響を与えたか、継続的に分析のPDCAを回せるようにできるのが理想です。

なお、実際CMを見ているかどうかはっきり分からない(正確なトラッキングではない)のに、CMチャンス(出稿タイミングと視聴率の高さ)において、アクションしたユーザーをGoogle Analytics上のCVデータでCM効果とみなすツールもありますが、正確な効果測定とは言えないため、あくまで傾向として見るのは良いですが、それを鵜呑みにしないようにしましょう。

アプリなどはそれでも瞬間的なアクションに繋がりますが、必ずしもCMチャンスとアクションが比例しないことが多くあります(検討期間が長い商材|高単価商材|toB商材)

●直接的効果と間接的効果
CMが直接的にユーザーアクションにダイレクトで繋がった数と効率、間接的に繋がった数と効率、Web広告へどういった影響があったか、指名検索にどういった影響があったか、認知目的に振ったCMであれば、それが長期でどれくらいのROI・ROASになるか、それぞれで投資の対して、どう評価し、どうCMへの投資戦略を決めていくかが大事です。データを読み違えると、投資戦略も誤ります。

仮にWebサイトがCVポイントである場合、Google AnalyticsのClient ID(Cookieベース)は自動で取得できているので、その先のCV該当フォームでユニークのUserIDを付与する仕組みを設けておくこと。

それにより、CRM(SalesForceやkintoneなど)にユニークIDと顧客情報が紐づく。それをGoogle Analyticsに統合し、STADIAのデータとさらに統合すれば、CM接触者のLTVまで追えます(殆どの方が意外と知らないため、勿体ない効果測定をしているなとわたくしは思います)

⑬CM連動のキャンペーンの設計方法(YouTube、Web、PRなど)

CMと連動したADやPRに関して基本的なことを抑え、それを実行することで狙った効果が最大限期待できます。

◎TVCMの相乗効果を上げるポイント

・リスティング広告
CM期間中には必ずリスティング広告で指名検索キャンペーンを誤字も含めて設ける(PCと並行してスマートフォンも)

・デジタル広告
ダイレクトレスポンス系のADはCTRが約10〜20%アップするので、予算を引き上げ、場合によってはセグメントも広げ機会損失をなくす(効率だけ重視するのであれば広げなくても良い)

・クリエイティブの一貫性
クリエイティブ全体のとんまなを合わせ、タッチポイントとフリークエンシーの最大最適化を行う(とんまなを合わせずに、認知後のアクションをデジタルで促すことも商材特性によっては有効)

・その他広告の山
山をCM開始時期より後ろにずらす(例えばCMを4週間、ネット広告4週間であれば、重ねずに、CM実施1週間経過時点から4週間とする、特にOOHはCMが終わった後からでも問題ない)
※CMで初期認知を測ってからの連動キャンペーンの方が効果的である

・PR
PR企画は、CMにちなんだものも検討する
(例:演者が出演する企画やキャンペーンなど)

・YouTube
YouTubeにCM動画をアップする際は、特にラストカットを微修正する(TV画面で見る検索ボックスの見やすい最適な大きさと、PC、スマホで見る検索ボックスの見やすい大きさは異なる)

出来るだけ賑やかしを行うためにメイキングは演者出演の際は撮影しておく(インクルードコストで制作していただく)

タレント起用の場合はWeb限定CMもセリフ違いで撮影してお
(YouTube経由の視聴が上がる)

・VSEOを意識してCM素材は上げる

・プレスリリースは必ず出し、メディアプロモートも行う

・TrueViewのテクニック
TVCMの視聴有無によりクリエイティブの出し分けを行う
CMを見ていない:CM素材を流す
CMを見た:見ていることを前提に、理解〜アクションを促す素材を流す

※そもそも視聴態度とターゲットのペルソナ属性がCMと異なるため、単純にTVの補完としてのみのTrueViewは効率が悪い

●やりがちな罠
やりがちですが「CM実施中」といったWebのバナークリエイティブは、ほぼ意味が無いので、やらなくても大丈夫です。むしろターゲットや訴求クリエイティブ次第では逆効果となります。

コンビニでアサヒスーパードライの缶に「CM実施中!」と貼ってあっても、それが消費者は買う理由にならない時代といえば分かると思います!

⑭やって良い交渉と、やってはいけない交渉

改めて、TVCMには代理店の協力が必須です。
そこで、テクニックとしていくつか大事なことと、ご法度なことをいくつか網羅します。ご法度なことをしたクライアントも知っていますが、その後、成功したキャンペーンを見た記憶がございません・・・

◎OKな交渉
・グロス予算と他社へ浮気をしないことを理由に値引き交渉
(代理店×局との年契でそもそも単価を安くするという方法もありますが、年契分は配信しないといけないリスクも存在します)
・メイキングや、Youtube映像などの編集を無償で相談すること
・線引コミット交渉
・アクチュアルコミット交渉

◎NGな交渉
・2つの代理店から放送局へ見積もりを入れること
(局が混乱し、印象を悪くします+単価交渉がし難くなります)
・コンペ決定後に他店に相談、流すこと
(信頼を無くしレピュテーションリスクも発生します)
・代理店経由なのに局や制作と直でコミュニケーションを頻繁に取ること
(あくまでフロントコミュニケーションは代理店です)
・現場で監督に直接指示すること
(オフライン時や、本編集で場合によっては問題ありませんが、伝え方があるため、安易に指示を出すと混乱します)

以上

TVCMは一言でいっても奥が非常に深く、投資額が多いいからこそ、ざっくりではなく、しっかり設計し進めることで企業、事業の成長に繋がります。予算は大事に使いましょう。

100万円と110万円で悩むのに、1億円と1億100万円だと大した差分ではないと判断する意思決定者が多いです・・・

昨今、TVCM関連の支援事業を営む企業も増えておりますが、自社利益を得ての事業なので、提案は慎重に受けましょう。

スタートアップ、ベンチャー企業で、これは下手な提案で進めてしまったな、と思う案件が約7〜8割程度存在します。

クライアントファーストなTVCMをナルリノは支援いたします

初回相談は無償
お問合せはこちら<info@nalulino.co.jp>まで


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