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本棚の中身

私が読んだ本(漫画も含む)の中で、好きな作品についてをつらつらと紹介。

「傷口から人生。 メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった」 小野美由紀

珍しく読んだノンフィクションもの。Yahoo!ニュースか何かで取り上げられているのをみて、気になって思わず衝動買いした本。
就活に失敗してパニック障害になった著者は壁にぶつかったことで、それまでの自分が張りぼての人生を生きていたことを知る。これをきっかけに自己や家族と向き合っていく様が赤裸々に記されている作品。
私自身、ところどころ著者と似たような経験をしていて(誰かの求める自分を演じて生きていたところとか、親との確執とか、最終的に身体を壊したところとか……)全く同じではないけれど、読み進めながらまるで自分の半生を記したものを読んでいるような錯覚をした。
私ずっと、人生って一度でも大きく躓いてしまったらもうリカバリーはできないって思いこんで生きてたんだよね。大切な誰かに嫌われたら、周りにカッコ悪いって思われたらもうダメ、みたいな。でも本当は全然そんなことなくって、周囲の求める自分でいなくても私は私として認めてもらえるし、例えそれが自分の大切だと思った人たちに受け入れられなくたって私は死ぬことはないって気づいたのね。私が在りたい私でいても、素の私をそのまま受け入れてくれる人もいるかもしれないんだなって。そう気づけたら目の前がスーッと明るくなって、生きていくのが怖くなくなったのを覚えてる。そんな自分の中での大きな『発見』を同じようにした誰かがこの世界に居たことが堪らなく嬉しくて、私も頑張って生きようって改めて思えた本だった。

「かなりや」 穂高明

本屋さんウォッチング中に見つけた本。海辺を歩く男の子と女の子が印象的で思わず購入。
母親との関係に問題を抱えている女の子が、母親の地元である海辺の地方都市に引っ越してきて、そこでお寺の息子である同じ年の男の子と再会して始まる物語。作品の構成はそれぞれの登場人物がどこかで繋がりを持っているような感じのオムニバス形式。(余談だけど私はこういう構成の作品が好み)
ストーリーはちょっとSFチックで、でも物理や科学の話と絡めて進むからなのか、ひょっとしたらそんな世界も本当にあるのかもしれないな……なんて思ってしまう。人の生き死にが絡んでくるのもあってポップで明るいというよりは、大きな川がゆっくりと流れていくようなイメージの落ち着いた雰囲気が全体にあって私は読んでいて心地良かった。登場人物たちの気持ちの動きにも共感できる部分が多くて、ふとした時に読み返したくなる本。とてもオススメ。

「明日の記憶」 荻原浩

本屋さんで何となく惹かれて購入した本。
大手広告代理店に勤める働き盛りの敏腕会社員が、ある日突然若年性アルツハイマーと診断されしまい彼の記憶が少しずつ壊れていく中で、その心の描写や妻を含めた周囲の人間との繋がりが変化していく様子が切ないストーリー。
私が思う人間って生きてる中でいろんなことを経験したり、いろんな人と出会ったり、別れたりすることで積み重なったものが自分となっていくように考えてる。だからそんな風にちょっとずつ形成してきた昨日までの自分失われていくのって、ものすごく怖いし絶望することだと思うのね。
この主人公も同じで現実に絶望して拒絶して、苦しんで周囲の人を傷つけたり、傷つけられたりするんだよね。その描写が私は共感したし、人間らしくてとても好きだと思った作品。ネタバレにならないように気をつけたいけど、物語の一番最後がすごく綺麗なの。とても好み。
この話は渡辺謙氏が主演で映画化もされていて(妻役の樋口可南子氏の演技が素晴らしくて……)、これもすごく良かったので合わせてオススメしたい。

「キノの旅 -the Beautiful World-」 時雨沢恵一

たぶん私が一番最初に出合ったライトノベルがこの本。
旅人のキノと言葉を話すモトラド(二輪車で空を飛ばないもの)エスメスを主軸に、世界のさまざまな国を巡る物語。幸福な国、不幸な国、一見幸せに見えるのにその実は複雑な国……。そこで出会う登場人物たちも多種多様。そのバラバラなものたちが組み合わさって作られる世界は、複雑で、残酷で、だけど悲しいくらい美しいと感じる。読みだすと自分も一緒にその世界を旅しているような気持ちになる一冊。
度重なった引っ越しと貸し借りなどを経て現在手元にない本なので、落ち着いたら最近出版されているものを含め一気に大人買いしたいと目論み中。また現在(2019年)に至るまで2回アニメ化をされているけれど、どちらも趣があって私は好きだ。

「ばいばい、アース」シリーズ 全4巻 冲方丁

昔、本屋さんでジャケ買い(ジャケット=装丁などに惹かれて購入すること。当たりはずれがあるけど当たった時の快感は一入)して出会った本。
獣人たちが住む世界で、唯一「なんの特徴も持たない異形のもの=のっぺらぼう」と呼ばれる一人の女の子が自分と同じ存在を探す旅に出るお話。
ストーリーの質感は淡々としてるのだけど、主人公を含めた登場キャラクターの心の葛藤とか、世界観の表現とかに深みがあって私はとても好き。
小説なんだけど戯曲を観ているような印象を受ける作品。
余談だけど、もしこれがゲーム化したらすごい面白いと思う。あと登場人物たちの名前がカクテルに因んでいるのも楽しい。(これは大人になってから気づいた)

「裸者と裸者(上下巻)」、「愚者と愚者(上下巻)」応化戦争期シリーズ 打海文三

これも本屋さんでジャケ買いして出会えた本。
内乱が起こった日本で孤児となった主人公の少年が自分の妹弟たちを育てていくために戦争へ参加していくお話。
幼くして始まった戦いによって親を亡くした子どもたちが、家族を養うためや自分たちが生きていくためにあらゆる手段で生きようとするんだけど、その強さと幼さが混在する感じが印象的な作品。
テーマがテーマだからアンダーグラウンドで重めな話なんだけど、そんな中でも子どもらしい(というか人間らしい)感じが垣間見えるもの面白い。
ただ惜しむらくは執筆途中で作者が急逝してしまったため、物語の本当の結末が永遠に読めなくなってしまったこと。悲しい。
(追記・「愚者と愚者」の後の話が出版されていたのをこれを書いてて知った。買うぞ!)

「バスジャック」 三崎亜紀

高校生のとき仲良くしてくれた図書館司書の先生が「きっと好きだと思う」と薦めてくれて出会った本の一つ。
構成は7つの短い話がまとめられた短編集。写実的な日常の中に、違和感を感じないくらいの違和感が存在している不思議な話が楽しい。(この作者の作品はそういう話が多くて個人的に魅力を感じている)
昔TVでやっていた「世にも奇妙な物語」が好きな人ならハマるんじゃないかなぁ。(余談だけど今も時々世にも奇妙シリーズやってるけど、圧倒的に昔やってた話のが面白く思えるのは思い出補正なのかしら?)
さくっと読みやすいから波長が合いそうな人にはつい薦めてしまいやすい本でもある(笑)


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