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桃源郷①〜荻子という女

令和2年10月3日(土)。
今日は、夫と娘、私の親友である荻子(仮名)と、久住〜阿蘇方面にドライブすることになっている。

家族+友達という妙な組み合わせに思えるかもない。しかし、これが我が家の土曜日の基本形になっている。

私と荻子の出会いは大学時代に遡る。現在35歳なので、15年近くの付き合いということになる。
最初は、特に気が合うでもなく、話した感じ、「当たり障りのない」子だな、という印象を抱いた。
それが15年後も一緒にいるとか、学生の時点では全く想像出来なかった。

荻子は、いつもニコニコして愛想が良く、いかにも女子らしい雰囲気を醸し出している。一緒にキャンパスを歩いていると自分よりかなり知り合いが多かったように思う。
文化祭か何かの実行委員的なこともしており、まさに「アクティブ」なイメージであった。
いや……自分とは、、

ーー合わんわねぇ〜。

多分合わないであろうその女と、急接近したのは大学3年のとある授業であった。
私も荻子も、別の友人とこの授業を取っており、たまたま一緒になり、4人で受講していた。
ところが、お互いの連れが割と適当な奴で、日に日に授業に来なくなった。
根が真面目な私と荻子は、休むことなく授業に出席。実は私も荻子も浪人を経験しており、授業を休むなんか言語道断。性格は違うけど、価値観がかなり近いんじゃないかと思うようになる。

ーー意外といい奴じゃないか。

というわけで、その後度々荻子の家に泊まったり、荻子の連れと3人で騒ぐことが日常茶飯事となった。

卒業後は私も荻子も、地元で就職した。
荻子とは、週末に県内や隣県の色々なところをドライブするようになっていた。
おそらく、旅の情報誌に載っているようなところは全て行き尽くしたんじゃないかと思う。

社会人になった私は、相当なストレスを溜めていたのか、週末は家に居ることがなかった。
会社から解き放たれた嬉しさと、日頃の悶々としたものが一気に溢れ出る瞬間。それが、

ーー土曜日。

当時は、荻子以外の友人とも交流があったため、色んな友達と色んな所へ行った。

一緒に車に乗って、何時間か旅をすると、大体その人と自分の波長が合うか否かとか、この点が嫌だとか、そういうことが手に取るように分かる。

自分のことは「神棚」に上げて言うが、特に嫌なところは一瞬で分かってしまう。

まず、打ち合わせの段階。

「どこか連れてって〜」な構えで、行き先候補を提示しない奴。アウト。

「車出そうか?」の一言が言えない奴。(もちろん行く方面と居住地によるが)アウト。

そして、車に乗っている段階。

「疲れたら運転変わるよ?」等の呼びかけ、ペットボトルの蓋を開けてあげる等の運転者への気遣いが出来ない奴。アウト。

(特に遠出の際)「ガソリン代として私がランチおごるよ」等の金銭面での気遣いが出来ない奴。アウト。

まだまだ特筆すべき点は多々あるが、自身の器の小ささを露呈してしまうため、この辺でやめておこう。

ーーこんな私と、ドライブしたいですか?

そう、こんな私に残った友人は、

荻子。

彼女は前述のどのアウトに引っかかることはなかった。まさに「一緒にドライブしたい女No.1」。

こんな素敵な気遣いが出来ることに加え、性格は明るい。
荻子とは「内容のない話」を何時間も出来る。これは、ナーバスな私にとって非常に重要であると言える。

あの時期の私にとって、彼女が精神安定剤としての役割を果たしていたことは言うまでもない。

ひたすら、週末を楽しみに生きていた。

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