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ルーマニアの憂鬱な夫婦映画『Monstri.』

オレは結婚している。けれど結婚とはなんだ?夫婦とはなんだ?と聞かれたら

「知らん!」

と答える。だって知らねぇんだもん。よく喧嘩して離婚だ何だという話になるけど、なんだかんだと
「やっぱりこの人と一緒にいないと、ままならんな」となってしまう。明確な理由など知らん。よって結婚も夫婦にそれに意味があるのかなど、オレは理解していないことになるだろう。

さて、ルーマニア映画『Monstri.』は不和の只中にある夫婦の物語。妻の視点、夫の視点、二人の視点と3つのパートに分けて24時間の出来事が描かれる。
本作の脚本は、そこはかとなく純文学的な香りがするが、どこかバタくさい。

駅に降り立った妻は、やる気がなさそうなタクシーの運転手に目をやる。おもむろにスーツケースを先に後部座席に置き、自身は助手席に乗り込む。すると運転手は

「行き先も告げないまま、乗り込んでくるなよ」

「じゃあ、XXXまで」

「そんなところ、いかないよ。」

妻はムッとしながらタクシーを降りる。腹立たしいままに駅前の歩くが突如立ち止まり、先ほどのタクシーまでもどると運転手に告げる

「XXXまで」

「はいよ」

こういう具合である。運転手とのやりとり、夫との電話やチャット、家に帰りたくない理由、禁煙……。とりとめもない描写が続く。そして夫の視点へと移行する。さて、妻がタクシーで徘徊している間、夫は何をしていたのか?男と寝ていたのである。

こちらも相当アンニュイな純文学テイストが満載。なかなか事に及ばない二人。キスを拒む理由、お葬式で出されるケーキを食べる描写、コンドームをつけるつけない論争、ところてん的に速攻で終わる情事。やることやっても夫は不満げだ。

そして二人の視点。ここで突然、バタ臭くアンニュイな雰囲気が消え去る。二人の"ステレオタイプに生きられない苦痛"がジワジワと描かれる。子供もなく、欲しいとも思わず、お互いになにが「変じゃないのか?」と思いつつも口に出さない。

「元気?」

「いつも通り」

会話など、この程度だ。最終的にはお互いに「何故一緒にいるのか?」という疑問をぶつけ合うが、明確な答えは得られない。たぶん、この夫婦はこの先も一緒にいるのだろうということだけはハッキリとわかる。

ルーマニアの一般的な生き方がどういったものかはわからないが、本作はルーマニアのマジョリティの圧力を描いているように見える。小難しいことはオレにはわからん。しかし、この夫婦が何か抑圧されているのはわかる。というもの、この映画、話が進むほどに画面が小さくなってしまう。最後は正方形である。非常に幼稚な手法だが、『Monstri』は巧く活用しているともう。ポスターがピエタだが、妻がこちらをガン見していることから

「これでいいんでしょう?」

と言いたげなのも面白い。淡々と会話が続くだけの110分。台詞から読み取れる情報量は多い。疲れた。

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