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紅茶の思い出

1.紅茶に本気な喫茶店

 人生ではじめて飲んだ本格的な紅茶は、旅先でふらっと入ったオシャレな喫茶店だった。何となくコーヒーの気分ではなかった自分は、紅茶を頼んだ。寒い日だったのでホットで。

 紅茶がポットで出てきた。それに鍋つかみのようなものが被さっている。ポットカバーとか、ティーコージーいうらしい。
(これです↓)

 砂時計が置かれて、それの砂が落ちきったら飲み頃ということらしい。
 何だこれはオシャレすぎる。
 砂時計が落ちたので、カップに紅茶を注ぐのだが、回転式の茶こしがついている。オシャレすぎてどうやって使うのかわからなかったけれど、何とか注ぐ。カップ2杯分くらいの紅茶が入っていたと思う。

 飲んでみると、今まで自分が飲んできた紅茶と全然違う。
 これまで紅茶といえば、紙パックやペットボトルの紅茶だった。リプトンのミルクティーの紙パックは高校生のころよく飲んでいた(あの白い細いストローでね)し、午後の紅茶の茶葉が増量したタイプの底にたまった(もはやこびりついた)成分を溶かしきるまでひたすら振り続けていた。
 そのどちらも、今でも好きでよく飲むのだが、本格的な紅茶を飲んで自分の中の新たな扉が開いた気がした。

 それはこんな感覚に似ている。
 週末のロードショーでCMを挟みながら、観ていたハリウッド映画やアニメ映画を自分は映画だと思って楽しんでいたのだけれど、はじめて映画館で見たときにその大画面と音響のすごさと没入感に驚いた。
 そして、ゴダールの「勝手にしやがれ」やヴェンダースの「パリ、テキサス」をはじめて観たときの、世の中にはこんな映画があるのかという驚き。それに似た体験だった。

 自分が知っている、観たことがある、口にしたことがあると思っているものでも、実はその先の体験があるのだという。
 井の中の蛙大海を知らずをつきつけられている気分。
 おお、世界には自分がまだまだ知らん素晴らしいもんがいっぱいあるんやなという感動。
 でも、そのときには「この店レベルたけえ。」で終わっていた。

2.本格紅茶をもらう、買う

 それからしばらくして、自分の中での紅茶のセカンドインパクトが起きる。ルピシアの紅茶をもらったのである。

 可愛らしい丸い缶に入ったフレーバーティーとダージリンのセット。オシャレなスプーンがついていて、それで一杯分の茶葉をはかるらしい。

 茶こし付きのガラスポッドに入れて、なべつかみを被せようとしたがなべつかみだったので入らなかった(そりゃ手のサイズだから)。
 砂時計もないので、キッチンタイマーで。

 あのときのオシャレの店とは勝手が違うけど、家なので仕方ない。
 ガラスポッドがあるだけでも良しとしよう。

 実際、飲んでみると、普段ドリンクバーで飲んでいる紙に入ったお守りみたいなティーバッグのとは完全に違う味だった。何よりコロコロと小っちゃかった茶葉がめちゃくちゃ開いてて、元の姿に戻ろうとしていた。

 紅茶ってこんな感じなんや、うっま。
 かくして、紅茶のおいしさを知った自分は、ルピシアのお店に行き、お姉さんに試飲をもらい、ルピシアの福袋の存在を教えてもらう。
 もはや段ボールに入った福箱なのだが、たくさんの種類の茶葉が入っている。茶葉か、ティーバッグかを選べる。安くいっぱい買えるし、この茶葉が欲しいとかはないので、福袋がちょうどいい。

 最初の年はノンフレーバーのセットを買い、一年かけてチビチビと飲む。結構な量と種類が入っているのだ。紅茶だけでなく、ウーロン茶や緑茶も入っていて、紅茶なのに緑茶みたいな味のがあったり、産地ごとで全然味が違ったりして、すばらしいお茶体験だった。
 次の年にはフレーバーのセットを買った。

3.だけどやっぱり店が良い、フレーバーティー

 紅茶専門店で、評価のよさげな店を見つけたので、お出かけのついでに立ち寄ることにした。それが、ムレスナティーのお店だった。

 最初に普通に紅茶を飲むよりはちょっと高めの値段を払えば、あとは飲み放題。大きなポットを持ったお姉さんがお茶を注ぎに来てくれる。
 毎回フレーバーの名前を教えてくれるので、自分が好きなのは何のフレーバーなのか、だんだんわかってくる。フレーバーがついているのだけど、味はずっと紅茶で無糖感が残っているのが不思議だ。

 メニューには季節のフルーツが入った紅茶も頼める。イチゴの時に飲んだことがあるが、フレッシュなイチゴと、フレーバーティーの組み合わせはかなり最高だった。
 もちろんパンケーキなどの甘いものもある。スイーツと一緒に食べると紅茶の良さがさらに際立つ。お茶は食べ物との相性が良い。

ここのロイヤルミルクティーやチャイはめちゃくちゃ美味しい。今まで飲んだことないくらい美味しいのだけど、めちゃくちゃ高い(特にチャイ)。

 紅茶を飲みながらおしゃべりするもよし、ゆっくり本を読んだりするのもよしといった感じだ。

 ふつうのフレーバーティーなら、マイボトルを持っていったら、給茶してもらえる。このシステムを知ってからは、そっちの方が(財布にやさしいので)使用頻度が高くなった。

4.結局ペットボトルが楽でいい

 紅茶にフレーバーがついている良さを知ってから、新たな世界が広がった。いろいろな味を飲んだけれど、最終的に王道で定番のアールグレイが一番好きかもということに気づいた。

 でも、毎日紅茶を淹れるのは、ちょっと面倒だ。というか、平日は時間的にも心の余裕的にも厳しい。
 そして行き着いたのがコンビニのプライベートブランドの紅茶。百円前後で買えるしおいしい。何よりコスパが良い。

 ファミマはアフタヌーンティー監修だし、セブンイレブンがキリン(午後の紅茶)で、ローソンが伊藤園だから、どこのアールグレイティーも安定感がある。紅茶を淹れるのは時間のある休日でないと厳しいから、とても助かる。

 無糖紅茶のペットボトルも意外とレベルが高くて、午後の紅茶の無糖は言わずもがな。午後の紅茶アールグレイ(期間限定)の無糖は、かなりドストライク。
 アサヒ飲料から出てる「和紅茶」も、ルピシアでいろんな茶葉の味を知ってから飲むと、その良さがわかるようになった気がする。
 ポッカサッポロから出てる「かごしま知覧紅茶」も、茶葉の甘みをほんのり感じながらごくごく飲める無糖の紅茶だ。

 あとロイヤルホストのドリンクバーにあるパラダイスティーは、飲んだだけで気分を南国に飛ばしてくれる不思議な紅茶だ。調べてみるとUCCの製品らしい。

 紅茶のチェーン店が少ないということが、最近話題になっていたのだけれど、こうやって思い返してみるとルピシアもムレスナティーもある。コーヒーほどの数はない。

 最終自分は、ペットボトルでもロイヤルホストのドリンクバーでも満足できてしまうあたり、紅茶好きのレベルとしてはまだまだなのかもしれないけれど、これからも細々と紅茶を楽しんでいきたい。
(あと、スタバのTEAVANAにも行ってみたい。)

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