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滑舌とわたし。

コンビニで「ピザまんひとつお願いします」と頼んだのに、にっこり笑顔で「肉まんですね!ありがとうございます!」と元気よく返される程度には滑舌に問題がある。なんか流れで肉まんをにっこり笑顔で受け取り、コンビニを出た。ピ(Pi)ザ(Za)とに(Ni)く(Ku)……「ピ」と「に」はともかく「ザ」と「く」は母音からして違うのに。何故だ。見上げた空はどんより曇っていた。泣いてなどいない。

基本的に気力体力ともに充実していないせいか、何がなんでもピザまんを絶対に食べる絶対に絶対に食べる絶対に負けられない戦いがここにはあるとは思えなかったし、まして「ハア?ピザまん言いましたけど?ピ・ザ・ま・ん!耳の穴かっぽじってよおく聞いてください!いいですかピ・ザ・ま・んですよピ・ザ・ま・ん!」とピザまんを連呼して抗議するエネルギーがそもそもない。一日中寝て過ごさざるを得ないくらい疲れ果ててしまう。間違いない。何より店のひとたちに「ピザまんBBAがまた来てて草www」とか今後バックヤードで言われてしまう可能性も否定できない。ピザまんBBA呼ばわりはさすがに耐えられない。さすがに。ピザまんも肉まんも同じ「まん」のくくりだし、旨いしあったかいし大差ないと思うことでことなきを得た。「29番ですね!」とか言われて煙草を探しはじめられた日には目も当てられない。「まん」だけでも伝わったのだからよしとしようと思うことにしたのだった。

言ったことが言ったとおりに相手に伝わらないのはそれなりに悲しいが、しかししばしば滑舌の悪さによってやらかしている。職場で商品の型式を電話で伝えるとき、「C」と「G」とか「S」と「F」とか「M」と「N」とか「T」と「P」と「E」とか混同されるのは日常茶飯事で、たとえば「TGC」と言っているつもりがのっけから「P?Pですか?」と聞き返される始末である。そこで「タイガースのT、ジャイアンツのG、カープのCです」と言うことにしている。「イーグルスのE、マリナーズのMです」とか「ファイターズのF、スワローズのSです」とか言って受話器を置くたび、別にイーグルのE、マリンのM、ファイトのF、スワローのSでよかったんじゃね?とは思う。おかげで「なみさんは野球が好きなんですね!」ギャハハ!と爆笑されたりもするのだが、野球縛りにしていたほうが統一感があってなんていうかこう、美しいような気がしないでもない。今さら「トウカイテイオーのT」とか職場で言うのは憚られるし、なんなら「東海のT」でいい。

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