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いい質問、ありがとう。

 例えばある生徒が授業中に「先生、なぜ…なんですか」と質問をすると、クラスの雰囲気はどうなるだろう。その質問をきっかけに盛り上がる、と思われる方はラッキーな方。今までそんなクラスを経験してきたのでしょう。でも私が知る限りでは「今はその時間じゃない」とか「後で聞く(ずっと聞かれない)」と言われて流されることが多かった。また、先生が言う前にクラスの子が「そんなん今関係ないやろ」と言ったり、あからさまにイライラし出したり。そんな空気に覆われたクラスをたくさん見てきた。
 授業に関連した質問ならまだしも、全く授業に関係なさそうに感じる質問なら尚のこと大変な排除を受ける。

 その中でよく聞くのが「授業の邪魔」や、「この時間がもったいない」という言葉。驚くのは、子どもたちがそれを言うことだ。
何を「邪魔」だと思い、何を根拠に「時間がもったいない」と思うのか。それは少なからずその子がそれまで周りの大人たちに言われてきた言葉ではなかろうか。

 私は自分の教室で自分の好きな指導をしようと決めた時、英語教室なので欧米的な授業を取り入れようと思った。実際私が受けてきた訳ではないけれど、留学していた方などに話を聴いて一番好きだった授業形式を取り入れた。

「先生は準備をするけれど、それに沿うだけの授業ではなく、時間を生徒の為に使う授業」

 私が聴いて納得した授業の話は以下の通りだ。
先生は日本の先生同様、その日に進みたい部分の準備をしてくる。違うのは、それを半分終われたらOKという感覚で授業をしている、ということ。後の半分以上は何かというと、生徒から出てくる質問に答えたり広げたり皆で話したりする時間だという。なんて素晴らしいんだ。私も受けたことのないその授業を、実際やってみようと思った。

 幸い私の目指すスピーキング重視の英語教室の場合、とにかく「話をさせる」ことがメイン。子どもたちにまず日本語でたくさん話す機会を作る。
それを聴くこともまた大切なこと。その話でその子が伝えたいことを掴む練習。教師は何かを教え込むのではなく、その会話の中で、同じ生徒が延々話して他の生徒が話す時間がなくなったりしないようにさりげなく会話を回したり、また言葉が出ない生徒を励ましそっとヒントを与えるなどの、細やかなファシリテーターであることが必要。

 時々全然違う話をする生徒や、常に時間を気にする生徒、トイレに頻繁に行く生徒がいても、そのまま笑顔で対応。「それもいい」と皆に伝えるのが大事。確かに最初の一ヶ月二ヶ月は、きっと混沌として見えるだろう。それが、だんだん子どもたちの中で「譲る」そして「待つ」姿勢が定着してくると、グッと落ち着いてリラックスして学べる雰囲気が出来る。

 ○○日までにこれを仕上げて、人に見栄え良く、形だけでもしっかり…という大人の都合に子どもたちが巻き込まれて、ハリボテの世界に生きること。また、時間の本当の使い方を学ばずに「時間がもったいない」と人に言い、学びの本当の意味を知らずに数字ばかりを気にすること。
 それが価値観のほとんどを占める教育が、子どもたちにとって本当に必要なものなのか、それを立ち止まり見直すタイミングは今ではなかろうか。

 私の授業では、どんな質問もこう返す。
"Thank you.  That's a good question."(ありがとう。いい質問だね。)
そしてクラスに呼びかける
"What do YOU think?"(「あなた」は、どう思う?)
その質問は、受身だった子どもたちが、主体性を持つきっかけ。
疑問を持つことは素晴らしい。主体性を持って取り組むことは、楽しい。

  私たちがすべきことは、子どもたちに「安心感」を与えること。君は君のままで良い、と思う環境を作ること。それさえ出来れば、子どもたちは自分で力を伸ばしていく。
 何の力が伸びるかって、それは「本物の生きる力」。

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