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学振若手研究者海外挑戦プログラムで韓国へ調査に行った話②:採用までの経緯&韓国調査のための研究助成

日本学術振興会の「若手研究者海外挑戦プログラム」を利用して、韓国・ソウルへ研究留学に行きました。過去の支援先を見ても、私以外に韓国滞在の例はほとんどなく、政治学でアジア方面に研究留学される方も少ないようです。そこで本記事では私が助成に申請したのち採用に至った経緯をご紹介しつつ、これから大学院生のうちに韓国に調査する人のための助成についても書いています。(連載:第2回)


申請〜採用内定

Day365〜いくつかの助成に申請する

前回の記事でお伝えしたとおり、私はコロナ禍を経て、海外経験、現地調査の必要性を強く認識し、渡航を決意するに至りました。

しかし海外渡航にはまとまったお金が必要です。
私は当時、日本学生支援機構の奨学金(=借金)はあったものの、学振DCをはじめとする博士後期課程を対象とした助成にはことごとく落ちており、韓国で数ヶ月〜1年の中長期もの間、滞在可能な資金はありませんでした。

そもそも大学院生が海外で調査・研究をする際に利用できる研究助成はそれほど多くありません。民間も含めると博士後期課程の大学院生向けの研究助成はありますが、「国内居住」や「他の助成との重複不可」などの条件がある場合が少なくなく、海外渡航をするうえで、使い勝手がいい研究助成はあまりないように思います

特に海外渡航のためには単に調査・研究にかかる費用(書籍代やコピー代、謝礼など)だけでなく、現地での滞在費(食費・家賃などを含む)、渡航費、保険料など、現地で生活するための資金が必要ですが、これらを想定した助成はそれほど多くありません。

(海外派遣を目的とした助成の少ない例として、村田学術振興財団の「海外派遣援助」があります)

一方、学振の「若手研究者海外挑戦プログラム」は「滞在費」という形で一括でまとまったお金が振り込まれ、使途・他の助成との重複の制限がありません。前回の記事にも書いたように、以上の点はこのプログラムの大きな強みだと思います。

韓国渡航のためにもお金が必要…ということで、私も「若手研究者海外挑戦プログラム」だけでなく、いくつかの研究助成にチャレンジしました。

【参考】韓国調査のための研究助成

韓国に渡航する場合には、他にも大学院生が申請可能な研究助成があります。
これから大学院生の間に韓国に調査に行くことを考えている方のために、以下では2つの代表的な助成をご紹介しながら、私の経験を書きたいと思います。

1つ目に、日韓文化交流基金が実施している「派遣フェローシップ」があります。日額計算で支給される支援金(滞在費)と渡航費が支援対象です。支援額は職位・研究歴、業績等によって決定され、期間は最大180日間です。

ただ日韓文化交流基金のフェローシップは他の助成との「重複不可」が厳格に定められています。学振DCはもちろん、科研費、当該研究課題とは異なる研究への助成、そしてなんとJASSOなどの貸与型の奨学金(!)との重複も不可です。

私はその後の滞在中、日韓文化交流基金のフェローシップに別途申請し、採用内定となりましたが、以上の重複不可のために辞退せざるを得ませんでした。

正直に言えば、日韓文化交流基金のフェローシップは、多くの博士後期課程の大学院生が貸与型奨学金や学振DC、JST次世代などの資金援助を受けているという現状を踏まえていない助成だと思います。

2つ目に、韓国国際交流財団(Korea Foundation)が実施している「KF Fellowship for Field Research」も申請可能です。助成額も韓国に滞在するには十分な金額(博士課程の院生の場合、月230万ウォン×最大6ヶ月)がウォンで振りこまれ、基本的に使途の制限、日本国内の他助成との重複の制限もありません(ただし韓国国内の他助成とは重複不可)。滞在費だけでなく、渡航費と入国支援の一時金(博士課程の院生の場合、50万ウォン)が支援されます。

ただこちらは支援の充実さもあってか、提出しなければならない書類の量がかなり多く、その中には「所属する長の推薦書(英語)」など、人によっては調達の難易度が高い書類を要求されます。

さらに韓国の研究助成であるため、当然、研究計画書などの書類を韓国語または英語で作成しなければならず、国内の助成に比べると申請にかかる労力がかなり大きいことがデメリットです。また募集が年に1回しかないため、計画的な申請が求められます。

私の場合、渡航を決断した時点で申請時期(だいたい8月末締切)を過ぎてしまったこともあり、他の助成を考えるしかありませんでした。

そこで結局、私は学振海外挑戦プログラムと日韓文化交流基金に応募しました。

ですが、この時、日韓文化交流基金は不採用となりました。望みは学振海外挑戦プログラムだけとなりました。

Day240 1度目の申請結果が返ってくる

学振海外挑戦プログラムは年に2回募集があります。
1回目は夏ごろの募集で、翌年度4月から渡航できます。2回目は春ごろの募集でその年の夏〜秋から渡航できます。
(詳しいスケジュールは下記の学振のウェブサイトを確認してください)

私は当初、2021年4月からの渡航を目指して、2020年8月の第1回に申請しました。
申請書の内容は学振DCを圧縮してまとめたようなものでした。2024年現在の申請書はより学振の申請書に近づいているようなので、DCに出したことのある方は書きやすいと思います。

当時、渡航の計画を立てながら、一方で、資金獲得の不安を抱えて、自宅で過ごしていたことを覚えています。
(この間、語学鍛錬に必死に取り組んでいました。留学前、留学中の語学の勉強については別記事で書こうと思います)

そして2020年12月末、その年の8月に申請した第1回の結果が返ってきました。
結果は「補欠」というなんとも微妙な結果でした。

Day180 「補欠」のまま渡航延期〜第2回の申請へ

このまま「補欠」では当初予定の4月どころか、年度内の渡航も怪しくなる…

そう思った私は第2回の応募に申請することにしました。
第2回の申請は3-4月ごろにあります。つまり第1回の結果が出てから3ヶ月後には次の申請に出すことができます。

学振DCの申請時期とやや被っていましたが、第1回の申請書を修正して、応募しました。同じ年度のプログラムのため、申請書の様式は変わっておらず、すぐに修正できたと記憶しています。

このように、海外挑戦プログラムは年に2回のチャンスがあるだけでなく、年度内の申請書の様式は変わらないため、指導教員に評価書さえ書いてもらえればそれほど労力をかけずに採択率の高い助成に年に2回応募できることも魅力だと言えます。

Day47 採用内定

1度目の申請は「補欠」だったので辞退者が出れば採用になる可能性もありました。

ですが当時、コロナ禍の措置で渡航の延期が可能だったこともあり、辞退者はなかなか出ず、採用の連絡はないまま、ただ時間が過ぎ去ってしまいました。

資金の目処がつかないと計画を立てていても渡航できない、というのはなかなか辛いものでした。

2021月7月8日。2度目の申請の採否通知のメールが届きました

何かのデータをいじっている最中にデスクトップ通知がきてあたふたしたのを覚えています。

というのも(1回目の申請を含め)これまで学振には散々心を折られてきましたし、第2回で採択されなければ予算と在籍期間の関係上、韓国行きはキャンセルの予定だったのです。めちゃくちゃ緊張して電子申請のページを開きました。

結果、はじめて見る【採用内定】の文字に思わずひとりでガッツポーズしました。すぐさま指導教員にメールしました。

ただ、メールした瞬間、我に帰りました。

「あ、やばい。渡航1ヶ月後やん」

申請した渡航期間は2021年8月〜だったのです。

この時から渡航に向けた準備がようやく加速することになります。
そのまま渡航に一直線…だと思ったのですが、この後、私は思わぬところで躓くことになりました。

長くなってしまったので、この続きは次回、書きたいと思います。

次回の更新は2/15の予定です。

*画像は韓国渡航の際に持っていった『フィールドワーカーズ・ハンドブック』(日本文化人類学会監修、世界思想社、2011年)です。隔離生活のお供でした。。隔離生活についても今後書く予定です(2021年9月1日撮影)

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