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超訳『竹取物語』三 五つの難題ーー仏の御石の鉢

※この訳は超訳です。あえて原文通りの表現よりも俗っぽくしています。また、所々省略やアレンジを加えております。
なお、超訳にあたって、室伏信助氏の『新版 竹取物語 現代語訳付き』(角川ソフィア文庫)を参考にさせて頂きました。室伏さんの訳に甘え、緻密さと筆力に脱帽しました。

三 五つの難題ーー仏の御石の鉢

 日が暮れるころ、また五人はいつものように集まった。笛吹いたり、歌うたったり、楽譜音読したり、口笛拭いたり、扇で拍子とったりしてるところに翁が出てきて、
「いやー、恐縮です。こんなむさ苦しいところに、時間とか色々勿体なくも、長い年月お構いなしにお出でくださいました。ぶぶ漬け食いなはれ」いやはや最後のは冗談とか抜かしつつ、「かぐや姫にですね、『わしの命長ないから、貴公子たちによー考えてお仕えせえ』言うたんですよ。ほしたら『そらそうです。どのお方も優劣付けれんくて、よく考えて愛情で測ります。その測りの結果で決めましょう、いざ勝負』言うんですよ。ええことでっしゃろ? なんでかって、勝負にしたら、皆さんのなかで恨みとか残らないでっしゃろ?」と言う。
「おいしゃあ!」と五人も言うので、翁、一度家に戻って、「話進んだで」とかぐや姫に言う。
 ここで、かぐや姫より、五人に注文が入る。
「石作皇子は、仏の御石の鉢というものを見つけて、わたしにプレゼントして下さい」
「唐持皇子は、東の海にあるという、蓬莱という山の、根が銀色、茎が金色、実が白い珠の木があるので、一枝折って持ってきて下さい」
「もう一人には、唐土(もろこし・中国)にある火鼠の皮衣」
「大伴大納言には、竜の首にある五色に光る珠」
「石上中納言には、燕の持ってる子安貝」
 とのこと。
「いやこれ無理ちゃいますのん?」と翁はツッコむ。「日本にあるもんでもなさそうやし、こないムズいこと、わし、どない言うたらええのん?」
「あら、難しいことではないと思いますが。愛って、ムズいで諦められるものではないはずですが」
「しゃーなしやでしゃーなし」と翁、五人に顛末を話し、「こう言いよるんですわ。すんまへんが、娘の言う通りしたって下さい」
 これにはさすがに五人も、「プリーズドゥノットエンターくらい軽めに言うこともできんのかいな」とうんざりして、みな帰った。
 が、やっぱりあのかぐや姫という女をモノにしなきゃ生きてけそうにないっぽいので、天竺(てんじく・インド)から持ってきたろかいな、とか思索し、石作皇子、ぴーんときた。天竺に俺コネあるやん。そこに二つとない一品モノを手に入れたろかいな、と決断。『いよいよ今日、天竺へ取ってきますね。待っててね、かぐやちゃん』と知らせておいて、三年ほど経て、天竺行く言いつつぶっちゃけ奈良、山寺で真っ黒の鉢持ってきて、錦の袋に入れて、造花の枝とかつけたりして、かぐや姫に持ってって、どうよ、と見せた。
 かぐや姫も、え? と思って見ると、はちの中に手紙がある。広げて見ると、
『海を超え、山を超え、めっさ長い道のりで辛苦辛労四苦八苦して泣きましたよ。石の鉢の”ち“ではないけど、血の涙まで流れましたよ』
 そんなんどうでもええと言わんばかりに、光沢を探すかぐや姫。しかし、いくら見ても蛍の光ほどの光すらない。
『仏の御石の鉢は、紺青の光がさすと聞いていたのですが。この鉢もせめて露ほどの光だけでもあれば良かったんですが、黒いです。小暗いと言われる小倉山で何をお求めになりましたの?』
 と返して、鉢も返した。石作皇子、鉢ぶっ捨てて、返歌した。
『いやー、白山のように光り輝くあなたにであって、この鉢の光、消えちゃったのかなー? そう思うてがっかりして鉢捨ててました。けど、鉢ならぬ恥をすててでも、あなたさま、どうぞよろしく』
 こんな歌詠んで送ってきた。かぐや姫はガン無視。まるきり耳にも入れない様子で、皇子、ぎゃーぎゃーわめいたけど、やがて帰った。
 鉢を捨ててからまだ言いよる、この話が元で、厚かましいことを「はぢを捨つ」と言うのである。

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