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自転車はじめて1年でPBPを完走するまで #06 〜PBPまでのブルベ編・秋〜

BRM1119近畿200km河内長野 紅葉狩り

10月22日の600kmブルベを完走して2022年度SRを達成したあと、保険としてエントリーしていた翌週の「BRM1029神奈川400km 追い風」のDNS連絡を入れます。
3週連続で400km、300km、600kmとブルベを走った身体のダメージは抜けておらず、もう一度400kmを走る気力も体力も残されていません。

久々にまったりとした週末を過ごしながら、よさげな11月の200kmブルベを見つけてエントリー。
ブルベのない週末は紅葉に染まりはじめた六甲山や十三峠、信貴山を自転車で登ったり、バイクで曽爾高原、青山高原を巡るツーリングに出かけたり秋の気持ちいい気候を満喫しますが、「楽しい」だけではどこか満足ができず、はやくブルベを走りたいなと思い始めます。

そんなこんなで「BRM1119近畿200km河内長野 紅葉狩り」。
大阪平野の南東、金剛山地の裾野にある河内長野をスタートし、奈良、三重、和歌山を通り抜けながら、秋の紅葉が有名な室生寺や香落渓を回って帰ってくる、獲得標高約2700mほどの山岳っぽい雰囲気のブルベの始まりです。

スタート地点、朝5時過ぎに河内長野に降り立つと、なんと気温は5℃。
日中の予想最高気温は25℃ほどですが、吐く息は真っ白で、耐えがたい冷え込みです。

秋用のインナーに半袖ジャージというもはや季節外れとも思える格好で歯をカチカチと鳴らしながら、ジャージの下にカイロを貼り付けたインナーウォーマーを着込み、ジャージの上からウィンドブレーカーを着てなんとか気温の低さを誤魔化しつつ集合場所に向かいます。

スタートしてすぐに金剛山への登り。
自転車で山を登っていると身体がポカポカしてきます。というか汗でビチョビチョです。
いったんウインドブレーカーを脱ぎ、よいしょよいしょと和歌山との県境へ向けて登っていきます。
金剛トンネルを抜け奈良県側に下っていくと、目の前あたり一面に雲海が広がり、幻想的な景色を見ながらダウンヒルを楽しみます。めちゃきれい。

そのあとは宇陀の方へ向けて淡々と登っていき、いつも伊勢に向かう時に使う国道369号へ合流。
また少し登った先のトンネルと次のトンネルの間で横道に逸れて県道28号に入り、ここからしばらくは下り基調。
途中で片道車線規制の工事用信号があったりしましたが、あっという間に室生寺に到着。
ササっと写真を撮って先に進みます。

室生川の渓流沿いの道はとても快適で景色も良く、楽しいサイクリングです。
しばらく進んで国道165号に入ります。
ここは先日バイクで青山高原に行く時に通った道で、それなりに車も通るので気をつけながら名張に向けてガンガン踏んでいきます。

名張のコンビニPCに到着し、補給食と軽食を買い、休憩もそこそこに再出発します。

少し進むとすぐに青蓮寺湖が見えてきます。
橋を渡りながら、とてもきれいな景色を目に焼きつつ、ペダルを漕いで香落渓方面へ。
しばらく行くと青蓮寺川沿いの峡谷、紅葉に染まる山肌が、視界いっぱいに広がります。

あまりに素晴らしい景色に、思わず声が出ます。
曽爾村に向かって標高を少しずつ上げていきますが、景色に没頭しているためかほとんど登っている感覚がありません。

まったく同じルートの逆向きを先日バイクで走ったばかりですが、自転車で走ったこの時の方が100倍景色が綺麗に感じました。
秋の青蓮寺湖からの香落渓、マジでサイコーなので行ったことない人はぜひ。

そんなこんなで、後半はかなりタレたものの10時間半でゴール、再び河内長野へ。
わりと登るコースでグロス19km/h以上、少しずつですが成長を感じました。

2023年度最初のブルベは、とにかく景色を楽しんだ200km山岳ライドでした。

大阪→東京キャノボ試走(DNF)

ブルベではありませんが、さわりだけ。

秋も終わりを告げ本格的に冬を感じさせる気候となっていく中、12月中旬に東京で友人が主催するクラブイベントがあり、せっかくなので自転車で行くことに。
私自身にグロス21km/h以上で24時間走り続ける走力がないことは明らかなので、現実的には30時間ぐらいを目標にし、今の自分と、実際に24時間切りを達成するキャノンボーラーとの間にどれだけの距離があるかを測るべく、520km(伊賀〜246ルート)の道のりにトライします。

結果は寒さと疲労のダブルパンチに加え、315km地点でさわやかの誘惑に負けて完全に戦意喪失(グロス20km/hほど)。
アツアツのさわやかハンバーグを食べ快活クラブで夜を明かし、再び走り出すものの御殿場あたりで雨が降ってきたのでコースから離脱。
電車で都内まで行き、夜は普通に友人のイベントを楽しみました。

キャノボ、一生達成できる気がしない。

BRM101近畿1000km姫路 Road to Paris(DNF)

年の瀬も近づくころ、1月1日元旦開催のPBP対策を銘打った1000kmブルベが発表されたため、もともと予定していた12月31日大晦日の夜の伊勢発400kmブルベを悩みつつもキャンセルし、初の1000kmブルベにエントリー。

コースは兵庫姫路を出発し瀬戸内海沿いのアップダウンを走り続けて岡山から広島へ。
しまなみ海道で四国に渡り、愛媛松山を経由してひたすら西海岸沿いのアップダウンに再び耐えて高茂岬で折り返し。ここまで500km。
そこから折り返して同じルートを辿って姫路まで戻ってくる、獲得標高12000mほどの行ってこいルートです。

コース自体はPBPのアップダウンを想定した納得のプロファイル。
ただしこれを真冬の元旦に走るということに一種の狂気を感じます。

冬の野宿は凍死の危険があると思い愛媛松山、愛媛八幡浜(復路)、岡山西大寺で3泊分のホテルを予約して出走しますが、永遠に続くアップダウン、まったくスピードが出ない強風の向かい風、夜の海の凍てつく寒さの三重苦で完全に心が折れ、2日目の朝方、愛媛松山のホテルのベッドの中からリタイア宣言。
元旦の夜中にしまなみ海道を走ってる人なんて誰もいませんでした。

元旦の朝、大阪からJRの新快速に飛び乗り、スタート地点の姫路に向かいます。
隙間風が寒いなぁと思いながら周りを見渡しますが、車内にはほとんど人がいません。元旦ですもの。

9時過ぎに姫路駅に到着し、自転車を組み立ててスタート地点に向かいます。
スタート地点には16人ほどのランドヌール。
元旦から1000km走ろうとするちょっと変わった人たちです。

出走前のブリーフィングで主催の方から「こんなコース走りきれなくてもPBP走りきれます」とのお言葉があり、実際に自分はリタイアしましたがPBPは完走できました。
PBPを走っていてしんどい時があっても、「正月の姫路1000よりぜんぜんマシ」と思えたので、このブルベのおかげでPBPを完走できたと言っても過言ではなく、今となっては出走しておいて本当によかったなと思います。

スタートしてほどなく海沿いのアップダウンが始まります。
ひたすら西に向かい岡山に入りますが、想像を絶する向かい風。
風を遮るもののない、見渡す限り田んぼと畑しか見えない大都会岡山の道を、ウンザリするほど遅いスピードしか出ないなか、頑張ってペダルを回し続けます。
日が沈みかけあたりが薄暗くなってきたころ、笠岡から広島にイン。
河口に掛かるいくつかのライトアップされた橋を渡りながら西に向かっていき、突然の真っ暗闇の山の中へ。なんでぇ。

誰もいない元旦の山道を登って下ってしばらくすると広島県尾道市、しまなみ海道のスタート地点です。

この時点でグロス19.5km/hほど。
各夜に取った宿のチェックイン時間に間に合うためにはおおよそ各日グロス19〜20km/hほどで走る必要があり、私にとってはかなりのハイペース。
計画に無理があったことを薄々と感じ始めますが、田舎の過疎地に24時間チェックイン可能な宿などなく、ましてやネットカフェなんていうオアシスなんてあるはずもないため、ひたすらがむしゃらに、休憩時間を極力取らずにペダルを踏んで進むしか選択肢はありません。

凍えながら真っ暗な夜のしまなみ海道を走り続けます。
自転車どころか車もほとんど通らず、ひとっこ一人いやしません。
3ヶ月前に友人たちと楽しくしまなみ海道をサイクリングしてた時の光景がまるで嘘のようです。

あまりの寒さに冬用のグローブを脱ぐのが嫌になり、補給をおろそかにしながら走り続けているため徐々に意識が朦朧としてきます。
尾道大橋、因島大橋、生口橋、多々羅大橋、大三島橋、伯方・大島大橋を渡り、大島のまんなかあたりでついに限界を感じ、イートインのあるコンビニに逃げ込みます。

(完全に心が折れた人のツイート)

大盛りのナポリタンをゆっくり、ゆっくりと咀嚼しながら、LINEでママにリタイアするだろう旨を連絡します。
時刻は深夜0時。リタイアするにしても少なくとも1日目の宿まで行って少し休む必要を感じますが、芯まで冷え切った身体で再スタートする気力もなく、1時間ほどコンビニでグダグダと時間を潰します。

食後に飲んだ風邪薬が効いてきたのか、だいぶ精神的に持ち直してきたため深夜1時前に再スタート。
コンビニから出て走り出すものの、あまりの寒さに歯の根が合わず、全身の震えが止まりません。

最後の来島海峡大橋を渡り、ついに四国に上陸。
再び街灯もない真っ暗な海沿いを走り続け、朝方4時前、315km地点の愛媛松山のホテルに到着。

フラフラの身体でチェックインを済まし、部屋まで自転車を持ち込めるとのことでありがたく自転車とともに部屋へ。
お風呂を沸かしながらライトやサイコンなどを充電器に繋げ、芯まで凍えきった肉体を熱いお湯に沈めると、思わず情けない声が出ます。

もし朝7時に起きれたら明日も走ろう…と思いながらベッドに入り、朝7時に一度目を覚ますものの身体を起き上げることができず、再び目を瞑って開いたら朝の9時。
どう頑張っても2日目の宿のチェックイン時刻に間に合わないね…と自分に言い聞かせてDNF連絡をします。
よしんば間に合ったとしても3日目の宿のチェックイン時間に間に合う自信が一切なく、それ以上にもう一度あの極寒の夜を過ごすことを全身が拒否していました。

退路は東予港からのフェリーにしようと決めて電話で予約をしたあと、二度寝してチェックアウトギリギリまで惰眠を貪ります。

松山から東予港までは内陸の桜三里を通るルートもあるのですが、せっかく天気もいいので海沿いをぐるっと回って今治経由で行くことに。
昼前にホテルを出発し、前夜に通った道をひたすら逆向きに走っていきます。
海沿いに出ると、うわぁ!!最高の景色だ!リタイアしてよかった〜!
あまりにも綺麗な冬の海の景色にテンションが上がりながらしばらく走ったあと、海の見える道の駅でちょっと休憩。大量のハーレーが停まっておる。

よくわからん屋台でエルヴィスサンドなるものを注文し、日の当たるベンチで食べているとハーレーのおじさん(おじいちゃん?)に話しかけられ、乗ってるハーレーが如何に国内ではレアで如何にデカくて重いかを語るのを聞き流しながら、クセになりそうな味のサンドを完食。
ゆるポタだとちゃんと食事の味がわかります。
また海沿いを走り続け、今治の手前で少し道に迷ったものの、夕方ごろ、無事に今治駅前に到着。

駅に隣接する定食屋で鯛めし御膳を食べます。
正月から店が開いててありがてぇ。

100均とユニクロでフェリーの中で使うタオルやパジャマを買い、ちょうど日が沈む頃に東予港に到着。自転車を輪行袋に入れてフェリーに乗り込みます。

3ヶ月前に同じオレンジフェリーに友人と乗った際は、極限まで調子に乗って一番高いロイヤルスイートの部屋に泊まりましたが、今日は一番安いシングルルーム。
狭い部屋に自転車を入れ、残った居住スペースはベッドの上のみ。
それでも屋根があって暖かいベッドで眠れるだけで、そこはもう天国です。

ブルベを走ると、幸せのハードルが地面スレスレまで下がるので、日常で幸せを感じづらい人にはちょうどいいかもしれません。

翌日、大阪の自宅に戻り、家族でまったりとお正月を過ごします。
ゆっくりとお風呂に浸かり、あったかい布団で眠り、みんなでおせちを囲んで、ソファでゴロゴロと寝転がりながら正月特番を見ていてふと、リタイアしていなかったらまだ自転車で走り続けていたということに気づき、ゾッとします。

正直、つらすぎて二度と走りたくないと思う一方で、初めてかつ現時点までで唯一DNFしたブルベということもあり、ずっと悔しさを心に抱えてるので、いつか雪辱を果たしたいなと思っています。

次回、冬編。
続く。

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