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自転車はじめて1年でPBPを完走するまで #01 〜PBPサマリー編〜

はじめに

こんにちは。はじめまして。
先日フランスに行ってきまして、4年に1度開催され、ブルベ(自転車ロングライドイベント)の最高峰と呼ばれるPBP(Paris-Brest-Paris)をなんとか完走し、先人の皆様方が残してくれた情報のありがたさを噛み締めると共に、「自分が受け取ったものを誰かに還元したい」という感情を強く持ち、誰かの参考になれば嬉しいなという思いで自分が経験してきたことを文字に起こそうと思い立った次第です。

ただ、タイトルに釣られた人には大変申し訳ないのですが、これから記す内容を読んだら1年でPBPを完走できるようになる、なんていう大した内容のものではないです。間違いなく。
結果として自転車に乗り始めて1年と1ヶ月でPBPを完走することができましたが、これは本当に自分を取り巻く周りの環境と、運が良かったからだと思っています。
初心者の方で、本当の本当にPBPを完走したいんだ、という強い思いを持っている方はばるさん(@barubaru24)のブログ(https://cannonball24.com/)を隅から隅まで熟読することをオススメします。
私はばるさんのブログがなければPBP完走どころかSRの取得すらも怪しかったと思います。それぐらい初心者の方にとってのヒントが詰まっています。

なので、私がこれから記す文章は、あくまでも「あ〜〜、こういう人もいるんだね〜〜」ぐらいのN分の1のサンプルとして、誰かの参考程度のものにでもなれば幸いです。

筆者スペック(2023年8月時点)

  • 年齢:33歳

  • 身長:168cm

  • 体重:63.1kg

  • FTP:191W

  • PWR:3.03W/kg

PBPサマリー

自転車を乗り始めてからブルベに参加し、SRを取得してPBPを完走するまでの1年間の流れをだらだらと書いていこうと思ったのですが、そうするとすべてを書き終わるまでに文章を書くことに飽きて途中で諦めてしまうことが容易に想像ができるので、いつ投げ出してもいいようにまずは結論から書きます。

  • 参加部門:90時間

  • スタート時間:8/20 19:00(M組)

  • ゴール時間:88時間55分

使用機材

  • Specialized Allez E5 Elite(2022)

Brest手前のLanderneau Elorn川沿いにて

アルミフレームのエントリーロードバイクです。初めてのバイクで、これしか持ってません。
コンポはSRAM Rival22でリムブレーキキャリパーも購入してすぐにRivalに揃えています。
クランク周りは安い4iiiiのパワメを使いたかったのでSHIMANO 105に。正直こだわりはまったくありません(あとからULTEGRAの方が見た目がカッコいいなとちょっとだけ後悔しました)。
あとはサドルをfi'zi:k ALIANTE Gamma、シートポストをVeno モーションカーボンシートポスト、ハンドルをOne by ESU ジェイカーボン グランモンローSLに、身体に痛みが出やすい箇所のパーツは軒並み変えています。最初のSR取得まではどノーマルで走ってましたが本当につらかった。
ペダルは購入当初からずっとSPD SLを使ってましたが、PBPにおけるPCでの徒歩移動を考慮して数ヶ月前にSPDのXTR PD-M9020(両面・ケージ有)に変えました。

ウェア類

上半身はfinetrack ドライレイヤーベーシック+MAAP Evade Pro Base LS Jersey(薄手長袖ジャージ)を基本に、夜間寒くなった時のインナー重ね着要員としてmont-bell ジオライン L.W. とM.W. を1着ずつサドルバッグに忍ばせています。
下半身はパールイズミ プリザーブ バイクタイツで、PBP直前に(もう長いこと使ってるしパッドがヘタってるんじゃない?)と急な思いつきで同じものをもう1着購入。新しい方を穿いて、古いものは予備としてサドルバッグに詰めて走りました(結果的にはブレストでシャワーを浴びた際に予備に穿き替えたので無駄ではなかったし、新品のパッドはめちゃくちゃ快適だった)。
上下ともに防寒着的役割としてmont-bellのレインウェア(U.L.サイクルレインジャケット+バーサライトサイクルパンツ)を携行していましたが、上半身はともかくとして下半身に関してはあと5℃気温が下回っていれば正直キツかったかもしれないなと思いました。
その他mont-bell サイクルウエストウォーマーとジオライン L.W. バラクラバを適宜着用しました。

今回(2023年)は前回(2019年)に比べてかなり暖かかったみたいなので、上記服装で一切問題は出ませんでした。

反射ベストは日本からEN1150対応のものを持っていきましたが、公式反射ベストに問題がなかったのと暖かそう(風を通しにくそう)だったので、公式のものを携行して夜間のみ着用しました。

グローブは色々と持っていったのですが、結果としてSHIMANO グラベルグローブにスポンジパフを仕込んだ状態で最初から最後まで走りました。
道中の手の痛みや、終わった後の手の痺れなどもほとんどなく(多くは首の負荷からくるものが多いようですが)、もし次があれば次も同じ装備で走ると思います。

靴下ですが、往路はZEROFIT SOCKS FOR CYCLIST。ここ半年ぐらい使ってなかったのですが締め付けや痛みもなくとてもよかったです。
復路はmont-bell メリノウール サポーテック トレッキングソックス。クッション性があって暖かいので冬の間重宝していたのですが、復路の浮腫んだ足だとシューズがちょっとキツい…(でもシャワーを浴びた後に600km走った靴下をもう一度履くのはどうしても耐えられず)。

シューズはSHIMANO SH-XC702。足幅おばけなのでこれしか合うものがなかった。ただ、痛みも痺れも一切なかったのでとてもいいシューズだと思います。

費用

ツアー等を利用せずすべて自己手配で30万円ちょっと(エントリー費込み)でした。
内訳は以下のとおり。

  • エントリー費:4万円

  • 往復航空券:18万円

  • ホテル(前2泊+後1泊):2万円

  • 現地交通費(電車のみ):1万円

  • PBP中の諸々(レストラン、仮眠、シャワー等):2.5万円

  • PBP前後の食費:0.5万円

  • 通信費:0.5万円

  • おみやげ:1.5万円

現地での移動

Chavilleという街に宿を取り、行きも帰りもパリCDG空港間の移動はB線 → Chatelet Les Halles → A線 → La Défense → L線 → Chaville Rive Droite と電車を乗り継いで移動しました。

いずれも別のホームに移動する必要がありますが、すべてエレベーターがありますし、もし混んでいてもエスカレーターがあるのでほとんど苦労はしませんでした。

なおこのChavilleという街、大通りの反対側にChaville Rive Gaucheという駅がありこちらはN線なのでホテルからスタート地点のランブイエに行く場合はこっちから電車一本でいけます。便利。

ドロップバッグ

ドロップバッグは直前まで迷いましたが、預け入れと回収でバタバタしそうなのと、ドロップバッグがあることによってルデアックを中心としたPCでの行動計画の柔軟性が損なわれる気がしてやめました。
後述しますが私の走行の基本方針としては「計画を立てない」ことです。アタマのバッファが狭く「やらないといけないこと」すなわちタスクが多くなると頭が回らなくなってしまうタイプなので、なるべく考えないといけないことを減らすことに重きを置いています。

あと、ドロップバッグを計画に入れていたら、もし万が一ルデアックで回収できなかった時にパニクってしまうだろうなと思い、ドロップバッグの存在自体をリスクとして捉えてしまったのもあります。
ただ、このへんは個人の性質によるものだと思いますし、ドロップバッグをきちんと用意することで減らせるリスクもあると思うので普通は使うべきなんだろうなと思いました。

食事

出走の前々日に現地入りして、出走まではひたすらスーパーで安い食パンとジャムと生ハムとレタスを買って毎日食べてました。外食たかい。こわい。

出走してからは脳死状態で各PCのレストランで「食べれるだけ食べる」を地でいっていました。
それでもPC間でめちゃくちゃお腹が空くのでレストランで食べる分+フランスパンを3個ぐらいトレーに載せておいてフロントバッグに突っ込んで走行中もモシャモシャ食べてました。
なお2回ほどクロワッサンをフロントバッグに突っ込んで走行中食べましたがバッグの中がパン屑でえらいことになるのでオススメしません。

ていうかPCのレストラン使わず走ってる人補給マジでどうしてんの、と思いました。私の燃費が悪すぎるだけかもしれません。

走行計画

基本はサイコンの「グロス速度」と「貯金時間」だけを見てひたすらがんばる!という方針で、計画もクソもなかったです。

正確には「頑張らないようにする」かもしれません。頑張ると必ずあとでお釣りがくるので、自分にとって無理のないペースで、自分とって無理のないギリギリの仮眠時間で、ダラダラと走り続けたというのが実態に近いです。
計画をガチガチに立てるとそれに間に合うように無理をしてしまいがちで、1000kmを超えるブルベではその無理が致命的なダメージを生むということが経験上わかっていたので、意識的に常にスケジュールに遊びを持たせるようにしていました。

そういうこともあって、各PCのクローズ時間も一部オーバーしてます。が、そもそもそんなに綺麗にクリアできる走力が自分にあるとは毛頭思っていなかったので、基本的には最終のゴールタイムしかほぼ意識していません。
あと、走っててめちゃくちゃ楽しかったので、足切りしたぐらいで走るの辞めたらもったいないなと思って、認定なくても別にいいやと思って走ってたとこもあります。

あとは眠くなったら寝る、というのは終始徹底していました。落車したらすべてがパーになる可能性があるので。
ただラスト200km地点のヴィレンヌで最終の仮眠をとった後はカフェイン祭りでひたすら走り続けました。グロス15km/hで走り続けないとゴールタイムに間に合わない可能性がでてきて、その時点で仮眠なしで維持できるグロススピードがそれぐらいだったので、腹を括ったという感じです(正確には次のモルターニュでパンとコーヒーを飲んだ後テーブルに突っ伏して5分だけ寝ましたが)。
実際にはゴールしたとき1時間以上残ってたので問題はなかったのですが、当時はワンミスでゲームオーバーだなと覚悟してかなり集中しながら走ったラスト200kmでした。

仮眠

仮眠所での仮眠は以下の3回。

  • 往路ヴィレンヌ(203km地点)

  • 往路サン・ニコラ(482km地点)

  • 復路ルデアック(782km地点)

各仮眠所での仮眠時間はそれぞれ1時間ずつぐらいです。コスパちょー悪い。

その他、前述のとおりマイクロスリープが発生したらコンクリだろうと草むらだろうと気にせずにすぐにどこででも寝ました。
芝生+サバイバルシート+耳栓+アイマスクだとふつうに熟睡できます。

なお耳栓とアイマスクは仮眠所でも必須だと思います。ひたすら携帯のアラーム鳴ってる人とかいるし。
私は仮眠所であえてちょっと予定より遅い起床時間を指定しておいて携帯のバイブアラームを起床時間にセット、もし寝過ごしたらスタッフに起こしてもらえる(だろう)方式にしたらグッスリ眠れて起床もスッキリでした。人に起こされるのって地味にストレスなんですよね。

あとは前述のとおり1017km地点の復路ヴィレンヌで仮眠しましたが、最終日の夜は湿度が高くてめちゃくちゃ暖かかったのでPC内の芝生で寝ました。
ただアラームで目が覚めた後半分寝ぼけながらもう一度アラームをセットしておかわり睡眠を取ってしまったので、その後焦ることになるのですが…。普段の習慣ってこわいですね。

衛生関連

シャワーは折り返し地点ブレストでの1回だけですが、すべてのPCのたびにおしりセレブでおしりを拭いて、Protect J1を塗り直していました。
これ、今まで一度もやったことがなくて初めての試みだった(いつもは300km毎ぐらい)のですが、効果覿面で1200kmほぼ全編にわたって擦れやできものによる臀部の痛みが出ませんでした(後半ちょっとサボったので最後は少し痛かったですが)。

ブレストでのシャワーも絶対必要かというと微妙なところでしたが、折り返し地点でリフレッシュしたかったのと、シンプルにニオイが気になったので…。

トイレはPCのものを使うこともあれば公衆トイレを使うこともありましたが、比較的公衆トイレのほうが綺麗で使いやすかったように感じました。

総論

明らかに走力不足の私が最終的に時間内にPBPのゴールに辿り着けた要因としては、大量に食べ続けてもまったくもたれない胃腸と、どこででも寝れる図太さなのではと推察しています。
でもそれ以上に、参加された皆さんが口々にしているとおり、本当に言葉にできないなにかがPBPにはあって、終始心の底から楽しんで走れたというのが私にとっては完走できた一番の理由だと感じています。

次回は時は遡り1年前の自転車購入からはじめてのSR取得までを書きたいと思います。
つづく。


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