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悪に染まった友達と縁を切る話。

居酒屋でバイトしていた頃、私より一年遅く入ってきた同級生の女の子がいた。

私はその時専門二年生。卒業試験、国家試験、学期末試験と毎日試験に追われていたので、
バイトよりも本業を優先してバイトは土曜のランチ、とたまにディナーしか入らないようになっていた。

そんなこんなで彼女に初めて会ったのはバイトの飲み会だった。
私は終電でお店に向かい彼女は終電で帰っていたので
顔を合わせて会釈をしただけ。

その後もバイトでかぶるのは
片手で数えるほどだったし、
私はすぐに卒業してしまったので
彼女の印象は全くなかったのだ。

ただ、そこまで仲良くなくても
インスタは繋がっていたので
そこから私たちの話が始まる。

東京タワーの写真をストーリーに上げた日。
“久しぶりです!私も東京タワーに昨日行きました!”
と、DMが来た。
久しぶりだね、元気?と話を始めて私たちはラインで話すようになる。
“今度一緒に飲みに行きたいです!”
そんな言葉をもらって、新しい友達ができた気分で私も嬉しかった。
約束をして、仕事終わりに待ち合わせて自分達のバイト先で色々な話をした。

恋愛禁止だったバイト先で後輩とこっそり付き合っていること。
その後輩を同期と取り合っていること。
大まかで覚えているのはこのくらいかな。
私の友達には珍しすぎる少しだけヤンチャな子だった。
そんな子でも私から見たらそこまで悪い子では無かったのだ。

毎日ラインを続けていたある日、彼女から報告があると。
バイト先の社員と不倫関係になったと。つまり愛人?
流石に既婚者はまずい。
ただでさえまずいのにその上その社員は離婚間近の冷戦状態だったから。
慰謝料を請求されても彼女は学生なので払えるはずがないし、
何よりも彼女がその状況を楽しんでいることが問題だと思っていた。

“バレないと思ってもバレるよ。後輩を取り合うとかそんなレベルじゃない。
バレたらバイトにいれなくなるし、あなたにデメリットしかないんからやめた方がいい。”

彼女は私にとって新鮮な存在だった。
慕ってくれてなんでも話してくれていたから、
そんな存在が嬉しかったのかもしれない。

だからこそ、彼女を見捨てる気はさらさら無かったし、
彼女と縁を切りたいとも思っていなかった。


彼女はやめた方がいいよねと口では言いつつ関係を切れずにいた。
そうしているうちに彼女自身も悪い方向に変わっていった。

パパ活をして、夜の街で働いて、不倫をして、友達の彼氏を奪って、ナンパしてきた男を片っ端から食っていく。そんな女の子になった。

私は毎日ラインをして他愛のない話をしていたのが、
毎日男の悩み相談に変わっていた。
最初は彼女の肩の荷が降りればと思って聞いていたがうんざりし始めた。
結局はあなたの蒔いた種だから、いつか大事になることがあるかもしれないよ。
そう言ってしまう時もあった。

そうしていくうちに彼女と私との関係もなんだか悪くなっていった。
“ナナさんごめん。会うって言っていた日、デートになっちゃった。”
“ごめん。この日夜から仕事になっちゃった。同伴がある。”
“ごめん、その日はパパ活だから、遊べないや。”
そんな彼女に正直何も言う気が起きなかった。

まぁ。いつも通りバイト先でご飯を食べてお酒を飲むという毎月のルーティーンのようなものだったから、仕方ないね。と私も送り出した。

デート当日、仕事中電話がかかってきた。
何度かそのようなことがあったが、いつも電話先では泣いていたので心配して休憩中にかけ直す。
「何かあった?どうした?」
『どうしよう。振られちゃいました。』
その言葉を聞いた時私はそっか、大変だったね。と口で言ったものの、ざまあみろと思ってしまったのだ。
最低な人間だと自分でも思う。でもその時にはもう、彼女へ向けた友達としての感情はなくなってしまっていたのかもしれない。


それでも彼女と会えば楽しいことは確かだったから、
また次会う時に期待してしまっていた。
リスケして、会った次の時には彼女は彼女自身がリスケをしたことを忘れていた。
なんだかモヤっとしてしまったのは私の心が狭いのかな。
なんて思いつつも彼女からディズニーに行かないかとお誘いを受けたのでいくことになった。

そして、私たちは縁を切ることになる。

最初に決めていた日程は一週間前から大雨の予報でどうせなら晴れている日にしようとなり、日にちを変更。
私は休みをとっていたのでどうせなら普通に一日遊ぼうと。

始めて彼女と昼に会うことになった。
アサイーボウルが食べたいと言った彼女に何個かお店を送って、予約もした。
朝まで仕事だから待ち合わせは12時くらいで。
少し彼女が寝坊しても大丈夫なように2時にお店を予約して、私は眠る。
朝起きて9時。
彼女からは深夜の3時に寝坊したらごめんねと入っていたのでゆっくりと支度を始めた。
彼女の家から待ち合わせ場所まで40分ほどの場所だったので
10時ごろになったら一度ラインを入れてみよう。

10時、10時半、11時、12時、、、、

電話も出ず、返信も来ない。
もう12時だよ、から大丈夫?事故に遭ってない?に変わった。
なんでもいいから返信ちょうだい。と打った時には4時を過ぎていた。

1日彼女からの連絡を待っても何も来なかった。
なんだか鈍器で頭を打たれたような気分だった。
もやもやが止まらなかったのだ。
そうして1日が終わろうとしていたとき、ラインが鳴った。


彼女ではなく、不倫していた社員からだった。

“ナナと遊んだ後、飲む約束をしていたんだけど連絡がつかない。”
私も連絡が取れなくて遊べなかった。と。
最後に連絡きたのは夜中の3時だよ。と送ると衝撃な言葉が返ってきた。



“俺は昼の12時が最後。”

あれ、、、、?起きていたの?
で、私の電話やラインは出ずに私は休みを無駄にしたのか?

その瞬間、彼女に持っていたすべての同情や情という情が消えた。
とりあえずバイトで明日会うから出勤したら連絡するよ。とだけ送られてきて、私はもやもやした気持ちと怒りを抱えたまま眠るしか無かった。

“出勤してきたよ。元カレに監禁されていたらしい。”
私はその言葉をなんで本人からではなく、
不倫している社員から又聞きしなくてはいけなかったのだろう。
しかも自分が蒔いた種だった。

元彼に監禁ってなんだよ。聞いてみたら、
朝、元カレの家から来る予定だったのが、
引き止められてそのまま携帯の電源が切れてしまっていたらしい。

監禁とは言わないじゃん、てか遊ぶ約束をしていたことは忘れていたのか?
知らない男にホイホイついていって、
すぐ体を許してしまうあなたが悪いんじゃないか?
なんか、どうでもよくなった。

私の送った30件ほどの心配したラインに返信がきたのは
それから一週間後のことだった。
“本当にごめんなさい。ラインを返信できる状況じゃ無かった。”

たったこれだけの文章だった。
一年とちょっと、彼女と毎日ラインをして会って話していた日々がこの日終わった。

彼女のことは友達としてとても好きだったので、未だに少しだけ心配になる。
いつか、私が言った少しだけ棘のある言葉たちが彼女を目覚めさせてくれることを今でも願っている。

ナナ

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