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彼とはもうずいぶん昔に出会っている。フツウに考えてみれば、それだけの時が経っているのだから、年齢や状況や、その他さまざまこまごまなことが大きく変化していると思うだろう。つまりそれこそが、時が、過去から未来へと、一定方向に流れている、という大いなる誤解なのだ。
彼には謎が多い。どこで生まれ、子供時代をどのような環境で育ってきたのか。また、どのような人々によって教育を受けたのか。彼がいかなる成長過程を経て大人になり、その能力を発現するに至ったのか。もろ刃の剣ともなるそれを。
主人公である彼は、とても長い年月を私の中に生き続けてきた。今となっては、とある町なかでの彼の生活圏や、そこに暮らす人々の一人ひとりの声やクセや、彼に対する噂話まで、私は知っている。くどいようだが、私自身と彼とは全くの別人だ。