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0日・1日『タイム〜君と過ごす100日〜』

1‘

奈々未「〇〇…」

〇「どうしたの?」

奈々未「体調は?気分は?大丈夫?」

〇「うん、大丈夫だよ」

2‘

奈々未「なんかあったら早く言ってね?」

〇「奈々未こそ、なんかあったら言うんだよ?」

奈々未「私よりも自分の心配してよ!」

〇「今日は大丈夫だよ」

3‘

奈々未「今日はって…0時になったら終わっちゃうんでしょ…」

〇「そう、だからそんな悲しそうな顔しないで?僕は笑顔の奈々未が大好きだから」

奈々未「無理よ…」

4‘

〇〇に抱きつく奈々未。

〇「でもね、いつかはサヨナラをしなきゃいけない」

奈々未「でも…」

〇「その時に奈々未には強くいてほしいんだ」

5‘

奈々未「本当にあなたは勝手よ…」

〇「嫌いになったかい?」

奈々未「なるわけないでしょ!!」

〇「それはよかった」

6‘

奈々未「〇〇は怖くないの?」

〇「怖いよ」

奈々未「え…」

抱きつくのをやめて、少し離れる奈々未。

〇「死んじゃうのが怖いんじゃなくて、奈々未達を失うのが怖い」

7‘

奈々未「〇〇…」

〇「でもね、それでも僕は死ぬんだ…どんなに嫌だと言っても、泣いても、叫んでもね?」

奈々未「そうかもしれないけど、普通の人はそうなるのよ」

〇「う〜ん、それは奈々未の前ではかっこよくいたいからかな」

奈々未「いつでもかっこいいわよ…ばか…」

8‘

〇「昔の話を聞かせて?」

奈々未「いつから?」

〇「奈々未と会った時から」

奈々未「そうだな〜、あれは保育園の時…」

2人は時間のお限り、思い出を語り合った。

9‘

〜〜〜〜〜

10‘

〇「あと10分だね」

奈々未「っ…」

〇「そろそろだね」

奈々未「…嫌だよ、〇〇」

泣き出す奈々未。

11‘

〇「意外と奈々未は泣き虫だな〜」

笑顔の〇〇。

奈々未「どうして、笑ってるのよ!あなたは死んじゃうのよ!?」

〇「あははは、どうしてだろうね?嬉しいからかな」

奈々未「何が嬉しいのよ!」

12‘

〇「奈々未がこんなにも僕の事を思って、泣いてくれてる事が嬉しくて、嬉しくて、幸せなんだ」

奈々未「っ…どうして、〇〇なのよ…どうして…」

〇「たまたまだよ」

残り3分

13‘

奈々未「嫌だよ…嫌だ…まだまだ〇〇と居たいよ!!」

〇「僕もいたいさ」

奈々未「うぅっ…」

〇「ほら!最期は笑顔で!」

〇〇は指で奈々未の口角を上げる。

14‘

残り1分

〇「うん!可愛いよ!」

奈々未「愛してる!」

残り5秒

〇「僕も愛してるよ」

15‘

〇〇は“愛してるよ”と言うと、

糸が切れたように、私に倒れてきた。

時間は0時を指していた。

奈々未「っ…ぁ…ぁぁあ!あああああああ!!!!」

〇「……」

奈々未は〇〇を抱きしめながら、泣き叫んだ。

16‘

〜〜〜〜〜

17‘

美彩「大丈夫?」

奈々未「うん…」

葬式は〇〇の要望で火葬だけにした。

火葬に参加したのは絢音さん、美彩、沙友理

麻衣、美月が参加してくれた。

18‘

今は私の家にみんなで集まっている。

麻衣「本当に大丈夫?顔色が悪いよ?」

美月「ストレスに効く、紅茶入れてきますね」

奈々未「ありがとう」

19‘

“ピンポーン”

美彩「今日は誰かくる予定?」

奈々未「そんな予定はないけど…はーい!」

“ガチャ”

20‘

扉を開けると4人の女性が立っていた。

七瀬「私は乃木坂保険事務所の西野七瀬と申します」

名前を名乗り、名刺を奈々未に渡す。

奈々未「西野さん…」

21‘

七瀬「まずは心よりご冥福を申し上げます」

奈々未「ありがとうございます」

七瀬「橋本〇〇さんが生前にご自身の生命保険の受取人を奥様にご変更なされてます、なので今回の保険金を奥様の口座にお振込させていただきます」

奈々未「そうですか、わかりました」

22‘

七瀬「それでは失礼します」

残りの3人も用事を済ませると、帰っていく。

麻衣「奈々未〜?誰だったの?」

奈々未「〇〇が以前何かしてたみたい」

花束や荷物を持って、リビングに入ってくる奈々未。

23‘

美月「たくさんありますね」

絢音「中身は?」

奈々未「今見ますね?」

袋から中身を取り出す。

24‘

沙友理「手紙とCD?」

美彩「CDの方はかなりの枚数があるわね」

CDを束ねる縄に紙が挟まってる。

絢音「えっと…30年分の思いをこの中身に…妻と子供へ」

沙友理「じゃあ、これって…」

25‘

奈々未「子供が30歳になるまでのっ…!」

涙を流す奈々未。

絢音「〇〇、あなたは…」

美彩「手紙の方は?」

奈々未「うん、読むね」

26‘

奈々未へ

この手紙を読んでるってことは

僕の時間は止まってしまったんだね

言いたいことの大半は最期の時間に伝えられたと思う。

でもね、それだけでは足りないからここでも書かせてもらうね

27‘

奈々未は1人じゃないよ、1人じゃない

人任せになっちゃうけど、みんながいる。

1人で子育てするのは大変だと思うけど、

奈々未ならしっかりと良い母親になれるよ!

28‘

僕が生きてたら良い父親になれたかな?

奈々未「なれたわよっ…」

息子でも娘でも僕には似ずに奈々未に似て欲しいな

僕は親不孝者だから

29‘

絢音「〇〇のせいじゃないよ!〇〇のせいじゃ…うぅっ」

美彩!奈々未は無茶する時があるからちゃんと見張っててね!

美彩「っ、任せなさい!」

沙友理、お腹の子と奈々未をよろしくね!

沙友理「任しときぃ!元気な赤ちゃん取り上げたる!」

30‘

麻衣!奈々未の腰をよろしく!

麻衣「腰って…ふふっ(涙)」

姉さん、不出来な弟でごめんね

絢音「そんなことない!あなたは自慢の弟よ!」

31‘

かなりの枚数の手紙を読んでいく。

奈々未!

愛してる!これからもずっと!

君の隣に誰がいても、そうじゃなくても

僕は君を愛してる!!

32‘

だから泣かないで?

サヨナラに強くなって、前を向いて

これから坂道という名の人生を駆け上って、

満足したらおいで!

僕はずっと待ってるから!

33‘

奈々未「っ…そうね、私はもう泣かない」

強い眼差しで、リビングに飾ってある

〇〇とのツーショット写真を見つめる。

奈々未「〇〇、愛してる」

34‘

END

35‘

この作品はフィクションです

実際の人物や団体とは関係ありません。

またこの作品内の表現や行動はあくまでも、

作品の一部ですので、実際に行っても

責任は取りかねますのでご了承ください。

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