路は進みながら決める
大体の日本人は、高校に入ると、将来の進路と向き合わなくてはいけない。
私は、いつか進路選択というものがやってきた時、迷わず潔く決められるような「この道のプロになる!」という一本道が欲しかった。それを探すため、少しでも興味を持ったものがあれば実際に挑戦してみた。
建築家に興味があると思ったら、有名な建造物や展示を見に行ったり、講演会に出席したりした。海外大学に行こうか考えた時は、同じ興味を持つ友人とイエール大を会場とする大会に出場してみた。声楽に興味を持った時は、コンクールに出てプロの先生から講評をもらった。
でもどれも、「何か違う」という違和感を抱いた。
建築家は、「建てる」んじゃなくて、自分は世界のいろいろな場所に「住む」方がいい(つまり旅人。笑)と気付いた。海外大学については、学部生時代からかなり専門性の高い授業が続くため、専攻に相当興味を持っていないとやりがいを感じられないだろうなと予想した。また、海外の暮らしを体験したいというのならワーホリだったり語学留学だったりと他の選択肢があるから、「海外大学進学」にこだわる必要がない。声楽は、歌の表現より、イタリア語発音の正確性や背景知識などがまず求められるというのが、それ以後の声楽の世界のしがらみの多さを象徴しているようでやめた。
それで、結局また迷子になった。この世界で生きていこうという「ただ一つの道」がない。
……いや、ないのならないで、いいんじゃないか?
そう思って、しばらくは道を一本に決めずに、色々な世界を渡り歩いていこうと決めた。そして今振り返って思う。
進路というのは、その路を進みながら、その都度決めていくしかないのだ。
どんなにその仕事が好きでも、能力が高くても、社会で需要がなければ別の職に就く必要がある。あるいは、そのときは好きでも、やがて色々な理由で、別の仕事で働きたいと思うときがあるかもしれない。
社会は変わり、自分も変わる。その変化に閉鎖的でなく、むしろバランスをとるように柔軟に、したたかに生きていこうと思う。
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