わたしが一年ぶりに他人と話したことをあなたは知らない【番外編】

こんにちは。
はじめまして、でしょうか。それとも、またお会いできました?
どちらの方も、この記事を開いてくださってありがとうございます。

さて、今回の記事は、ちょっと今までと違った「番外編」でいこうと思います。
こうして、自分の体験を元に文章を書こうと思ったのは、それが少しでも誰かのお役に立てればいいと思ったからでした。なので、基本的に自分の感情よりは、情報としてお届けできればいいと思っていました。
ですが、前回の「ひきこもりタグ」についての記事を書いた時に、私の胸に蘇ったある感情がありました。

少し迷ったのですが、自分のようなちょっと変わった生き方をせざるをえなかった人間が、その時々にどういうことを感じてきたのか、それを書いてみることも意味があるのかもしれない、と思いました。
もしかしたら、自分のために「記録」しておきたいだけなのかもしれません。
なので、独りよがりで、感傷的な記事になるかもしれませんが、もしよろしければおつき合いください。

前回の記事に書いたように、適切な治療が受けられなかったわたしは、引きこもり状態に陥っていました。
どのくらいその状態だったのか、正確に覚えていないのですが、一年は経っていたと思います。

引きこもり状態から抜け出したばかりの頃は、人通りの少ない夜に少しずつ出かけるようにしていました。
コンビニくらいしか行きません~という引きこもりではなく、家から出ると発作を起こすという状態だったため、本当に一歩も家から出られませんでした。
そのため、四角い自分の部屋が世界の全てだった状態から抜け出した直後は、外の世界がとても美しいものに見えました。

夜の線路を渡っている時、ふと顔を横に向けると、闇の中に線路が長く続いていました。
それは、まるで一枚の写真のようでした。

少しずつ外を歩くのに慣れてきたので、久しぶりにお店で買い物をすることにしました。
それは、駅前の薬局でした。
なにを買ったのか、覚えていません。ですが、レジには店員のおじさんがいたことを覚えています。
細かいことは、これまた覚えていません。
おそらく、おじさんは「ありがとうございました」と言い、わたしは「どうも」と返した、それだけのやり取りだったと思います。(その頃は、ありがとうございます、の一言も言えなかったのです)
その時、とても不思議な感覚になりました。

この人は、わたしが一年も外出できなかったことを知らないんだ。
わたしが一年ぶりに言葉を交わした、家族以外の相手だということも、知らないんだ。

その事実はなぜかわたしをひどく驚かせました。
そして、少しだけ涙が出そうになりました。

静かな夜の街を帰りながら、少しずつ、けれど確かに、社会へと戻っていく歯車が回りだしたような気がしました。

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