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勝手に1日1推し 190日目 「哀れなるものたち」

「哀れなるものたち」監督:ヨルゴス・ランティモス      映画

物語もさることながら、美術・衣装・音楽もさいっこうでした!!!!
本当に素晴らしかったです!

クラシカルなのに未来的、ヨーロッパなのに宇宙っぽい。ファンタジー&SFでありながら、コメディでもあり、社会派でもある。
まるで主人公ベラの思考のように固定観念に縛られていない大いなる作品。ひたすら美しく輝かしい”一人の人間の生”の軌跡。
映画っていいな!本当に大好きだな!って「映画」の素晴らしさを再確認させてくれたそんな1本でした。

天才外科医によって蘇った若き女性ベラは、未知なる世界を知るため、大陸横断の冒険に出る。時代の偏見から解き放たれ、平等と解放を知ったベラは驚くべき成長を遂げる。 鬼才ヨルゴス・ランティモス監督&エマ・ストーンほか、超豪華キャストが未体験の驚きで世界を満たす最新作。

Filmarks


イノセントなベラがずっとイノセントなままで可愛くて勇敢!不完全な存在だからこそ尊い!

沢山の経験をし、知識を得てもなお、生まれたままの純粋さで無邪気に自由に生きるベラ。
性の目覚めや探求、社会情勢への嘆き、政治への関心、女性の社会進出について、セクシャリティについて、何事においてもフラットにひたすら自分の物差しで受け入れ、考え、意見し、行動するベラの何と神々しいことか。

大人の体に赤ちゃんの脳を移植され、人造人間として生まれたベラは、道徳観も倫理観も常識もなんもない、まるまる赤ちゃん。
本来、成長とともに社会に適合するために身につけるであろう全てを身につけることのなかったベラ。広い世界を味わってもなお、自分の「幸せ」と「好奇心」にひたすら忠実なんです。

劇中「哲学なんて無意味」みたいなセリフが出たけれど、ベラほど哲学的なものの見方をしてる人いないんじゃないかなって思いました。
経験や知識を獲得し成長を遂げてからも社会に迎合することなく、自分が何者であるかを探し続けてる。自分の生き方を選びぬいてる。
クライマックスだって、先の知れた現実より探求心を優先したベラなんですけど、これぞ、ベラだよ!って選択だったと思いません?だからこそラストのカタルシスが半端なかったんだと思います。
これぞ、ベラをベラたらしめる世界の捉え方なんですよね。
環境や運命なんかに左右されない「幸福」のありかたを追求したベラだから、自分自身を知ることで、自分を最大限活かすことで見つけられる「幸福」にたどり着いたんですよね~。もはや楽園だったじゃんね!シニカル~。ショーペンハウアーです。

凄まじい映画体験でしたわ。Yabai!!

映画評論家の町山智浩さんがラジオでおっしゃってたんですが、「フランケンシュタイン」を書いたメアリー・シェリーのお母さん(イギリスからフランス革命まで出向いた女性活動家と自由恋愛の祖)のお話とお父さん(名前がゴドウィン、劇中の科学者ゴッドと同名、 無政府主義を考案した祖)のお話+「フランケンシュタイン」で構成された物語なんですって。

つまり、
フェミニストの母 × アナーキストの父を持つ、メアリー・シェリーが生み出した「フランケンシュタイン」
=ベラ

って図式なんですなあ。なんのこっちゃ?!合掌。
ってなりそうですが、どなた様も「なあるほど!!」って赤くなるほど膝を叩くと思いますので、気になる方は検索してみて下さいませ。
そりゃあベラって、複雑かつ、斬新かつ、強靭に決まってますよ。

演出だって、冒頭、誰が見ても「フランケンシュタイン」じゃんってなると思います。マッドサイエンティストが人造人間を作ってるんですから。
でもお作りになったのは、美女。裏切るね~。
弦楽器の不協和音とかモノクロのざらついた映像とかサイレントとか20世紀初頭の映画風だし、時代も「フランケンシュタイン」風な見せ方をしているから、展開もそうなるかと思いきや、美女だし違ってるんだもん。
自分はマッドな父に育てられ、マッドな手立てでベラを作ったくせに、父性をもって愛ある子育てをするゴッドが意外なわけで、過保護なくらいかわいがって部屋に閉じ込めていたにも関わらず、かわいい子には旅をさせろって意を決して、ベラは世界を見に旅立つことになるんですよね~。ベラに甘々じゃん、ゴッド。婚約者マックスもまた然り。2人の存在は大きかった!

からの~。カラー映像に転調するとか甘美な演出~。ズルい!
彼女の目にする全てが新鮮で色鮮やかでファンタジー且つSFの世界。旅は冒険なんだな。危なっかしくて、好奇心旺盛で、見聞きするもの全てを吸収するベラちゃん。本当に子供みたいで、何から何まで初体験で一番楽しい時だったかもね。
リスボンの世界観がとにかく素敵。ショーン・タンの絵本の世界みたいでした!
ダンスシーンは強烈で岡本太郎先生も真っ青のオリジナリティー大爆発!芸術は爆発です。

色々な人との出会いと別れを経て、ベラ自身「実験的な人間」って自分のことを評していたくらい自分と社会を冷静に見つめ、知恵を身につけた後半は、現実感のあるストーリーへと展開し、一気にラストへ・・・。

これも町山智浩さんのラジオから知ったのですが、後半は「ファニー・ヒル」っていう18世紀のイギリス小説が元になっているんだそうです。へ~。ふむふむ、なるほどですね・・・。

哀れなるものたち。POOR THINGS。
哀れなる物?哀れなる者?何だろうって数日考えちゃうと思います。
でもなんか、感覚では分かってる気がする。言葉にすることは難しいんだけれど、肌で感じられてる気がする。形骸化された価値観とか正しさの中に潜む違和感みたいなものな気がする・・・。

ヨルゴス・ランティモス監督、恥ずかしながら知らなかったです。めちゃくちゃいいね。好き。過去作を絶対見ようって思いました!!

そして何より、エマ・ストーンが凄する!!動きが赤ちゃん過ぎてビビった!!最後まで全身からイノセンスがにじみ出ててビビった!!食事を吐き出しても嫌味がないし、裸体もやらしくないんだよなあ。そして脚が長すぎてビビった!!髪の毛は地毛かなあ?脚も髪もながーい。
ウィリアム・デフォーも良かったし、マーク・ラファロのエロおやじの哀愁もものすんごかった!

音楽も正に映画音楽と言うべきインストゥルメンタルでかっこよ!だし、ベラちゃんの衣装も可愛いすぎだよ、あの袖がっっ!だし、エンディングのアートワークにもうっとり~。

って、何だかんだ言いましたが、面白いんde!かっこいいんde!かわいいんde!おしゃれなんde!映画の醍醐味が味わえる映画なんde!
未見の方、楽しんde。

ということで、推します。

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