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勝手に1日1推し 189日目 「ポーの一族」「11人いる!」 

「ポーの一族」「11人いる!」萩尾望都     漫画

年末年始、夢中で読み返した萩尾望都先生作品。すげ!改めてすげ!って鳥肌でした。
もはや、少女漫画の枠を超えてるよなあ・・・。

青い霧に閉ざされたバラ咲く村にバンパネラの一族が住んでいる。血とバラのエッセンス、そして愛する人間をひそかに仲間に加えながら、彼らは永遠の時を生きるのだ。その一族にエドガーとメリーベルという兄妹がいた。19世紀のある日、2人はアランという名の少年に出会う…。 時を超えて語り継がれるバンパネラたちの美しき伝説。

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まず、これも山田五郎さんの受け売りなんですけど、アール・ヌーヴォーなんですよ、文庫版の書影なんて。華やか!!2巻なんて時代を追って、表現主義にまでいっちゃってる!ムンク味!

アール・ヌーヴォーって、平面的であり、曲線的、そして装飾的っていう特徴があって、それはモロに日本美術の影響を受けて出来たスタイルらしいんです。ふむふむ、浮世絵ね。ゴッホも大好きだもんね、ジャポニズム。

だから日本人がミュシャに惹かれるのは至極当然であって、もはや相思相愛だったんですね。明治時代当時から日本ではミュシャブームが広がっていたそうですよ!
ンな訳で、萩尾望都先生含む、”花の24年組”と呼ばれる大先生方が描く漫画の装飾性は、いわれてみればアール・ヌーヴォー的と云えて、つまりモロ影響を受けていたんですね!
この解説聴いて、ほんとめちゃくちゃしっくりしました~。70年代の少女漫画って紙面が殊に煌びやかですもんね。薔薇が舞い、光輝き、草木が躍り、鳥が歌う・・・。
国境を越え、ジャンルも跨いで相互作用を引き起こし、ひたすら美しく素晴らしい作品が生まれたと思うと、震えますね!!フランス(欧州)への憧れを描いたという共通点も持つ、ミュシャ×花の24年組、痺れますね!!

ってことで、芸術的装飾性については、上記を念頭に置いて読み進めつつ、その描き込みの細かさに改めて心奪われました!!手描きだって思うと狂いそうになる。南無阿腱鞘炎・・・

更に、ストーリー的には、不老不死であるバンパネラ(吸血鬼)の悲哀を描いているっていうね。死生観という概念、観念にまで踏み込んでおり、ほんまに少女漫画かいな?ってなりますよ。

少女漫画と言いつつ、基本少年しか登場しないのとかも特徴的です。少年が持つ神秘性や背徳的且つ耽美的な美貌は古くから画題や主題になりがちだもんね。分かるぅ。
そんな少年たち、しかもバンパネラの不老不死という業を背負った少年たちのままならなさや悲しみが大きなテーマとして描かれております。
私は、「ソクラテスの弁明」の「死は万人の最上の恐怖であるといえるのか?ある人にとって死は、最良のものとなり得るかもしれない」ってことに思い至りました。「無知の知」です。
バンパネラとして時代を超えて生き、不老不死故の膨大な過去の後悔や哀しみ、人間との共生に苦しんだエドガーやアランにとって、正に死は解放となり、最良のものとなったんじゃないかと思ったんです。遠い昔のほんの少しの幸せな記憶を糧に、バンパネラの性からは逃れられない彼らのなんと不幸せなことか・・・。
凄いよ、ほんと。これぞ、ロマン。こんな読み応え、読み疲れることって稀よ。文学作品よ。涙よ。メリーベルぅぅ。

これを当時、10歳前後とかでリアルタイムで読んでた人達って凄くない?!てなりません?!人格形成やその後の人生に影響がありそう。
こんなに難解で陰鬱で、読後に訪れる空虚感を味わう苛烈な体験。子供の頃にこれを受け入れる器を持つ意味はデカい!人として大きく育ったと思います!
しかし、私はどう読んでたんだろ?高校生の時にジョジョと共に教室で読んだ気がするんですが。

それから、どうしても言いたいので言います。
例外だけど「11人いる!」も推す!大好き!

宇宙大学受験会場、最終テストは外部との接触を絶たれた宇宙船白号で53日間生きのびること。1チームは10人。だが、宇宙船には11人いた! さまざまな星系からそれぞれの文化を背負ってやってきた受験生をあいつぐトラブルが襲う。疑心暗鬼のなかでの反目と友情。11人は果たして合格できるのか?

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追加情報:地球は宇宙事業を発展させ、他の惑星との総合政府テラを発足させる。その他の星々との星間連盟にも加入。異星人同志の結婚も可。

各星々から大学受験の為、集まった11人の物語です。
宇宙で次々に起こるトラブルは手に汗握るものがあり、1人多い乗員の存在に調和を欠く船内の空気はピンと張りつめ、各星の事情やそれぞれの境遇が明かされると、ますますメンバー同士が疑いの目を向けはじめ一触即発状態に。更には病原菌まで発生し・・・って、もぉ、ハラハラどきどきしっぱなし。
めちゃスリリングな極上のSFであり、ミステリです!宇宙での惑星の周期や軌道、各星の誕生や消滅など、あらゆる設定の細部にまで抜かりがないため、安心して物語に没頭できる。まじスケールが大きいんだよなあ。うっとり。

それだけじゃなくて、乗船メンバー11人のうちの1人、フロルが両生体であることもポイントです。他10人はみな男性。フロルは受験に合格したら男性になる許可がおりるという、現在男性ではないという特異なメンバーなんですよ!
パイロットを目指すフロルはテストに合格して、もちろん男性になるつもりなんだけれど、現在はどちらでもないし(女の子寄り)、華奢で柔らかいからみんなから可愛い女の子扱いされ、ぷんすこ怒ってばかりなんです。
彼(彼女)の「女なんてクズ!」という女性蔑視的発言は、ホモソな環境、且つ、男性優位の中での女性の弱い立場を色濃く映し出していると思います。
実際、フロルの星は家父長制、一夫多妻制、長子(男)優位制である旨、説明されています。
テラの時代でも男性と女性、選ぶなら男性を選ぶってことは・・・って現実と混同し、遥か未来を思ってなんだか沈痛な思いがしなくもないですが、この両生体を登場させるところに萩尾先生の前衛的な思考とチャレンジングな社会へのアプローチを感じます。

先生の作品は全て、いつまでも古臭くならない普遍性と新しい価値観をもたらしてくれる革新性に溢れています。本当に素晴らしい!

何やかや、絆を深めた11人。フロルの未来が分からなくても「ぼくと結婚しなよ!」って、最終的に、真っすぐで勇気あるフロルの人間性を愛するタダ(主人公)もいいんです。
クイアな存在について明るくない時代にフラットにこれだもん。先生の作品って性別を確定していない、又は、性別にこだわらない人物が頻繁に登場していて、めちゃくちゃ現代的!!その繋がり方も様々で、令和の時代より自由で進歩的な関係性を提示してるやんかー!!

はぁ、「半神」もヤバい。載ってる短編全てが神話的であり、訓話的であり、哲学的であるっていうね。アッパレ。

これを機に、ポーの新刊も読もうと思います!

ということで、推します。



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