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少年少女の指輪はプルタブ

1980年代頃まで缶飲料のフタといえば、「開けると缶からフタが離れてしまう」プルタブ式が主流でした。

何それ?
見たことも聞いたこともないですけど?
という方は、コチラの写真をご覧ください。


当時は、道ばたに捨てられることも多く、社会問題にもなった缶飲料のフタですが、首元のペラペラした部分をバネ代わりにリング部分を飛ばして遊んだり、指にはめて指輪のようにして遊んだ昭和の子供たちも多かったのでは。

今では、缶飲料は飲む時に開栓してもタブは取れないのが当たり前になっていますが、90年代前半までは、分離タイプのプルタブが主流でした。

私事ですが、タブが取れない仕様に変わったばかりの頃は、父の缶ビールのフタを開けてあげようとして、フタが外れなかったのを見て

『ごめん、失敗した…』

と父に謝ったことがあります。

勿論、父は怒るわけもなく、笑いながらフタが外れないように変わったことを教えてくれました。

何故プルタブ式ではなくなったのかというと、理由は極めて単純で、缶から外したタブをポイ捨てする人があまりにも多かったから。

環境問題やSDGsが日常的に叫ばれる現代では信じられないことですが、当時は下を見て数歩歩けば見つかるというくらい、プルタブはどこにでも落ちているのが当たり前だったのです。

冒頭で子供の頃にプルタブで遊んだエピソードを書きましたが、子供にとっては、おもちゃが道のあちこちに落ちている、そんな感覚だったわけで、それだけ缶飲料を飲むとき取ったプルタブをその場に投げ捨てる人がたくさんいたのでした。


もちろんこの状態が良しとされるはずもなく、誤飲による死亡や、海岸などで怪我をするといった事故が多発するなど国内外問わず社会問題に発展し、「散乱公害」と呼ばれるまでになり、アメリカでは多くの州でプルタブが禁止され、いちはやく現在のステイオンタブ式に切り替わっていったのでした。

その間日本では、プルタブを集めると福祉に役立つといった不法投棄を防止するための運動が展開された後、平成元年よりステイオンタブ式に順次切り替わりました。

それから30年…(きみまろ風に)

プルタブ式の存在は忘れ去られたかに思われていますが、海外(特にアジア)では数こそ多くはないながらもプルタブ式の缶飲料の発見報告がTwitter等を賑わすこともあるようです。

たまに報告されるプルタブ式の缶の写真を見ると、この先もしかするとプルタブ式缶飲料が“幻のレア缶”感覚で「見つけたら幸せになれる」などと言われるようになる日がくるかも?なんて思ったりもするのでした。

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