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ノーマル、ハイポジ、フェリクロム、メタル

1966年、国産初のカセットテープ「C-60」(日立マクセル)が発売されました。

今の若い世代の中には、カセットテープを見たことも触ったことも無いという方もいらっしゃるのではないでしょうか?

カセットテープには、大きく分けて4種類のタイプがありました。
ノーマル・ハイポジ・フェリクロム・メタル。
使われている磁気テープの磁性体が違うのですが、主な特徴は以下のとおりです。



ノーマル
磁性体に酸化鉄を使用。
4つの中で最も価格が安い反面、音質はあまり良くなく、重ね録りや何度も再生するのには不向きでした。


ハイポジ
コバルト添加酸化鉄磁性体を使用。
高域出力や保磁力を高めたため、ハイポジションと呼ばれ、略称であるハイポジという名称が普及し、パッケージにも『ハイポジ』と表記されるようになりました。



フェリクロム
酸化鉄と酸化クロムを2層塗布。
プレーヤーのテープポジション切り替えが不要。
音楽等の需要が多く若者に指示されたハイポジと、高級路線のメタルの中間的位置づけであったこともあり、4種類の中では比較的ニーズが少なめでした。
カセットテープユーザー世代でも、存在を知らない人もいる、そんなテープでした。


メタル
磁性体に酸化していない純鉄を使用。
最高の音質を誇りますが、
製造コストが高く高価格品。
当時の若者にとっては高嶺の花でしたが、
レンタルしてきたアルバムを
メタルにダビングし大事に保存していた
なんて経験のある人も多いのでは?

オーディオもノーマルのみからメタルまで対応可能なものまで種類が分かれており、どのオーディオでも全てのテープを聴くことは可能でしたが、完璧な状態を再現したり録音するためには、オーディオが対応している必要がありました。
なお、現在販売されているオーディオは、殆どがノーマル専用のようです。


同じブランド・商品名のカセットテープならば、記録時間による音質の差はありませんでしたが、記録時間が長いテープは、テープ自体が薄いため、伸びや切断、メカへの絡まりといったトラブルが起きやすいので注意する必要がありました。

記載されている記録時間は、A面とB面を合算したもので、例えば46分テープの場合は、片面約23分となりますを
ちなみに、何故46分という半端な数字なのかというと、初期のLPレコードが片面23分収録だったため、それを録音するのに最適なテープとして発売されたからでした。

カセットテープの先頭には透明、または乳白色の部分があり、ここをリーダーテープと呼ぶのですが、これは巻き取りショックを吸収することや、カセットをデッキから出した際に磁性体部分が露出しないためにあるので、録音はできない部分となっています。


そのため、録音前にリールの穴に鉛筆を差し込むなどして、磁性体部分が録音ヘッドが当たる部分までくるように巻き取っておく必要がありました(懐かしい)。
これをしないで録音を開始すると、冒頭が録音されないというトラブルを招くことになります。
メタルのような高級カセットテープでこれをやってしまうと、心から泣きたくなる気分でした。

このようなカセットテープの開発や発展には日本のメーカーが大きく関わり、クオリティを上げてきた面もあります。
そんなカセットテープの3大メーカーが、
ソニー・日立マクセル・TDKでした。

ソニーは、カセットを開発したフィリップス社に特許の無償公開を迫り、その後のカセットの爆発的な普及につなげた立役者でした。
カセット以外にウォークマンなど、ハードも普及させ、若者にカセットテープ文化を定着させた功績は多大なるものでした。
ウォークマンについては、別の記事で詳しく書きたいと思います。

日立マクセルは、1966年に国産のカセットを初めて商品化した草分け的存在でした。
「UD」などでおなじみの、高品質な音楽用カセットシリーズを送り出しました。
現在でも、唯一カセットを販売しているメーカーです。

TDKは、初の音楽用カセットとされる「SD」を発売したメーカーです。
1970年代には、ハイポジの定番となる「SA」や「AD」を生産しました。
ベーシックからマニア向けまで、どの製品も性能&信頼性が高いのが特徴でした。

やがてカセットテープから時代を奪う新たなツールが登場するのですが、それについては次回書かせて頂きます。

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